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ハマちゃんのひとり言

鉄道と地図を趣味とする、元地図屋さんだった団塊人です。

地理院の地形図にグリッド線が入る!?

2013年01月15日 | 地図

今日の東京新聞朝刊に国土地理院の地形図にUTMグリッド線が記入されるとの記事が掲載されていた。その記事によると現在災害が発生した時出動する救援組織は自衛隊・警察・海上保安庁で、その際場所を特定する時使用する基準がそれぞれ異なり、自衛隊はUTMグリッド(座標)を、警察や消防は住所を、海上保安庁は経緯度を用いている。組織ごとに使用する地図や場所の表現方法が異なる為、場所の特定に時間がかかったり、伝達途中で聞き間違えたりして伝達方式の統一化の必要が指摘されていたそうである。

 

【平成25年1月15日 東京新聞朝刊 「地理院の地図にUTMグリッドが掲載される!」の記事】

グリッド線方式の地形図は日本以外の多くの地形図に記入されており半ば世界標準になっていた。日本でも昭和40年頃一時UTMグリッド線が記入された地形図が作られた事があったが、実際に販売される事はなかった様だ!この地形図は昭和35年から5年間に渡って日米両国が共通に使用するために、当時の地理調査所と米国陸軍極東地図局(AMSFE)との協定によって作成された地形図でした。

 

【昭和42年5月10日 毎日新聞朝刊  「国土地理院がこっそり日本の軍事地図」の記事】

【米国陸軍極東地図局 昭和36年作成 1/5万地形図「KOBE」(グリッド線が記入されている)】

 

【国土地理院作 地図協会発行 昭和40年作成 特定1/5万地形図「神戸」(グリッド線が記入あり)】

これが「5万分1特定地形図」と呼ばれるもので、昭和42年5月10日の毎日新聞に「こっそり日本の軍用地図」と題して国土地理院が作っていると報じられ、国会論争にまで発展してしました。その際の西村英一建設大臣の答弁には「この新聞にはことさらに軍用軍用と書いてあるが、普通の五万分の一の地図とあまり変わらないんだが、それで普通の地図には、五万分の一ではグリッドが入れてないのでありますが、これにはグリッドが入れてあるが特に軍用目的ではない」と答弁しています。

 

【国土地理院 昭和42年発行 1/5万地形図「神戸」 (グリッド線は削除されている!)】

その為か実際に国土地理院から販売された地形図にはグリッド線は削除されたものでした。これ以降地理院の地形図にグリッド線が記入される事はありませんでした。今回この問題が発覚してから半世紀を経てグリッド線が登場する事になった事に少々感傷めいたものを感じました。


 


地形図から送電線消える!

2012年02月09日 | 地図

先日知人から毎日新聞に地形図に関する記事が載っていたとの事で、その記事を送っていただいた。この記事は平成24年1月30日の毎日新聞朝刊に掲載されたもので、地形図の電子情報化によって国土地理院は昨年2月からの電子国土基本図(地形図とは呼ばない様です)には送電線が記載されなくなり、その為地形図を利用する登山者や地理学者などから送電線記載を要望されているが、国土地理院は電力会社から送電線の情報提供をテロ対策上から拒否された為に記載する事はできないとの回答であったそうです。

【平成24年1月30日毎日新聞朝刊より】

電子化に伴って、地形図(正式には電子国土基本図か?)から多くの項目が削除された中に送電線があったのです。電子化されるまで地形図は航空写真から送電線を判読してルートの新設・廃止等を記載し、すべて現地において確認作業を行っており、原則電力会社に情報の提供を要請する事はありませんでした。この様に地図作りはすべては航空写真と現地調査で作られていたのです。

【電子国土基本図(上)と送電線が記載されていた地形図(下)】

ところが電子化に伴って地図作りの方法が変わり、航空写真も撮らず、現地調査も行わずに道路・鉄道・大きな構造物等のみをそれぞれの事業体からの情報提供によって、提供された部分のみを修正を行う方法になりました。今までの自己完結法式から他力本願式に地図作りが大転換したのです。まさしくこれは地図作成機関の自殺行為だったのです。しかし国土地理院は既に地理重視から地球物理重視の機構に変身してしまい、日本から送電線だけでなく地形図そのものが完全に消えてしまったのです。