トーマ・ダンサンブール著 紀伊国屋書店
非暴力コミュニケーションの日本のサイトで唯一推薦されていたので、読んでみた。著者はベルギーの弁護士で、世界各国でのカウンセリング活動をしていて、豊富な実例を詳細に書きながら、非暴力コミュニケーションとはどういうことか、説明している。
ここで言う暴力は、肉体的物理的なものではなく、心の奥の暴力的動きだ。巧妙に、自分自身にも気づかせずに、他人をあやつろうとする心の動きの原因は、自分の欲求を自覚していないせいだったりして興味深い。つまり、自分を思いやれないと、他人も思いやれないということ。
エピソードで印象的なのは、アフリカのある村で往復1日かかって水汲みしていたのを見かねてヨーロッパのNGOが井戸を掘った。数ヶ月して行ってみると、井戸が使われていない。どうしてか聞くと、長老は答えた。「この井戸は、村を駄目にする。確かにみんな、楽に水が汲めるが、その後すぐに家にこもって、他人の陰口をたたくだけだ。遠くにみんなで水汲みに行くと、その長い時間に、村人みんながいろんなことを話していろんな問題が解決し、仲良くなる」
効率優先と思って便利にしても、結局団結もなく意思疎通もないグループになっては、効率も悪くなるということか。