時の流れ

　実家がいよいよ取り壊され、新築することになった。　「いよいよ取り壊すらしいから、写真を撮りたければ撮っておくといいよ。」と兄から電話があった。　年末に訪れて一度写真も撮ったが、次女と再び行った。　年末よりも好天であったため良い写真が撮れた。

　柱の傷ひとつにしても何やら思い出があるような気がする。　実家が出来上がった時、亡き母と兄が廊下と居間、そして神の間、台所を二人して走り、それこそ追いかけっこをするように「広い！広い！」と走ったのがつい先だってのことのように思い出される。　あれから４０年。　兄に言わせると「よくもったなあ。　これだけ時間が経過したんじゃねえ。」　「そうだねえ」と頷くしかなかった。

　庭作りが趣味だった亡き父が池を掘ったり、鯉を飼ったり、庭木はもちろん果樹も私たちが喜ぶだろうと言って植えていた。　そのみかんが今年は豊作らしかった。わずかのすっぱ味が最高であった。「ああこれも引っこ抜くんだねえ。」と言う言葉をぐっと押しこらえた・・・。　父が精魂こめて作った庭がほぼすべて無くなる・・・。　大きな石もクレーンでなければ運べない。　世話をする人がいない庭ほど侘びしく淋しいものはない・・・。　甥も兄も父のようにはできない。

　時が流れたんだなあ・・・。

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