マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

ワインに合う和食(8)煮穴子とキューリのロール寿司

2014年01月14日 | シラチャー ジャスミンホテル
今、日本はとても寒いようで『東京でも明日は雪になる』と、ジャスミンのうちの店にある日本語放送のテレビで話していたが、ここシラチャーでも夜はカーディガンが欲しくなるような寒さの時もあり『タイで何でこの寒さ?』と思う時がある。

アメリカでも大寒波でナイヤガラの滝が凍ってしまったり、中国のモンゴルではマイナス46℃以下の日もあると聞く。

昔、マグロの商社で働いていた頃には、静岡県にある自社のマグロの加工工場で何度も-45℃や-60℃といった「超低温」の冷凍庫に入ったことがあるが、厚着でも5分と中に居られないほどの寒さで、この寒さが朝から晩まで何日も続くとなると想像を超える寒さだろう。

地球温暖化と言われているが世界中のいろいろな国での今回の寒さは異常で、やはりどこか地球のリズムがおかしくなっているのではないかと思う。

さて、今回は「ご飯物」として煮穴子とキューリをロール寿司にした通称(アナキュウ巻き)を作ってみよう。

欧米人では「蛸」を姿や形が気持ち悪いと言って食べない人が多いが、「ウナギ」はだいたいどの国の人も好きなようで、ヨーロッパでもアメリカや中国でも「うな重」などウナギを使った商品はよく売れたが、ここタイでもウナギは嫌いという人は少ないようだ。

また、最近では「穴子」を好んで食べる外国人客も多く、うちの店でも日本の築地から活〆された穴子を業者を通して輸入しているが「穴子の一本握り」や「穴子の天ぷら」は、日本人だけではなく外国人のお客様からの注文も多い。

穴子は「ウナギ属アナゴ亜目アナゴ科」に属する「魚」で、美味しい旬は春から夏に掛けてと冬だが、寒さで身が凍える頃の穴子が脂が乗って美味しい。

また、穴子は東京湾の羽田沖で漁獲される江戸前の穴子だけを使う寿司屋も多いが、それは東京湾が地理的に大きな川が流れる河口で、穴子の餌になるごかい等の線虫類や小魚、小海老などが多く、また砂地が多いことがあげられる。(穴子は夜行性で昼間は砂の中にいて、夜になると活動を始める。)

うちの店でも羽田沖の穴子を使っているが、羽田沖の穴子は小ぶりの物が多いものの太っていて脂があり、サイズの小さい穴子を寿司に、少し大き目のサイズの穴子を天ぷらに使っている。(特に腹の部分が黄金色の穴子は脂の乗りが最高だ。)

尚、昨年はホテルや有名料理店での食品偽装の話題がテレビ番組を賑わしていたが、「回転すしではほとんどのネタが偽物」というテーマの番組も多かった。

たとえば、回転すしで使っているアワビがチリの「ロコ貝」だったり、真鯛は「ティラピア」という淡水魚だということを取り上げていたが、回転すしで穴子の代用として使っているペルーの「マルアナゴ」を海蛇として紹介していた。

頭の足りないバカ芸人が『今まで回転すしで「海蛇」を食べさせられていたのか!』とわざとらしく激怒するいつもの筋立てだが、これは正しくないので少し補足させてもらう。

日本で漁獲される穴子はウナギ属アナゴ亜目アナゴ科の魚で、一方、ペルーで漁獲される「マルアナゴ」はウナギ属ウミヘビ亜目ウミヘビ科の魚で穴子の近縁種だ。

どうやらバカ芸人がたくさん出ている低俗番組では、この「ウミヘビ亜目ウミヘビ科」という部分だけで、あたかも爬虫類を回転すしで出しているように演出しているがこれは大間違いだ。

ロブスターを「伊勢海老」と偽って高く売ろうとするような行為に対しては腹が立つが、2個でたった100円の回転すしで同じ種類(近縁種)の魚をうまく利用することについては、名前の付け方の問題は別として資源の有効活用の面からも否定はできないと思う。

江戸前の本物の「穴子」を食べたい人は、お金をたくさん抱えて「数寄屋橋次郎」へでも「銀座久兵衛」へでも行けば間違いなく「蛇」を食べさせられることはない。

また、テレビや報道関係者の方々も、しっかり調べてから報道していただきたい。

さて、今回、煮穴子の仕込み方から説明するが昨日の昼に煮穴子を仕込んだばかりであいにく写真がないが、文章で詳しく説明するので参考にして欲しい。(また、次回穴子を仕込んだ時に写真をアップしたいと思う。)

◆「煮穴子」の作り方
(タレの配合)
穴子 正味   2㎏
だし   2,100cc(頭、骨を焼き水に加えて煮出す。)
酒      90cc
砂糖    180cc(できれば黄ザラメ)
醤油    360cc
みりん   180cc
(作り方)
①穴子を背開きにして骨を取り除き、背びれと腹ビレを切り取る。骨と頭は捨てない。(ウナギと同じく、関東では背開き、関西では腹開き)の場合が多い。

②開いた穴子の皮目を上にしてまな板の上に並べて上から熱湯をそそぐ。

③皮の表面の表面が白くなったら、直ぐに氷水の中に入れる

④水気を切り、包丁の背で皮の部分の白くなった部分(ぬめり)をこそげ取る。

⑤骨と頭は血の部分を流水でよく洗い流す。(うちの店では生臭くなるので頭は使わない。)

⑥よく洗った頭と骨をこんがりと両面焼く。(黒く焦げないように注意しよう。)

⑦大きな鍋に水を3,000cc入れ中火に掛けて⑥の焼いた頭と骨を加え30分~40分煮てエキスを抽出して漉す。(出来上がりが2,100cc以上になるように)

⑧味を見て十分にエキスが抽出されてなかったら、そのままもう少し煮て十分にエキスを抽出する。

⑨鍋を用意し、十分にエキスが抽出された出汁を2,100cc入れ中火に掛ける。

⑩酒90ccとみりん180cc、砂糖180gを加えて砂糖が完全に溶けるまでよくかき混ぜる。(※この時点では醤油は加えない。)

⑪穴子の開きを加えて落し蓋をして10分間、吹きこぼれに注意しながら煮る。

⑫醤油を加えて落とし蓋をして更に10分間煮て味を含ませる。

⑬火を消して、そのまま蒸らす。

⑭冷めたら穴子を取り出しツユ切りしてラップに包んで冷蔵庫に入れる。

⑮ツユは約半分になるなべ煮詰めて(ツメだれ)にする。もし、ツメだれが既にある場合にはツユは冷
蔵庫で保管して、2度目に使う時に酒を360cc足して使う。)
これで煮穴子が完成したので早速、「穴子とキューリのロール寿司」を作ってみよう。

◆「煮穴子とキューリのロール寿司」(アナキュウ巻き)の作り方。

(用意する物)

煮穴子、ツメダレ、キューリの細切り、海苔、寿司飯

(作り方)
①シャリを右手に握り、海苔の左側の中央部から右に向かって寿司飯を敷く。


②左手のひらを広げて海苔の左側に添え、右手の指先で上と下の方へ寿司飯を広げていく。


③左側のシャリを広げたら今度は右手のひらを海苔の右側に添え、左手の上と下の方へ寿司飯を広げていく。


④全体の寿司飯を均一にして隙間がないようにする。


⑤寿司飯の上に白ゴマを振る。(多目に)


⑥海苔が上になるようにひっくり返し、キューリの細切りを中央に置く。


⑦キューリの細切りの上に煮穴子を乗せる。


⑧端から「巻きす」で巻く。


⑨更にしっかり巻き形を四角形に整える。


⑩「巻きす」を外し、上にもう煮穴子をもう一本乗せる。


⑪もう一度「巻きす」を上にかぶせてしっかりと押さえつけて形を整える。


⑫包丁で食べやすい大きさに切る。


⑬皿に盛る。


⑭ツメダレを塗る。


(完成写真


さて、この料理に合うワインだが、白ワインもいいが味付けが甘辛い味なのでブルゴーニュの赤がおすすめだ。そして、ブドウの種類は「ピノ・ノワール」ということになる。

尚、次回は「甘エビ」を使った料理を紹介しよう。


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