鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2024/7/1

2024年07月02日 21時46分51秒 | ゲーム・コミック・SF
夏ですねー。暑いですねー。
そんな不快感MAXの時期に、こんな作品を読んでしまいました(笑)

Amazon.co.jp: 金星の蟲 /酉島伝法 (ハヤカワ文庫JA)

酉島伝法氏の作品は、「皆勤の徒」以来、大好きです。
この唯一無二な世界観が、氏の作品の真骨頂だと思います。

・・・でも、率直に言わせていただいても、良いでしょうか。
飽きます。この世界観に。

日本語の語感を駆使した造語の本流と、まだ温かい死体の内臓のように人間味があると同時に彼岸の景色を見せつけてくる、この針の振り切れっぷり。
鴨は、嫌いではありません。でも、同じような作風で短編を並べられると、正直ちょっときついなー、とは思います。
たぶん、長編向きの作風なのだと思います。短編だと見た目の奇異さが際立ってしまい、徹底的に構築された世界観に辿り着けないんですよね。

鴨は氏の長編「宿借りの星」「奏で手のヌフレツン」を未読なので、この2作品を読んで、改めてレビューしたいと思います。
大好きな作家であることに、変わりはありません。鴨の価値観が変わっただけ、かもしれません。これだから、SF読みはやめられないのよねー。
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最近読んだSF 2024/6/16

2024年06月16日 17時24分24秒 | ゲーム・コミック・SF
なんだかもぅ、鴨が紹介するまでもなかろうと思うのですが、読了したのでレビューします!

三体/劉慈欣、大森望・光吉さくら・ワン チャイ・立原透耶訳(ハヤカワ文庫SF)

あらすじは、鴨が概要を紹介するまでもないと思いますので、省略。
鴨はこちらの原作を読む前に、テンセント版ドラマを30話まで鑑賞済みです。SF者としてこの作品の世界的な反響の大きさと大体の内容は事前に理解しており、ある程度の基礎知識を持った状態でテンセント版ドラマを鑑賞し、その上で原作を読んだ感想であること、まずはご了承ください。

思った以上に、ゴリゴリ正統派のハードSFでした。
しかし、それ以上に印象に残ったのは、一人の女性の絶望。狂気と紙一重の、絶望。

テンセント版ドラマでの描写も十分「ハードSF」と呼べる水準ではあります。が、科学的な裏付けをドラマ中では詳細に説明しないので(正直、かなりストーリー展開が冗長でしたので、あえて説明をカットしてイメージで伝える戦略を取ったのだろうとは思います)、SFの重要な要素である「科学的にうまく嘘をつく」その嘘のつき方の上手さがドラマだけではよく理解できず、原作を読んで「なるほど、こういうことだったのか・・・!」と膝を打つこと多々。”智子”の開発過程は、ドラマ版では割愛されていますが、これ映像化したら最高にエキサイティングだろうな〜と思ってしまう、SFとして「絵になる」描写が原作には満載です。

と、SFとしてのレベルの高さはもちろんのこと、やはりこの作品の特徴として挙げるべきは、中国の近現代史と容赦なく密接に絡み合わせた、登場人物の内面描写。
冒頭の文化大革命の激しい描写は、これよく中国で出版できたな、と思うレベル(中国出版バージョンは、順番が変えられているとのこと)。この冒頭シーンと、中盤の印象的なシーン・・・社会復帰した葉文潔が、父を撲殺した元紅衛兵の3人を呼び出して謝罪を求めるが、3人は謝罪する余裕もないぐらい貧困に喘ぐ「ただの人」だという事実に直面するシーン。どちらもドラマ版では描かれていません(というか、「描けなかった」というのが本当のところでしょう)が、このシーンを読んで、鴨は初めて、葉文潔の真の思い、人類社会に対する底なしの絶望と破壊による昇華への思いを理解できたような気がしました。
自分が始めた活動が、どんどん当初の思いとは異なる方向に暴走していく現実を目の当たりにしても、葉文潔が止めようとしなかったその無力感も、何となくわかるような気がします。

さて、そんな心に染みる第1作ではあるのですが、これは長大な物語の第一部に過ぎず、すべてのきっかけを作った葉文潔は、実質的にこの作品で姿を消します。
第二部以降は、さらに直球王道どストライクの侵略ハードSFになることは、火を見るよりも明らか。SFを初めて読んだ子供の頃に戻って、ワクワクと読み進めたいと思います!

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最近読んだSF 2024/5/4

2024年05月04日 17時26分29秒 | ゲーム・コミック・SF
もう夏と言っても差し支えない、連休後半戦ですねー。
良い天気が続くようなので、鴨は毎年恒例、窓掃除とカーテン洗濯にバリバリ励んでおります。今日で半分完了しました!できれば明日で済ませたい!
さて、先月読了したSFレビューです。

Amazon.co.jp:息吹/テッド・チャン、大森望訳(ハヤカワ文庫SF)

表題作が素晴らしい。
人類とは全く異なる宇宙、異なる世界観を持つ異質な生命体の生き様を、平易な筆致で淡々と、かつリリカルに描き出した短編。SFという文学ジャンルにしか描けない爽やかな感動を覚える、正に「瑞々しい」という表現がピッタリくる傑作です。

ただ、鴨的には他の作品群がちょっと物足りないところも、正直ありまして・・・
これが現代の「世界標準」のSF、なんだと思います。物語としてリーダビリティが高いし、ロジックもしっかりしてるし、登場人物の内面描写も豊かに描き出されていて、本当によくまとまっています。・・・でも、なんだか綺麗すぎて、あっさりと感じてしまうんですよねー。
贅沢な意見だとは思いますが、鴨はもっと熱量のあるSFが読みたいです。良くも悪くも今風、なんでしょうね。

決して面白くないわけではありませんので、そこは誤解のなきよう。ただ、鴨にはしっくりこなかったという、好みの問題だと思います。
そして、表題作「Exhalation」を「息吹」と訳した大森望氏、名和訳だと思います。この作品の本質を、日本語としてしっかり言い当てていますね。
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最近読んだSF 2024/4/29

2024年04月29日 17時35分29秒 | ゲーム・コミック・SF
ゴールデンウィークの前半、皆様いかがお過ごしでしょうかヽ( ´ー`)ノ
鴨は通院したりヘアサロン行ったり土いじりしたりしながら、まったりと過ごしておりますヽ( ´ー`)ノ
先日読了したこちらのSF、なかなかの衝撃でした。

オーラリメイカー〔完全版〕/春暮康一 (ハヤカワ文庫JA)

・・・これは・・・オラフ・ステープルドン「スターメイカー」???・・・

と思ってしまうぐらいスケール極大な表題作をはじめとして、異星生物を主なテーマとしたハードSFの中編3編を収めた作品集。あのハル・クレメントをもじったペンネームを冠する作者ならではの、直球王道どストライク、本寸法のハードSFです。
如何にも春暮氏らしいのは、異星生物の生態系や思考回路を冷静に丁寧に描き出すことによって、それに対峙する地球人類(ソラリアン)の問いや課題を引き出す、内省的な作風です。一言でいうと「エモい」です。

ただ、氏の前作「法治の獣」と比較すると、こちらの方がより「エモい」ですね。おそらく、設定上は前作よりもはるか未来の話で、水・炭素で構成される生物により結成される<連合>と人工知能を中心とする文明<知能流>との闘いという大きな物語を背景として、地球人類を含む全ての知性が<連合><知能流>どちらに属するか?そもそもどこから「知性」と定義するのか?という、根源的な問いをその世界観に内在するからでしょう。
ハードSF慣れしていないと、冒頭の表題作のあまりのスケール感についていけなくなるかもしれませんが、そんな時は後ろから順に読んでみてください(どこから読んでも支障ない構成になっています)。最後の作品「滅亡に至る病」が、一番エモいかも。「法治の獣」がイマイチしっくりこなかった方にも、全力でオススメします!
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最近読んだSF 2024/4/21

2024年04月21日 10時42分50秒 | ゲーム・コミック・SF
今月から通勤時間がこれまでの3倍になって、SF読みがまぁ捗る捗る( ̄▽ ̄)
読了したけど未レビューの作品が溜まってきてしまって、少々焦っております。まずは、今月頭に読了したこちらの作品から。

円: 劉慈欣短篇集/劉慈欣、大森望・泊功・齊藤正高訳(ハヤカワ文庫SF)

中国SFの短編集といえば、これまでハヤカワで出された「折りたたみ北京」「金色昔日」を読了しており、勢いがあって面白いんですが、割と「これ、SFというより幻想小説では・・・?」と思ってしまうファンタジー寄りの作品も多く(特に「金色昔日」)、まぁ日本SF黎明期もそうした作風が見られましたので、そんなもんかな、と思ってました。
しかしながら、さすがの劉慈欣。直球王道ハードSFを、SF初心者にもわかりやすいエンターテインメントに仕立て上げる腕前は、中国SFの中でも頭一つ抜きん出ている印象です。

収録された作品は、どれも科学的理論に裏打ちされた大ボラ話=ハードSFとしての骨格がしっかりしていて、安定感があります。鴨が特に好きなのは、「円円のシャボン玉」。小さな子供の頃から大好きなシャボン玉の研究を、小さな子供の頃の無邪気さそのままに推し進め、ついには世界を救う鍵となる話。かつては世界中で熱く語られていた「科学が切り開く未来の可能性」を肯定する、清々しい作品です。
「郷村教師」も、結果的に(地球規模では)何も変わらない切ないストーリーではあるのですが、日々の生活には一見して役に立たなそうな知識の存在意義を詩的な文章で静かに知らしめる、隠れた傑作だと思います。SF者として、初心を思い出させてくれる作品ですね。

正直なところ、今の日本のSF者として、若干の古臭さを感じないわけではありません。
でも、昔のSFってこうだったよなー、と思い返しながら、そのコンセプトを劉慈欣が描くとこのように展開するのね、と新たな視点から楽しむことができました。
しかしまぁ、何といっても表題作のスケールのデカさといったら(笑)ある意味、究極のバカSFと言えるかもしれません(←褒め言葉)。この作品がワンシーンに過ぎない「三体」、いやはや恐るべしです。
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最近読んだSF 2024/4/1

2024年04月01日 22時10分18秒 | ゲーム・コミック・SF
はいっ、今日から新年度です!
人事異動で勤務先が遠くなり、毎日の通勤にかなり時間を取られるようになったため、ブログの更新は週末をメインに、できる範囲でのんびりと継続したいと思います。引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

さて、2014年度初のSFレビュー。
かなり前に読了していたんですけど、年度末の忙しさにかまけてレビューのアップが遅くなりました(^_^;

Amazon.co.jp: 夢みる宝石/シオドア・スタージョン、永井淳訳(ハヤカワ文庫SF)*ハヤカワ文庫版は絶版のため、リンク先はちくま文庫版です*

みなしごのホーティは、里親から指を切断される虐待を受け、大切にしているぬいぐるみを抱いて里親の元から逃げ出す。ホーティがたどり着いた先は、”人喰い”と渾名される謎の男モネートルが率いるサーカス団だった。障害を持ちながらも助け合って生きるサーカス団の仲間たちに支えられながら、女の子に化けてサーカス団の一員となって活躍するホーティ。しかし、モネートルが邪悪な野望を抱いて暗躍していることに気づいたホーティと仲間たち、そしてかつてホーティと仲が良かったケイは、その野望に巻き込まれながら、それを阻止しようと闘いを始める・・・

優しくて、残酷で、凛として、猥雑な物語。
コミュニケーションが困難な異星体「宝石」を主軸にストーリーが展開する構造は、レム「ソラリス」と同様のSF的想像力を感じます。でも、SFかと言われると必ずしもそうとは言い切れず、ファンタジーとも、あるいはホラーとも言える、なんとも一言でまとめ難い作風です。
だからこそ、スタージョンの代表作たり得ているのだと、鴨は思います。

【以下、ネタバレ注意!】
遠い昔より地球に降り立ってきた「宝石」は、なんらかの意識を有しており、「夢見る」ことにより、地球上の生物にさまざまな影響を及ぼし、動植物を一から生成することさえある。しかし、なぜそうするのか・そうなるのかは、誰にもわからない。
宝石が単体で夢見て生成した生物はどこかしら欠けていることが多く、サーカス団に所属する障害者の大半は、そうした「宝石人」でした。一方、ホーティは2つの宝石により生成された「宝石人」であり、五体満足であることに加え、自らの姿形を意思の力で自在に変えられる能力を有していたのです。里親から切断された指が自然に元に戻っていくことに気づいたホーティと、彼を一人の人間として教育しつつ密かに愛する小人症のジーナ(彼女も実は宝石人であることがのちに判明)は、宝石を集めて巨大な力を得んと悪逆の限りを尽くすモネートルと戦うことを決意。元里親の悪の手が伸ばされていたケイを助け出すことに成功し、大きな犠牲を払いながらもモネートルとの闘いに勝利した二人は、宝石人同士で生きていくことを選択し、姿を消します。

自分が他の人とは明らかに異なる存在であることに気づき、悩みながらも、ジーナと仲間たちに支えられて一人の”人間”として成長していくホーティ。
見た目は10歳そこそこの少女でありながら、内面は成熟した聡明な女性であり、ホーティを救うために命を賭けて共に闘うジーナ。
最終的に「宝石を自己の意思で動かす能力」まで手に入れたホーティが選んだのは、サーカス団を捨ててジーナと共にひっそりと隠棲する道でした。
ずっと闘い続けてきたホーティにとって、それは穏やかに暮らすための唯一の選択肢なのでしょう。でも、鴨はこのラストシーンに、どうしようもない無力感を覚えてしまうのです。世界中に同じような宝石人が存在し、自分の存在に悩んでいるであろうことが容易に想像できる状況下、ホーティとジーナには、もっとできることがあるのではないか、と。

鴨がそう感じてしまうのは、他でもなく鴨自身が「宝石人ではない」から、単なる第三者だから、という自覚があります。
昨今流行りの「ダイバーシティ」問題にも通じる、そんな観点から読むと、深い問題意識を感じる作品です。
でも、スタージョンの筆致は常に軽やかで、サーカス団という舞台設定も相まって、それこそ宝石箱をひっくり返したかのようなカラフルさと賑やかさ、そして一抹の切なさを感じる作品でもあります。読む人によって、この作品から受け取るものはきっと人それぞれ違うのだろうな、と鴨は思います。
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デューン砂の惑星part2 観てきました

2024年03月16日 13時39分14秒 | ゲーム・コミック・SF
はいっ、昨日は年休をいただいて、師匠と一緒にゴジラの映画館に出かけてまいりました。
公開初日に観にいくぞ、と、前々から決めてました!

映画『デューン 砂の惑星PART2』公式サイト

映画『デューン 砂の惑星PART2』公式サイト

映画『デューン 砂の惑星PART2』公式サイト。大ヒット上映中!

ワーナー・ブラザース映画

 


原作ファンの皆様、覚悟してください。原作とかーなーりー印象が違います。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が次作「砂漠の救世主」まで読み込んだ上で、独自の解釈も含めて練り上げたことがよくわかる、監督の本気度を感じます。

救世主になどなりたくないのに、運命の歯車に回されて懊悩するポール。
フレメンの信仰心を利用できることに気づき、ポールを救世主にするため暗躍する母ジェシカ。
古びた言い伝えの主役に祭り上げられていくポールを見守る、救世主伝説を信じない実直なチャニの戸惑い。

とにかく、各キャラクターの心理面の深掘りが凄まじいです。原作ではさらっと描かれている心理描写を分厚く盛り込み、逆に原作の印象的なシーンである「命の水」を摂取した際のサイケデリックな描写は控えめです。その結果、この作品は大変重厚な心理劇・政治劇となり得ています。
ポールが残酷な未来を幻視するシーンなど、「砂漠の救世主」に踏み込んだと思わざるを得ないシーンもちらほらとあり、美しく成長したアリアがワンシーンだけ登場するのを見るに至って、これはヴィルヌーヴ監督、part3を制作する気満々だな・・・と確信しました。
もちろん、最新の映像技術を駆使した映像美も、さすがのヴィルヌーヴ節。砂虫の疾走感たるや、荘厳さたるや!砂虫に乗って高速移動してみたい!(笑)
なお、パンフレットに掲載されている堺三保氏のコラムが、原作ファンとして「うんうん、そうよねそうよね」と首がちぎれるぐらい頷きまくれる内容なので、SF者はパンフも必買!

世界的に売れているようなので、おそらくpart3の制作はほぼ確実でしょう。
あのとんでもなく救いようのない「砂漠の救世主」を、ヴィルヌーヴ監督はどう料理する気なのか?今から興味津々です!!!
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今年読んだSF 2023

2023年12月31日 10時16分40秒 | ゲーム・コミック・SF
はいっ、年末恒例、その年に通勤電車内で読んだSFレビュー、総ざらえします!
冒頭の写真は、年末年始の料理用にゲットした、秋田の「三関せり」です!せりofせり、キングオブせり!ゲットできて嬉しい!

⚫︎金色昔日〜現代中国SFアンソロジー/ケン・リュウ編
⚫︎月に呼ばれて海より如来る/夢枕獏
⚫︎アナベル・アノマリー/谷口裕貴
⚫︎ハロー、アメリカ/J・G・バラード
⚫︎走馬灯のセトリは考えておいて/柴田勝家
⚫︎バーサーカー赤方偏移の仮面/フレッド・ヘイバーセーゲン
⚫︎鏖戦・凍月/グレッグ・ベア
⚫︎所有せざる人々/アーシュラ・K・ル=グィン
⚫︎罪人の選択/貴志祐介
⚫︎デューン 砂漠の救世主<上・下>/フランク・ハーバート
⚫︎タイタン/野崎まど
⚫︎SFベスト・オブ・ザ・ベスト<上・下>/ジュディス・メリル編
⚫︎ユートロニカのこちら側/小川哲
⚫︎変種第二号〜ディック短編傑作選/P・K・ディック
⚫︎るん(笑)/酉島伝法

おぉ、全15冊。諸般の事情で在宅勤務が多くなり、通勤電車内での読書時間が短くなった割には、読んだ方といえるでしょうね。
今年の収穫は、なんといっても谷口裕貴「アナベル・アノマリー」。TwitterのSFクラスタ界隈でちょっとだけ話題になっていて、それを見逃していたらおそらく読まずにスルーしてしまった作品でした。これはすごいですよ、唯一無二の世界観です。全SF者に読んでいただきたいです。

さて、これからお雑煮仕込んで、デパートにおせち受け取りに出掛けてきまーす。
全国のSF者諸兄諸姉が来年も健やかにSFを読めることを祈りつつ、クリア・エーテル!!

今年読んだSF 2022
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今年読んだSF 2011
今年読んだSF 2010
今年読んだSF 2009
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最近読んだSF 2023/12/28

2023年12月28日 22時55分30秒 | ゲーム・コミック・SF
はいっ、今年最後のSFレビューですー。
レビューをまとめるのにちょっと苦労して、年末ギリギリになってしまいました。こんな個性的な作品を読了。

るん(笑)/酉島伝法(集英社文庫)

集英社文庫で酉島伝法作品出すのね・・・という感想はさておき、うーん、これはレビューが難しいなぁ。

鴨は氏のデビュー作「皆勤の徒」が大好きで、何度も読んで、その度に感動しています。あの独特な造語の本流、軽く流し読みするだけでは全く理解できない分厚く不可解な世界観、作品全体に漂う切切とした哀感、そして不穏な空気・・・唯一無二の作風だと、鴨は思っています。
他方、本作「るん(笑)」は、科学とスピリチュアリズムが逆転した日本(おそらく現代とほぼ変わらないでしょう)を舞台に、38度を「平熱」としたりホメオパシーで病気を治そうとしたり、猫が人を誑かす害獣と見做されて殺された死骸の山が存在していたりと、価値観が逆転することにより発生する恐怖をじわじわと描いています。ただ、その筆致はあくまでも淡々としており、登場人物の一部が「この状況はおかしい」と薄々感じていることも淡々と描き出し、特にこれといった事件が起こることもなく何も解決せず、この連作集は幕を閉じます。
怖いです。とても怖い作品です。でも、酉島作品としては、ちょっとイマイチかなぁ・・・というのが、鴨の偽らざる感想です。

以下のグレッグ・ベア作品を読んだ時と似たような感想になってしまうのですが、

最近読んだSF 2023/7/19 - 鴨が行く ver.BLOG

・・・・・・暑いですね・・・・・・いうまでもなく、夏ですから・・・(-_-;そんな夏こそ!SFを読む!久しぶりにハードカバーで読む!早川書房から、こんな名作が新刊扱いで...

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グレッグ・ベア同様、酉島伝法も針の振り切れた理解不可能な世界を丸ごと描き出すことを得意とする作風です。
そうした作風の作家が、実社会と地続きの価値観を引きずりながらSFなりファンタジーなりを書こうとすると、どうしても「・・・で、結局何を書きたかったの?」との違和感が拭いきれなくなってしまうんですよね・・・。
本作「るん(笑)」も、スピリチュアル系を盲信することの恐ろしさを表現した怖さはビシバシ感じますし、氏の他の作品「四海文書註解抄」(ハヤカワSF文庫「異常論文」(樋口恭介編)に収録)にも、カルト宗教的な”何か”に関する恐怖が描き出されていて、同様の怖さを感じさせます。
でも、これは本当に鴨の好みの問題なんですけど、酉島作品はやはりどこか遥か遠いところの、異質だけれど温かみのある、あの独特の世界観にどっぷりハマって”旅をする”読書体験が忘れ難いんですよねー。「るん(笑)」はあまりにも実社会に近すぎて、あまり入り込めなかったなー、というのが正直なところです。
SFというより、よりリアルなホラーとして読んだ方が正しい作品かもしれませんね。
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最近読んだSF 2023/12/15

2023年12月15日 20時15分50秒 | ゲーム・コミック・SF
だいぶ歳も押し迫ってまいりましたが、出勤日が多くなったこともあり、通勤電車内でのSF読みは順調です。
久しぶりに読んだディックをレビュー。

変種第二号/P・K・ディック、大森望編(ハヤカワ文庫SF)

いやいや、表題作「変種第二号」が傑作過ぎ。久々にやられましたわ。これだからディック読みはやめられないのよ。

「戦争」をテーマとした作品をまとめた、日本オリジナル短編集。戦争テーマと言ってもかなり広義に捉えられていて、収録作はそれなりにバリエーションがあって読み応えがあります。(ただし、本邦初訳らしい「戦利船」だけは取扱注意!ディックにしては珍しい、超絶バカSFです(笑))

数多くの短編を書き残したディック作品の中でも屈指の傑作と言っても良い「変種第二号」は、ディックが永遠のテーマとしていた「人間と人間じゃないものの境界は何か?」という問題意識をストレートに表現しつつ、サスペンスフルな一級のエンターテインメント作品としても仕上がっています。他にも、主人公が最後に迫られた選択の残酷が戦争の無意味さに直結する「たそがれの朝食」、人間の愚かさを端的に描き出してあまりある「ゴールデン・マン」など、グッとくる佳作が目白押し。ディック初心者にもオススメだと思います。
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