鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2023/12/28

2023年12月28日 22時55分30秒 | ゲーム・コミック・SF
はいっ、今年最後のSFレビューですー。
レビューをまとめるのにちょっと苦労して、年末ギリギリになってしまいました。こんな個性的な作品を読了。

るん(笑)/酉島伝法(集英社文庫)

集英社文庫で酉島伝法作品出すのね・・・という感想はさておき、うーん、これはレビューが難しいなぁ。

鴨は氏のデビュー作「皆勤の徒」が大好きで、何度も読んで、その度に感動しています。あの独特な造語の本流、軽く流し読みするだけでは全く理解できない分厚く不可解な世界観、作品全体に漂う切切とした哀感、そして不穏な空気・・・唯一無二の作風だと、鴨は思っています。
他方、本作「るん(笑)」は、科学とスピリチュアリズムが逆転した日本(おそらく現代とほぼ変わらないでしょう)を舞台に、38度を「平熱」としたりホメオパシーで病気を治そうとしたり、猫が人を誑かす害獣と見做されて殺された死骸の山が存在していたりと、価値観が逆転することにより発生する恐怖をじわじわと描いています。ただ、その筆致はあくまでも淡々としており、登場人物の一部が「この状況はおかしい」と薄々感じていることも淡々と描き出し、特にこれといった事件が起こることもなく何も解決せず、この連作集は幕を閉じます。
怖いです。とても怖い作品です。でも、酉島作品としては、ちょっとイマイチかなぁ・・・というのが、鴨の偽らざる感想です。

以下のグレッグ・ベア作品を読んだ時と似たような感想になってしまうのですが、

最近読んだSF 2023/7/19 - 鴨が行く ver.BLOG

・・・・・・暑いですね・・・・・・いうまでもなく、夏ですから・・・(-_-;そんな夏こそ!SFを読む!久しぶりにハードカバーで読む!早川書房から、こんな名作が新刊扱いで...

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グレッグ・ベア同様、酉島伝法も針の振り切れた理解不可能な世界を丸ごと描き出すことを得意とする作風です。
そうした作風の作家が、実社会と地続きの価値観を引きずりながらSFなりファンタジーなりを書こうとすると、どうしても「・・・で、結局何を書きたかったの?」との違和感が拭いきれなくなってしまうんですよね・・・。
本作「るん(笑)」も、スピリチュアル系を盲信することの恐ろしさを表現した怖さはビシバシ感じますし、氏の他の作品「四海文書註解抄」(ハヤカワSF文庫「異常論文」(樋口恭介編)に収録)にも、カルト宗教的な”何か”に関する恐怖が描き出されていて、同様の怖さを感じさせます。
でも、これは本当に鴨の好みの問題なんですけど、酉島作品はやはりどこか遥か遠いところの、異質だけれど温かみのある、あの独特の世界観にどっぷりハマって”旅をする”読書体験が忘れ難いんですよねー。「るん(笑)」はあまりにも実社会に近すぎて、あまり入り込めなかったなー、というのが正直なところです。
SFというより、よりリアルなホラーとして読んだ方が正しい作品かもしれませんね。
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