鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2023/2/13

2023年02月13日 21時10分27秒 | ゲーム・コミック・SF
年度末のクッソ忙しい時期ではありますが、通勤電車内でのSF読みは順調に進んでおります。
先日読了したこちらのSF、いやーインパクトあり過ぎでした!

アナベル・アノマリー/谷口裕貴(徳間文庫)

人為的にサイキックを産み出す「レンブラント・プロセス」が実用化された近未来。黒髪の美少女アナベルがそのプロセスを経て得た能力は、あらゆるものを「変容」させる能力だった。人体をネオン灯に、鋼鉄の扉を生きた鱏に、大伽藍を海水に変容させることができるアナベルの能力は、彼女自身にも制御できず、その破壊力に恐れをなした35名の科学者によってアナベルは撲殺される。うち30名が返り討ちで命を落とし、生き残ったのは僅か5名だった。
しかし、最強にして最凶のサイキック・アナベルは、自らに関連する事物を依代にして何度も何度も蘇り、蘇るたびに世界を恐慌に陥れる。生き残った5名の科学者によって設立された対アナベル機関「ジェイコブス」は、アナベルに対抗しうるサイキック能力を持つ6名の障害者によるゲシュタルト「Six」を中心に、アナベルの掃討作戦に乗り出す・・・。

いやー、これ、すごいもん読んじゃったなー。
読了して巻を閉じた直後の、鴨の率直な感想です。

全編これゲロゲロのぐっちょぐちょで、血と脂と呪いと報復の連鎖で、これ以上なく醜悪で、しかしながら寄って立つ理屈がちゃんとあって、だからこそ、これ以上なくスタイリッシュな世界観です。
あらすじを紹介する限りではアナベルとSixの戦いがメインになるかと思いきや、アナベルもSixも、踏み込んだ描写はほぼありません。この作品で描かれるのは、アナベルとSixの戦いに「使い捨ての兵器」として投入され、生死の狭間で振り回される、凡庸なサイキックたちの生き様。この作品の世界観において、サイキックは単なる「工業製品」であり、ジェイコブスにとっては人間魚雷並みの消耗品です。そんな苛烈な世界観の中、消耗品として使役されるサイキックたちの闘い、そして思いが、この作品のメインテーマです。
この冷徹さ、虚無感と言ったら・・・鴨的には、日本SF第一世代並みの「針の振り切れっぷり」を感じた次第です。

そして、鴨的に一番印象的だったのは、ラストシーンの静謐さ。
これだけ派手派手しい独特の世界観を容赦無く読者の眼前に繰り広げながら、SFとしてきっちりと筋を通し、意図せずして世界を呪う存在となってしまったアナベルの魂の救済を描きつつ、物語の落とし前を付けています。
これは、カッコ良い。寡作な作家さんだそうですが、他の作品も読んでみたいです!
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