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鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2023/5/20

2023年05月20日 22時21分56秒 | ゲーム・コミック・SF
夏なんだか春なんだか、よくわからない天気が続きますねヽ( ´ー`)ノ
3月末の八重洲ブックセンター本店閉店直前企画「ハヤカワ文庫・在庫希少本フェア」で幸運にもゲットできた、ほぼ絶版本のご紹介です。

バーサーカー赤方偏移の仮面/フレッド・セイバーヘーゲン、浅倉久志・岡部宏之訳(ハヤカワ文庫SF)

太古の星間帝国が戦争のために産み出した自律生成型殺戮機械、通称<バーサーカー>。自らを産み出した星間帝国を滅ぼし、その後も永きにわたり増殖・進化・拡散を続ける<バーサーカー>が、遂に地球人類の活動圏内に姿を現す。「生命=悪」とプログラミングされ、あらゆる生命の徹底的な殲滅を試みる<バーサーカー>と人類との、長い戦いが今ここに幕を開ける・・・

太古の殺戮機械と人類の壮絶な戦い…という厨二病全開の単純な作品と思いきや、こんな感動的な結末が待っていたとは。
これだからSF読みはやめられません!

<バーサーカー>と人類との戦いを描く連作集ではありますが、巷に溢れるいわゆる「戦争SF」ものとの大きな違いは、SF者がよくネタにする「戦う相手の異星人が、なぜ人類とほぼ同じようなモノの考え方をするのか?」という疑問に答えていることです。
<バーサーカー>は、機械ではありますが、敵の社会構成や行動特性を収集・分析・模倣する能力を有しており、敵を欺くために自らを先鋭的に進化させます。そのため、「人類とほぼ同じようなモノの考え方」を研究して、それを戦略的に利用できるのです。だから、人類側からもある程度のコミュニケーションが可能ですし、お互いに蝶々発止の騙し合いや、場合によっては取引をすることも可能です。
ただ、<バーサーカー>は「人類とほぼ同じようなモノの考え方」をあくまでも戦略として利用しているだけで、人類の価値観や感性を「理解」しているわけではありません。そこに、人類にとっての僅かな勝機があります。
物語の後半に進むにつれて、この僅かな勝機を知略を尽くして掴み取る人類の姿が描かれていきます。連作の最後の作品において、<バーサーカー>が人類側のキーパーソンであると認識し絶対に殺戮せんと執拗に追い続けるカールセン司令官が、正にこの勝機を得て人類社会に帰還する姿を描いて、この連作集は幕を閉じます。
ここでカールセン司令官が勝利の決め手としたのは、人類は未知のものに対して「驚異」を感じる、ということ。ネタバレになるので詳細は控えますが、この下りは読んでいて鳥肌が立つほどの感動を覚えました。

単なる戦争SF、と思って手に取らずにいるSF者の方々、一読して損はありません。壮大な思考実験でもある、ハイレベルなSFです。
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