天使の図書館ブログ

 オリジナル小説サイト「天使の図書館」の付属ブログです。

動物たちの王国【第二部】-25-

2014-03-29 | 創作ノート


 え~と、今回も本文のほうそんなに長くないので……ゴシップガールの軽いパロ(?)でも暇つぶしに書いてみようかなと思います(笑)


       ~GGプチ劇場☆~

 ブレア:「大変よ、S。チャックの本当の父親が誰かわかったの」

 セリーナ:「ええっ!?心優しいジャックおじさんが、実は息子をいぢめてたなんてオチじゃないでしょうね」

 ブレア:「馬鹿言わないでよ、S。あんたの貧困な想像力ときたら、まったく独創性に欠けるんだから」

 セリーナ:「私にもダンみたいな小説を書けるくらい想像力があったら、あんたが最後にはハドソン川に沈むっていうような本を書けたんでしょうにね(溜息☆)」

 ブレア:「ふふっ、そうこなくっちゃ、S。なんにしても、汚女子としてハドソン川に沈むのは、あんたとあたし以外の誰かでいいわ。それより見て。これがチャックの本当の父親の写真」


(bokete.jp様よりm(_ _)m)

 セリーナ:「えっと、これ誰?チャックに似てるといえば、似てないこともないけど……っていうか、むしろ似てる!?」

 ブレア:「S、あんたの今のリアクションはわかりにくいわ。なんにしても、チャックのお父さんがとうとうチャックに真実を話したの。エリザベスが、その昔日本へ旅行に行った時、ついうっかり彼との間に作ってしまったのがチャックだったってこと」

 セリーナ:「ついうっかりって、ブレア、そんなのわからいないでしょ。エリザベスとこの人の間にも、もしかしたら本当の愛情があったかもしれないじゃない」

 ブレア:「まあ、それはともかく、彼の名前はヒロキ・マツカタといって、日本の俳優らしいわ。チャックったら、今すぐ日本へ飛んで真実を確かめるだなんて言って……あんた、これどう思う?」

 セリーナ:「こんなこと、言いたくないけどブレア、チャックがまた傷つくんじゃないかって、わたし、そのことが一番心配だよ。チャックのお父さんとジャックおじさんがまた嘘ついてるかもしれないわけだし……」

 ブレア:「そうよね。なんにしてもS、わたしもチャックについて日本へ行くつもりなんだけど、あんたはどうする?」

 セリーナ:「どうするって……この人が日本のどこにいるか、もうわかってるってこと?」

 ブレア:「そういうこと。京都にある時代劇のなんとか撮影村だって。わたし、日本に到着したら着物着て、チャックと芸者ごっこするつもりなんだー。で、チャックが悪の代官役。あーれーぐるぐるぐるっていうの、S、日本の時代劇で見たことない?」

 セリーナ:「なんにしてもB、あたしは日本へ行くのはいいよ。仮にそのヒロキ・マツカタっていう人がチャックのお父さんでも、そうじゃなかったとしても……チャックにはあんたがいるんだもん。日本観光、楽しんできて」

 ブレア:「S……ありがと。そんなふうに言ってくれるあんたはやっぱり、わたしの最高の親友だよ


 ――というわけで(どういうわけだか☆)、GGなんちゃって小劇場でした(笑)

 それではまた~!!



       動物たちの王国【第二部】-25-

 翼と唯の関係は、その後も順調に進んでいた。

 相変わらず互いの部屋を行ったり来たりし、唯が食事を作って翼が食べ、唯が片付けをし、その間彼は何も手伝わない……おそらくこれは結婚後もそうなるに違いないが、唯のほうでは特にこれといって不満はなかった。

 ちょうど恋愛が盛り上がっているから、彼のためになんでもしたい、むしろしてあげたいという気持ちが唯の側に強いというよりも――やはりそれは、翼の職業が医師であり、その激務を傍らでつぶさに見て知っているそのせいであったかもしれない。

 無論、そんなことを言ったとすれば、唯にしてもオペ室の看護師として毎日疲れきって帰ってくるのだが、それが仮にちょっとした手料理でも、翼が大袈裟なくらい有難がって食べるため、唯はその時点で大抵の疲れなど吹っ飛んでしまうのだった。

 だがこの年の二月十四日、一般にバレンタインデーと呼ばれる日に、その事件は起きた。唯が休日であったその土曜日、翼は午前中だけダ・ヴィンチによる手術があり――午後には自宅のほうへ戻ってくるという予定であった。そこで唯は疲れて帰ってくるだろう彼を手料理でもてなしたいと考え、色々な食材をエコバッグいっぱいに買い込み、その中にはチョコレートケーキの材料も入っていたのである。

(イニシャル入りのマフラーは、まあ最後にでも渡すとして……)

 仕事が終わったのちは、大抵一緒に時間を過ごすため、そのマフラーを秘密で編むのに唯は苦心したが、きのうの深夜にようやく完成していた。藍色とも灰色ともつかない、ブルーグレイの毛糸を手芸用品店で見かけた時――(結城先生に似合いそうな色!)と直感し、唯はすぐにそれを五つほど購入していた。

(本当はセーターのほうが良かったんだけど、流石にそこまでの時間はなかったものね)

 そんなふうに思いながら、翼に教えてもらった番号でロックを解除し、エレベーターで十階まで上っていくと、翼の住む1005号室のドアの前には、何故か女性の姿があった。

 本物らしく見えるミンクのコートを着ているが、その下には膝上までくるヒールの高いロングブーツ、もしや毛皮の下は素裸なのではないかと思うほど、短いスカートを履いている女性だった。首にはダイヤの首飾りが光り、それだけでなくそれが豊満な胸の谷間で揺れているのだった。

『あ、あのっ、うちに何か御用でしょうか?』

 唯はそんな言葉が喉まで出かかったが、とりあえず黙って、部屋の鍵を開けようとした。そのように無言の行動を示すことで、いかにも水商売風に見える女性がここから立ち去ってくれれば良いと思ったのである。

「あんた、あたしの翼の一体なに?」

 女のほうから、いかにも不審気な声音でそう聞かれた瞬間――唯は言葉を失った。愚かにも一瞬、(わたしは結城先生の一体なんなのだろう?)などと思ってしまった、そのせいかもしれない。

 唯は結局、ドアに鍵を差し入れはしたものの、それを開けることはせず、1005号室の前から黙って立ち去った。とはいえ、重いエコバッグを二つも持ってもう一度バスに乗るなど、なんとも馬鹿馬鹿しい話だった。そこでその荷物はふたつとも、深緑色のドアの前にドサリと置いておくことになる。

「何あの女、変なのー」

 唯がエレベーターの向こうに消えるかどうかという瞬間に、茶色とも金色ともつかぬ髪色の女はそう呟いた。彼女は名前を水上ゆう子といい、翼とはただ一度だけ勢いで寝たことがあるという、実際にはそれだけの女性だった。

          

(結城先生の馬鹿っ!!)

 近くのバス停までずんずん駆け下りていく道すがら、大気の冷たさによってか、目尻に滲んだ涙を拭って、唯はすっかり心が怒りと哀しみで沈みきっていた。

 翼の住んでいるマンションは高台に位置しており、そこまで辿り着くには急な勾配の坂道を上っていかねばならない。だが、そこから一段下った比較的大きめの通りで、唯はバスを待つ間――青い空ときらきら輝く水面、その境目となる水平線を眺めやり、怒りとも悲しみともつかぬ気持ちをどうにか宥めることが出来た。

『あれだけの人が、女性ひとりで満足できるものかしらね?』

 確かにそれはそうだろうと、唯も一応思ってはいた。けれど、その時には翼への信頼の気持ちのほうが遥かに大きかったため、辰巳のそうした言葉を心の隅に追いやることが出来たのだ。

『あんた、あたしの翼の一体なに?』

<あたしの翼>という言葉を、唯はもう一度胸の中で反芻した。それだけでも、関係を持ったのは一度二度ではないことが、恋愛に疎い唯でも流石にわかる。また、唯はブランド物の靴やバッグ、アクセサリー類といったものにまるでピンと来ない質であったが、彼女が翼に買ってもらったのだろうシャネルのバッグを下げていたことくらいは、当然ピンときた。

(結城先生、わたしにすぐ、電話してくるつもりかしら。それとも、あの女の人と仲良くしたあとで、「おまえのことも悪いようにはしない」とか、もしそんなふうに思ってるんだとしたら……)

 唯はここで、自分がもう一度買い物をして家へ戻らねばならないと気づき、なんとも億劫だと感じた。いつもなら休日には、翼と一緒にどこかのデパートか大型スーパーにでも、一緒に買い物をしにいく。移動も翼が車を運転してくれるので楽々だった。けれど、唯のマンションの近くにはコンビニはあっても大きなスーパーはない。しかも、そのスーパーまで行くには一つ手前のバス停で降りた上、帰りはそこから十五分も歩かなくてはならないのだった。

(朝には、こんなに晴れていて今日もいいことがありそうとか、結城先生のことを思って幸せな気持ちだったのに……)

 その時の気持ちと今の感情の落差を思い、唯はますます自分が悲しくなってきた。やがて、寒さの中でぼんやりと立ち尽くしている唯の前にバスが到着し、海辺の町を見下ろす道を、蛇行するようにのどかに進んでいく。

 この時唯はバスの一番後ろの席に座っていたのだが、まばらな乗客の後ろ姿と、外の海景色を眺めるうちに気分も静まり、(結局は)と、溜息とともにひとつの結論が出る。

(結局はわたし、結城先生があの女の人とはなんでもないって言ったら、許してしまうわ。本当はそうじゃないってわかってるけど……でも、その時の言い方にもよるわよね。だって、先生いつもわたしに「結婚しようなんて思ったのはおまえが初めてだ」みたいな話をするけど、嘘としか思えないような弁解の仕方をされたら……その言葉自体あやしい気がするもの)

 唯はこの時、乗客が小さな声で話す以外は静かな車内で――突然「わーっ!」と叫びだしたいような衝動に駆られた。「『俺をこんな気持ちにさせるのはおまえだけだ』ですって?何よこの、嘘つき、嘘つき、嘘つきーーっ!!』と、窓から海に向かって叫べたら、どれほどスッとすることだろう。

 とりあえず唯は、心の中の崖っぷちでそのように大声で叫ぶと、再び目尻に滲んできた涙をマフラーで拭った。もし自分に、「何を言ってこようが絶対許さないんだから!」と強気になれる力があったら、と唯は思う。けれど結局、唯の中にあるのは「最後には許す」という選択肢だけだった。ただ、あくまでもそれは「最後には」ということであって――その過程が長くなるのも短くて済むのも、これからの翼の態度次第だと、そんなふうに唯は胸塞がれる思いのまま、バスに揺られていたのだった。



 >>続く。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿