新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

チャレンジングな漫画論「失われた娯楽を求めて -極西マンガ論-」

2018年12月19日 | 新刊書
失われた娯楽を求めて -極西マンガ論-
仲俣 暁生 (著)


タイトルの「極西」という概念がわかりにくいのだが、
「極西文学」―それは1960年代後半以降に生まれ、90年代に書き始めた現代日本文学の作家
という説明をみつけた。説明されても理解が深まるわけではないが
この時代の漫画を時代的な特性を軸に考察するということだろう。
たんなる漫画論ではなく、一つの焦点のもとで漫画を考察するのは好ましいことだ。
漫画を文章で論じるのは難しいし、チャレンジングなことであるだけに
それが成功しているのを期待したい。



単行本: 160ページ
出版社: 駒草出版 (2018/12/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 4909646108
ISBN-13: 978-4909646101
発売日: 2018/12/19

内容紹介
文芸評論家・仲俣暁生がこれまで書きつづけてきた珠玉のマンガ論を1冊に!

岡崎京子論/楳図かずお論/安野モヨコ論/西原理恵子論/島本和彦論/藤田和日郎論/皆川亮二論/松本大洋論/「ピアニッシモ」連載「失われた娯楽を求めて 極西マンガ私論」ほか
カバー画を手掛けた今日マチ子との対談も収録!

出版社からのコメント
10代の頃、マンガ評論家になりたかったという文芸評論家にして編集者の仲俣暁生さんによる初のマンガ評論集です。ニューウェーブ以降のマンガ家たちとその作品の批評を中心に、マンガはなぜおもしろいのか! ?を読み解きます。また、カバー画を手掛けてくださった今日マチ子先生との対談も収録します。

著者について
仲俣 暁生(なかまた・あきお)
文芸評論家。「マガジン航」編集人。著書に『極西文学論』などがある。

老いと記憶の不思議な関係「老いと記憶-加齢で得るもの、失うもの」

2018年12月19日 | 新刊書
老いと記憶-加齢で得るもの、失うもの (中公新書)
増本 康平 (著)



人間の記憶というテーマは、さまざまな観点から考察できるものですが
この書物は老いと記憶という視点から考察するものです。
老年になると、若いころの記憶力は失われてしまうもののようですが
逆に、それまですっかり忘れていた幼いころの記憶が
まざまざと想起されることもあるようです。
このような老いと記憶の不思議な関係について考察するのは楽しいことでしょう。




新書: 216ページ
出版社: 中央公論新社 (2018/12/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 4121025210
ISBN-13: 978-4121025210
発売日: 2018/12/19

内容紹介
屈指の高齢社会である日本では、老化への関心も高い。加齢に伴って人間の記憶や認知はどう変わるのか、それらを司る脳にどのような変化が生まれているのか、そして、変化する記憶機能といかに向き合うべきか。加齢をネガティブにばかり捉えず、正しい知識で向き合うための一冊。

著者について
増本康平
1977年生まれ.神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授.大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了(人間科学).日本学術振興会特別研究員,大阪大学大学院人間科学研究科助教,島根大学法文学部講師を経て,神戸大学に着任.スタンフォード大学長寿センター客員研究員.専門分野は,高齢者心理学,認知心理学,神経心理学. 著書『エピソード記憶と行為の認知神経心理学』(ナカニシヤ出版,2009年)

視野の広さが魅力的な「海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化」

2018年12月19日 | 新刊書
海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化 (ブルーバックス)
須藤 斎 (著)


気候の変動は地球の全体に影響するものですが、
とくに生物的な変化は重要です。
この書物では、そうした変化を、海から起きた変化や陸で起きた変化に分けながら
生物の進化を解明しようとするもののようです。
地球のスケールから微生物のスケールにまで及ぶ
著者の視野の広さが魅力的に思えます。
著書の『0・1ミリのタイムマシン』とかも読んでみたい。


新書: 282ページ
出版社: 講談社 (2018/12/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065138507
ISBN-13: 978-4065138502
発売日: 2018/12/19

内容紹介
地球規模の環境変動から読み解く壮大な生命史!

大陸移動と海洋の変化が生物に与えた影響とは?
生物の飛躍的進化はいつ、どこで起こったか?

約3390万年前、南極の環境が激変したことを契機に、生存に不利な時期を「休眠」戦略で生き延びた微生物が大繁栄した。

やがてクジラやアシカ、ペンギンなど、海洋生物の体構造や種数の進化を促したその生物は、陸上で暮らす馬や植物とも共進化を遂げていた!?

「体の大小=サイズ」と「世代交代=リサイクルのスピード」から見えてくる、まったく新しい生命の進化史とは?

気鋭の若手研究者が描き出す、大陸と海洋の構造変化からみた進化のドラマ!


【もくじ】

プロローグ――海の時間、陸の時間

第1章 生物どうしの複層的なつながり――「鎖」から「網」へ

第2章 「海の生産者」はなぜ小さいのか?――サイズが小型化した理由

第3章 「生態系を進化させた」大事変の発見――陸が変わり、海が変わり、生物が変わった!

第4章 「進化のエンジン」を考える――「小」と「大」、「海」と「陸」の共進化が起こっていた!


【著者プロフィール】

須藤 斎(すとう・いつき)

1976年生まれ。筑波大学第一学群自然学類卒業。同大学大学院地球科学研究科博士課程修了。博士(理学)。
現在、名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻准教授。

微化石のひとつである珪藻化石の調査・分類によって、過去の地球環境の復元と未来予測に取り組む。
著書に、『0・1ミリのタイムマシン』(くもん出版。2009年産経児童出版文化賞大賞受賞)、『海底ごりごり 地球史発掘』(PHPサイエンス・ワールド新書)がある。

趣味は、動物園・水族館をめぐって生き物の写真を撮ること。
バイクに乗ることも好きだったが、本書で紹介する研究において重要な転機となった事故に遭って以来、乗っていない。

著者について
須藤 斎
須藤 斎(すとう・いつき)
1976年生まれ。筑波大学第一学群自然学類卒業。同大学大学院地球科学研究科博士課程修了。博士(理学)。現在、名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻准教授。微化石のひとつである珪藻化石の調査・分類によって、過去の地球環境の復元と未来予測に取り組む。著書に、『0・1ミリのタイムマシン』(くもん出版。2009年産経児童出版文化賞大賞受賞)、『海底ごりごり 地球史発掘』(PHPサイエンス・ワールド新書)がある。趣味は、動物園・水族館をめぐって生き物の写真を撮ること。バイクに乗ることも好きだったが、本書で紹介する研究において重要な転機となった事故に遭って以来、乗っていない。

つい見たくなる「美しい廃墟—日本編— 耽美な世界観を表す日本の廃墟たち」

2018年12月18日 | 新刊書
美しい廃墟—日本編— 耽美な世界観を表す日本の廃墟たち
MdN編集部 (編集)


廃墟には思い込みがあるので
類書はあるものの、どうしても気になる一冊。
廃墟の美しさは個人の美的な感覚に基づいたものであって
「美しい」廃墟である必要はないし、不気味であってよいとは思うのだが。
それでもやはり見てみたい。


単行本(ソフトカバー): 160ページ
出版社: エムディエヌコーポレーション (2018/12/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 484436832X
ISBN-13: 978-4844368328
発売日: 2018/12/18

廃墟のイメージが“不気味"から“美しい"に変わる廃墟写真集

日本全国の美しい廃墟を集めた写真集です。子供たちが学んでいた片鱗を残す学校、
残された医療機器が生々しい病院、もう誰も来ることのない寂しさを湛えた遊園地、お客が離れ荒れ果てたホテル、
大きな錆び付いた機械や堅牢な構造がむき出しになった工場、人々から忘れられた集落など、
日本各地の幻想的、神秘的に感じられるような美しい廃墟を厳選し一冊にまとめました。

贅沢な読後感が期待できる「映画と芸術と生と」

2018年12月18日 | 新刊書
映画と芸術と生と
岡田 温司 (著)


イタリア文学や芸術や思想に詳しい岡田温司さんのエッセー集。
とくに映画に焦点が当てられているのが特徴。
映画をみながら、芸術や思想についても考える。
贅沢な読後感が期待できる一冊。


単行本: 294ページ
出版社: 筑摩書房 (2018/12/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480873988
ISBN-13: 978-4480873989
発売日: 2018/12/18


内容紹介
レンブラント、フェルメール、ウォーホル、フリーダ……実証主義を超え、真実らしさを求めた映像が挑んだ、新たな芸術家の詩的真実に迫るスリリングな映画論。

著者について
1954年広島県生まれ。1978年京都大学文学部卒業、1985年同大学大学院博士課程修了、岡山大学助教授を経て、現在京都大学大学院人間・環境学研究科教授。西洋美術史・思想史専攻。『モランディとその時代』で吉田秀和賞『フロイトのイタリア』で読売文学賞受賞。『処女懐胎』『マグダラのマリア』『キリストの身体』『アダムとイブ』『グランドツアー』『デスマスク』ほか著作多数。

ナチュラルヒストリーシリーズの概論書「ナチュラルヒストリー」

2018年12月18日 | 新刊書
ナチュラルヒストリー (Natural History)
岩槻 邦男 (著)


自然の観察の内容ではなく、学問としての自然史について考察した書物。
わたしたち人間も自然の一部であるだけに、自然史は人間についての学問でもある。
「ナチュラルヒストリーシリーズ」として同じ出版社から下に示すような書物が刊行されている。
これらの書物を読むさいにも、自然と人間とのかかわりを歴史的に、
科学的に考察する立場を総括した書物として役立つのでは。


単行本: 380ページ
出版社: 東京大学出版会 (2018/12/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 413060256X
ISBN-13: 978-4130602563
発売日: 2018/12/17

内容紹介
自然を統合的に理解するために――
大学、博物館、植物園とナチュラルヒストリーのさまざまな研究・教育・普及の現場での豊富な経験をふまえて、生物多様性、生命系などをキーワードに「生きているとはどういうことか」を問いなおす。ナチュラルヒストリーシリーズ(Natural History Series)全50巻完結!

【主要目次】
第1章 ナチュラルヒストリーをさかのぼる――時間軸から自然をみる
1.1 範疇としてのナチュラルヒストリー
1.2 ナチュラルヒストリーと科学――知の創出と伝達
1.3 ナチュラルヒストリーと科学の近代化
第2章 ナチュラルヒストリーを究める――生きていることを科学で解く
2.1 生物科学とナチュラルヒストリー
2.2 生きているとはどういうことかをナチュラルヒストリーで問う
2.3 『文明が育てた植物たち』で生物多様性を俯瞰する
第3章 ナチュラルヒストリーをひきつぐ――どのように学ぶか
3.1 ナチュラルヒストリーの教育――日本における知の継承の歴史
3.2 自然史資料標本
3.3 ナチュラルヒストリーとバイオインフォマティクス
第4章 ナチュラルヒストリーを学ぶ――生涯を通じた学習で
4.1 日本におけるナチュラルヒストリー
4.2 大学と博物館の協働
4.3 地球規模でみるナチュラルヒストリーの研究
第5章 ナチュラルヒストリーを展開する――いま必要なこと
5.1 現代科学と知的好奇心
5.2 ナチュラルヒストリーの目でみる生命
5.3 ナチュラルヒストリーの目でみる社会――社会貢献とは
5.4 ナチュラルヒストリーにいま求められること
第6章 ナチュラルヒストリーと学ぶよろこび――まとめにかえて
6.1 ナチュラルヒストリーと科学
6.2 学ぶよろこび、究めるよろこび

著者について
岩槻邦男:東京大学名誉教授

ナチュラルヒストリー 岩槻 邦男 著 本体4,500円+税
新装版 UPバイオロジー 陸上植物の種 岩槻 邦男 著 本体2,400円+税
日本の植物園 岩槻 邦男 著 本体3,800円+税
シダ植物の自然史 岩槻 邦男 著 本体3,400円+税
ニホンヤマネ 湊 秋作 著 本体4,600円+税
有袋類学 遠藤 秀紀 著 本体4,200円+税
水辺の樹木誌 崎尾 均 著 本体4,400円+税
哺乳類の生物地理学 増田 隆一 著 本体3,800円+税
化石の植物学 西田 治文 著 本体4,800円+税
湿原の植物誌 冨士田 裕子 著 本体4,400円+税
ウサギ学 山田 文雄 著 本体4,500円+税
新版 動物進化形態学 倉谷 滋 著 本体12,000円+税
ニホンカモシカ 落合 啓二 著 本体5,300円+税
フィールドサイエンティスト 佐藤 哲 著 本体3,600円+税
トンボの生態学 渡辺 守 本体4,200円+税
日本の水族館 内田 詮三 著荒井 一利 著西田 清徳 著 本体3,600円+税
海の保全生態学 松田 裕之 著 本体3,600円+税
イルカの認知科学 村山 司 著 本体3,400円+税
リスの生態学 田村 典子 著 本体3,800円+税
貝類学 佐々木 猛智 著 本体5,400円+税
日本の動物園 石田 戢 著 本体3,600円+税
フィールド古生物学 大路 樹生 著 本体2,800円+税
ニホンカワウソ 安藤 元一 著 本体4,400円+税
化石の記憶 矢島 道子 著 本体3,200円+税
ネズミの分類学 金子 之史 著 本体5,000円+税
シカの生態誌 高槻 成紀 本体7,800円+税
民族昆虫学 野中 健一 著 本体4,200円+税
動物進化形態学 倉谷 滋 著 本体7,400円+税
哺乳類の進化 遠藤 秀紀 著 本体5,400円+税
生物学名概論 平嶋 義宏 著 本体4,600円+税
生物体系学 直海 俊一郎 著 本体5,200円+税
爬虫類の進化 疋田 努 著 本体4,400円+税
日本コウモリ研究誌 前田 喜四雄 著 本体3,700円+税
地形植生誌 菊池 多賀夫 著 本体4,400円+税
新しい自然史博物館 糸魚川 淳二 著 本体3,800円+税
植物の進化形態学 加藤 雅啓 著 本体4,000円+税
鰭脚類 和田 一雄 著伊藤 徹魯 著 本体4,800円+税
テントウムシの自然史 佐々治 寛之 著 本体4,000円+税
生物系統学 三中 信宏 著 本体5,800円+税
サメの自然史 谷内 透 著 本体4,200円+税
高山植物の生態学 増沢 武弘 著 本体3,800円+税
哺乳類の生態学 土肥 昭夫 著岩本 俊孝 著三浦 慎悟 著池田 啓 著 本体3,800円+税
太古の海の記憶 池谷 仙之 著阿部 勝巳 著 本体3,700円+税
両生類の進化 松井 正文 著 本体4,800円+税
海洋民族学 秋道 智彌 著 本体3,800円+税
民族動物学 周 達生 著 本体3,600円+税
花の性 矢原 徹一 著 本体4,800円+税
動物分類学の論理 馬渡 峻輔 著 本体3,800円+税
樹木社会学 渡邊 定元 著 本体5,600円+税
恐竜学 小畠 郁生 編 本体4,500円+税
日本の自然史博物館 糸魚川 淳二 著 本体4,000円+税

ガンディーの思想的な背景を探る「ガンディー:秘教思想が生んだ聖人 」

2018年12月17日 | 新刊書
ガンディー:秘教思想が生んだ聖人 (平凡社新書)
杉本 良男 (著)


ガンディーがガンディーとなるまでの背景を思想的な探る書。
非暴力の思想的な背景について、これまで知られていなかった視点が提起されるようである。
とくに「オリエンタリズムとナショナリズム」の章は面白そう。
新書で気軽に読めそうなのもうれしい



新書: 344ページ
出版社: 平凡社 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4582858996
ISBN-13: 978-4582858990
発売日: 2018/12/15


内容紹介
人類の遺産である「非暴力」思想はいかにして生まれたか。近代化の過程で科学万能主義に抗い誕生した秘教思想との関わりを軸に、ガンディーの知られざる実像に迫る評伝。

序 科学と宗教──スピリチュアルなナショナリズム(一八四八─一九一八)
1 心霊主義と隠秘主義
2 インド国民会議
3 アニーとアンナ
4 ベサントのインド

第一章 肉食と菜食──ガンディーの大英帝国(一八八八─九一)
1 グジャラート商人の名家の出
2 母との約束
3 最上のヒンドゥー教
4 科学時代の普遍宗教

第二章 親英から反英へ──ガンディーの南アフリカ(一八九三─一九一四)
1 南アフリカへの渡航
2 南アフリカの秘教思想
3 ヒンドゥー教とキリスト教
4 ヒンドゥー化する思想

第三章 エリートと大衆──ガンディーのインド(一九一五─四八)
1 本格的な帰還
2 マハートマでむすばれる
3 両大戦間の試行錯誤
4 インド独立

第四章 オリエンタリズムとナショナリズム──東と西のすれ違い(一九四八─)
1 イメージ戦略
2 キリスト教聖人化
3 破られるタブー
4 非暴力と日本──東と東のすれ違い


著者について
1950年北海道生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得満期退学。博士(社会人類学)。専攻は社会人類学、南アジア研究。国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。主な著書に『スリランカで運命論者になる──仏教とカーストが生きる島』(フィールドワーク選書14、臨川書店)、『インド映画への招待状』(青弓社)、編著に『キリスト教文明とナショナリズム──人類学的比較研究』(国立民族学博物館論集2、風響社)などがある。

科学と宗教の関係を再考させる「近代科学者たちの科学と信仰 (科学技術とキリスト教3) 」

2018年12月17日 | 新刊書
近代科学者たちの科学と信仰 (科学技術とキリスト教3)
古谷圭一 (著)


ニュートンが神の絶対時間と絶対空間を信じていたことは有名だが
近代において科学と神学は、予想以上に密接な関係にあったのかも。
神への篤い信仰が近代科学の誕生の背景にあるとすれば、
科学と宗教の関係についての一般的な考え方の浅さがみえてくる。


単行本: 236ページ
出版社: さんこう社 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4902386763
ISBN-13: 978-4902386769
発売日: 2018/12/15

内容紹介
ガリレオ、ベーコン、デカルト、パスカル、ニュートン。 これまで素直に聖書を信じた自然に対する学問を、観察と実験で、客観的な近代科学として生み出した科学者たち。彼らの科学とキリスト教信仰との関係を、科学者でキリスト者である著者が、現代の視点で掘り下げた。 「聖書の中の自然と科学技術」「中世キリスト教の自然と科学技術」に続く、科学技術とキリスト教シリーズ第3巻。科学なんて苦手だったというクリスチャンが、このシリーズを読んで勉強になったと語った好評の書。キリスト教に関心のなかった科学者にもお勧めの本。

出版社からのコメント
好評な科学技術とキリスト教シリーズの三冊目です。科学者が科学とキリスト教の関系を洞察した力作です。

著者について
1934年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒。工学博士。東京理科大学名誉教授。恵泉女学園大学名誉教授。関東学院大学キリスト教と文化研究所客員(バプテスト史)。 著作:「近代日本の戦争と教会―日本基督教団四谷教会史」「聖書の中の自然と科学技術」「中世キリスト教の自然と科学技術」(以上、さんこう社) 共著:「未来社会とキリスト教」「エコロジーとキリスト教」「科学技術とキリスト教」 翻訳:クールソン著「科学者はこう考える」、カーモディ著「自然を守る」、ガン、ヴェジリンド著「環境倫理 価値のはざまの技術者たち」、グールド著「神と科学は共存できるか」

社会的な運動としての広がりを追想する「バウハウスの人々――回想と告白」

2018年12月17日 | 新刊書
バウハウスの人々――回想と告白
エッカート・ノイマン (編集), 向井 周太郎 (翻訳), 相沢 千加子 (翻訳)


バウハウスの運動にかかわっていた人々の証言を集めた貴重な記録。
建築運動が一つの社会的な風俗にまでなっていたとは、おもしろい。
アヴァンギャルドから機能主義に転換していくプロセスを含めて、
この運動にはいろいろと考えてみたいところがある。
いつかゆっくりと読んでみたい一冊。



単行本: 416ページ
出版社: みすず書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087227
ISBN-13: 978-4622087229
発売日: 2018/12/15

内容紹介
第一次大戦の敗戦から間もない1919年、ドイツ・ヴァイマールに
革新的な造形学校がつくられた。その名も「バウハウス(建築の家)」。
創立者グロピウスの宣言「あらゆる造形活動の最終目標は建築である。
建築家、彫刻家、画家たちよ、我々は手工作に戻らなければならないのだ」
の言葉に触発された才能ある若者たちが、世界中からこの学校を目指してやってきた。

ドイツの伝統的な職人養成制度に倣い、教師・技術指導者・学生を、
マイスター・ゲゼレ・レアリングと呼び、教師たちは知識や技術だけでなく、
感覚、感情、精神にも働きかける全人的な教育を志向して、独自の授業を開発した。
それゆえバウハウスでは、学生も教師も一緒になり、パーティーやお祭り、
演劇や演奏会の活動にも熱中した。

グロピウスの理念に応じ集まった綺羅星のごときマイスターたち、
ファイニンガー、イッテン、クレー、カンディンスキー、シュレンマー、モホイ=ナジ…
誰もが芸術上新しい道を歩もうとしている人々だった。そして、この
共同体に暮らす学生たちは、男子は長髪、女子はミニスカートにショートカット、
襟もつけず、靴下もはかずに町を歩き、ヴァイマールの人たちから
「バウハウス人」と呼ばれていた。

この書には、そんなバウハウス人、54人の生き生きとした証言・追想が収められている。
両大戦間期、デッサウへの移転を経て、14年の間だけ実現した
この伝説の造形学校の日々を物語る、かけがえのない記録である。

目次

アルフレート・アルント  バウハウス落成式のあいさつ──デッサウ、1926年
エッカート・ノイマン  [序文]誰もが自分自身のバウハウスを持っていた
ヴァルター・グロピウス  バウハウス理念──新しい教育基盤のための闘争
ヨハネス・イッテン  ヴァイマール・バウハウスの重要性
ブルーノ・アドラー  あの頃のヴァイマール
ヨハネス・モルツァーン  一通の手紙から
ゲルハルト・マルクス  私のヴァイマール短期滞在
フェリックス・クレー  ヴァイマール・バウハウスの思い出
パウル・シトロエン  バウハウスでのマスダスナン
カール=ペーター・レール  ヴァイマール州立バウハウスの理念と形態とその時代
アルフレート・アルント  いかにしてバウハウスヘたどりついたか
ロベルト・ミヒェル  ヴァイマールの隣の家で
ヘルタ・ヴェッシャー  バウハウス以前及び前期におけるヴァイマールの画家
ハンス・ハッフェンリヒター  ローター・シュライヤーの舞台工房
ローター・シュライヤー  新たな世界への希望
クルト・シュミット  機械のバレエ:バウハウスの作品
ヴェルナー・グレーフ  ヴァイマール・バウハウスとデ・ステイル 1922年の構成主義者会議
ジクフリート・ギーディオン  ヴァイマールのバウハウス週間 1923年8月
フェルディナント・クラマー  バウハウスと新建築
ギュラ・パプ  自由主義のヴァイマール
サンドール・ボルトニュイク  バウハウスのこと
ゲオルク・ムッへ  ヨハネス・イッテンの75歳の誕生日に寄せて
マリアンネ・ブラント  若い世代への手紙
エーリヒ・リスナー  1923年、バウハウスをめぐって
ヴァルター・デクセル  「バウハウス・スタイル」――ひとつの神話
エーリヒ・ブッフホルツ  バウハウス・バウハウス・バウハウス
ルー・シェーパー  回顧
ハインリヒ・ケーニッヒ  バウハウス 過去と現在
ヘレーネ・ノンネ=シュミット  インタビュー
カール・マルクス  ちょっとヨースト・シュミットのところで
マックス・ゲプハルト  バウハウスの広告とタイポグラフィー
ハーバート・バイヤー  グロピウスへの賛辞  
フリッツ・ヘッセ  デッサウとバウハウス
グンタ・シュタードラー=シュテルツル  バウハウスの織物工房について
ジクフリート・ギーディオン  バウハウスの実用的な成果について
クサンティ・シャヴィンスキー  バウハウスとその変化
トゥート・シュレンマー  生き生きとしたバウハウスとその舞台芸術
ニーナ・カンディンスキー  インタビュー
ウルズラ・シュー  カンディンスキーの教室で
ヴィル・グローマン  バウハウスと現代芸術
ヨゼフ・アルバース  バウハウスでの13年
T・ルックス・ファイニンガー  バウハウス──ある理念の絶えざる発展
ハンネス・ベックマン  設立の日々
ルートヴィヒ・グローテ  バウハウスと機能主義
ゲオルク・ムッへ  バウハウス碑文
マックス・ビル  継続は必然である
ルチア・モホイ  解釈の問題
ラディスラフ・ズトナー  南の隣人から見たバウハウス
エミール・ラッシュ  バウハウスとの共同作業
グスタフ・ハッセンプフルーク  今日の観点から見たバウハウス
ハワード・ディアスタイン  デッサウ・バウハウスにおけるミース・ファン・デル・ローエの教師活動
フランク・トゥルーデル  一人のバウハウス人の思い出
ピウス・E・パール  アカデミーで学んだ建築学生の経験
クルト・クランツ  バウハウスでの教育法とその後
アルフレート・ホッペ  ひとつの例
リチャード・コッペ  シカゴのニュー・バウハウス
フーベルト・ホフマン  一九四五年以後のバウハウスの復活
テオ・オットー  理念─形態─目的─時代

向井周太郎  [解説]バウハウス──〈生〉の全体性への問い
人名索引

著者について
1933-2006。ケーニヒスベルク生まれ。グラフィックデザイナー、デザイン史家。マンハイム応用科学大学コミュニケーション・デザイン教授。1953年からベルリンの広告専門学校でデザインを学んだ後、1956-57年にウルム造形大学の基礎課程を修了する。1957-71年、フランクフルト・アム・マインのスイス・エア・ドイツ支局の広告責任者を務める。1965-67年、ウルム造形大学でコミュニケーションの歴史を講じる。1973-75年、ブラウンAGでコミュニケーション・デザイン部門の責任者を務め、1975-85年には、ドイツ・デザイン協議会のデザイン促進部門の責任者を務める。主著に『1920年代の機能的なグラフィック・デザイン(Functional Graphic Design in The 20's)』(1967)、『ハーバート・バイヤー――アメリカにおける芸術とデザイン1938-1985(Herbert Bayer. Kunst und Design in Amerika 1938-1985)』(1986)がある。2006年3月24日、フランクフルト・アム・マインにて死去。

挑発的な語り口が楽しめそうな「改訂版 全共闘以後」

2018年12月16日 | 新刊書
改訂版 全共闘以後
外山恒一 (著)


1968年の全共闘運動からもはや50年。
あの運動の総括とそれ以後の活動の歴史の考察は
まだ十分に行われていないように思えます。
本書は9月に刊行されたものの改訂版ということですが
「3・11以後のドブネズミたち」という終章など
1970年生まれで、「獄中でファシズム転向」という風変りな経歴をもつ著者の
挑発的な文章が読めそうで、楽しみです。



単行本: 621ページ
出版社: イースト・プレス; 改訂版 (2018/12/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4781617468
ISBN-13: 978-4781617466
発売日: 2018/12/16

内容紹介
1968年の全共闘から50年。1972年の連合赤軍事件を境に学生運動は急速に退潮し、その後は「シラケでバブルでオタクでサブカル」の時代――。そんな歴史認識は間違っている! 70年代以降も若者たちの社会運動・学生運動は、ほぼ10年おきに高揚していた。ただ、それらを一貫した視点で記述した「通史」が存在せず、これまで不可視になっていたのである。全共闘以後50年の歴史を新しく塗りかえる著者渾身の原稿用紙1000枚超の大冊! 絓秀実氏、推薦。菅野完氏、解説。

序章 “68年”という前史
第1章 “80年安保”とその裏面
第2章 85年の断絶
第3章 ドブネズミたちの反乱
第4章 まったく新しい戦争
第5章 熱く交流レボリューション
第6章 ロスジェネ論壇とその周辺
終章 「3・11以後のドブネズミたち」
解説 菅野 完

「外山恒一は、全共闘以後の時代が持ちえた抜群の活動家である。外山は左翼にありがちな挫折を知らない。困難に直面しても、その聡明さとユーモアと決断で、いとも簡単にのりこえていく。外山は、孤立を求めて連帯を恐れない。外山はきわめて優秀な歴史家でもある。その抜群のフットワークと公正な観察力を武器に、誰も知らない現代史の現場に行き、謙虚に聞き、記述しつづけるのだ。それは、アカデミズムの研究者など及びもつかぬアクチュアリティーを持っている。しかも、きわめて分かりやすく、面白い。以上のことは、外山の「ファシズム」思想に違和感を抱いている者も認めるほかはない、厳然たる事実である。外山恒一の思想と行動の集大成とも言える本書は、3・11を経て、ヘイトとポリコレで奇妙な行き詰まりの様相を呈している今日の運動状況において、〈人民の敵〉による、人民のための、革命の書である」――絓 秀実(文芸批評家)


※この書籍は2018年9月に刊行した『全共闘以後』の改訂版です。

著者について
1970年生まれ。革命家。「九州ファシスト党・我々団」総統。80年代後半、福岡・鹿児島の高校で学校当局との衝突を繰り返し、各地の“戦う中高生"を組織した「全国高校生会議」の主要活動家の1人となる。89年、『ぼくの高校退学宣言』で単行本デビュー。文筆活動と、“異端的極左活動家"として90年代を過ごした末、02年に逮捕され、獄中でファシズム転向。07年に都知事選に出馬、「政府転覆」を呼びかける過激な政見放送がネット上で大ブームを巻き起こした。著書に『青いムーブメント』、『良いテロリストのための教科書』など。

支配という政治的な概念が現代にどこまで応用できるか「支配の政治理論」

2018年12月16日 | 新刊書
支配の政治理論
隠岐-須賀 麻衣 (著), 村田 玲 (著), 服部 美樹 (著), 玉手 慎太郎 (著), & 13 その他


タイトルは間違っていませんが、支配の政治理論というよりも、
支配という政治的な概念の歴史を追跡しながら
現代におけるその応用について考えた書物のようです。
フーコーやウエーバーなどの支配の理論が、どこまで現代の政治世界に応用できるか
わたしたちもぜひ考えてみたい重要なテーマですね。



単行本(ソフトカバー): 264ページ
出版社: 社会評論社 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4784515666
ISBN-13: 978-4784515660
発売日: 2018/12/15
内容紹介
<政治支配>をめぐる思想史的解明と現代における社会思想的分析。

第I部◆政治支配の思想史
◦プラトンの支配論 ―魂への配慮としての政治
◦マキァヴェッリの支配論 ―その近代性に関する若干の指摘
◦スピノザの支配論 ―個人・社会・国家の安定化機能としての宗教
◦アダム・スミスの支配論 ―支配を必要としない社会のしくみを描く
◦J.S.ミルの支配論 ―政府の強制的介入を通じた幸福の最大化
◦マルクスの支配論 ―生産力の制御とゲノッセンシャフト
◦ニーチェの支配論 ―「力への意志」における支配概念の考察
◦ベルクソンの支配論 ―社会的抵抗の目的と動機
◦フランクフルト学派の支配論 ―<支配の理性>と<支配批判の理性>

第II部◆政治支配と現代
◦リベラリズムと支配 ―ロールズのリベラリズムと非支配としての自由
◦コミュニタリアニズムと支配 ―公・私・共の三領域とその緊張関係の擁護
◦功利主義と支配 ―リバタリアン・パターナリズムの擁護論から
◦グローバリゼーションと支配 ―植民地主義の悪性を題材として
◦バイオテクノロジーと支配 ―フーコーの司牧権力の観点から
◦支配の経済学 ―自由な経済学における二重の支配
◦支配の社会学 ―ウェーバーの支配論
◦支配の神学 ―無支配を目指す未来学

著者について
(編者) 田上孝一 立正大学非常勤講師・同大学人文科学研究所員。著書に『マルクス疎外論の諸相』(時潮社)『環境と動物の権利』(本の泉社)『マルクス哲学入門』(社会評論社)など多数ある。

ワクワクしてくる対談「僕らの哲学的対話 棋士と哲学者」

2018年12月16日 | 新刊書
僕らの哲学的対話 棋士と哲学者
戸谷 洋志 (著), 糸谷 哲郎 (著)


ハイデガー研究者の棋士とハンス・ヨナス研究者の哲学者が
AIについて、哲学と社会の関係について話し合う。
なんとも魅力的な対談ではありませんか。
ワクワクしてきます。
ぜひ読んでみたい。



単行本(ソフトカバー): 202ページ
出版社: イースト・プレス (2018/12/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4781617352
ISBN-13: 978-4781617350
発売日: 2018/12/16

内容紹介
これは哲学者と棋士という異色顔合わせによる哲学的対話の記録です。棋士の糸谷哲郎さんは羽生善治さん他を下して竜王獲得、久々の20代タイトル保持者となった方です。また現役棋士として初めて国立大学へ進学し、大学院ではハイデガー研究で修士学位取得。当時同じ研究室で議論し合った哲学者の戸谷洋志さんは、ドイツの哲学者ハンス・ヨナスを研究する一方で、アカデミズムにこもることなく市民とのワークショップ「哲学カフェ」を各地で開催してきました。
例えばいまAI(人工知能)を搭載した将棋ソフトが驚異的な進化を遂げる中、現場の棋士はAIと人間の関係をどう捉えているのでしょうか。「人間」の自明性が問われる現在、1988年生まれの同世代の二人が勝負論や幸福論などを切り口に、「人間」を巡る様々な問いを考察していきます。

[目次]
1章 勝負論
2章 AIとどう向き合うか
3章 哲学と社会の難しい関係
4章 僕ら世代の幸福論
著者について
戸谷洋志(とや・ひろし) 1988年、東京都世田谷区出身。哲学研究者。法政大学文学部哲学科卒業、大阪大学大学院文学研究科文化形態論専攻博士課程満期取得退学。現在は追手門学院大学の特任助教。現代ドイツ思想を中心にしながら、テクノロジーと社会の関係を研究。また、「哲学カフェ」を始めとした哲学の社会的実践にも取り組んでいる。第31回暁烏敏賞受賞。著書に『Jポップで考える哲学――自分を問い直すための15曲』(講談社)、『ハンス・ヨナスを読む』(堀之内出版)がある。

糸谷哲郎(いとだに・てつろう) 1988年、広島県広島市出身。将棋棋士。八段。順位戦A級。「関西若手四天王」の一角として注目を集め、2014年に羽生善治、森内俊之らを下して竜王獲得、久々の20代タイトル保持者となった。現役の棋士として初めて国立大学へ進学し、大阪大学文学部にて哲学・思想文化学を研究。大学院ではハイデガー及びヒューバート・ドレイファスを研究し修士学位を取得。著書に『現代将棋の思想 一手損角換わり編』(マイナビ)、共著に『糸谷&斎藤の現代将棋解体新書』(マイナビ)がある。

新たな構想が求められる時期が到来。「福祉国家論―所得分配と現代福祉国家論の課題― 」

2018年12月15日 | 新刊書
福祉国家論―所得分配と現代福祉国家論の課題―
アンソニー・B・アトキンソン (著), 丸谷 泠史 (翻訳)


福祉国家は、当然生まれるべき運命にあったが、
当初の見込みとは異なるさまざまな問題を引き起こしている。
福祉国家の構想を否定するのではなく、そうした問題を克服しながら
新たな福祉国家を構想することが必要なのだろう。
その意味ではタイムリーな一冊だろう。


単行本: 412ページ
出版社: 晃洋書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4771030332
ISBN-13: 978-4771030336
発売日: 2018/12/15

内容紹介
福祉国家批判の時は過ぎた.時は移り今日では福祉国家をどのように健全な姿に立て直すかが問われる時期である.福祉国家批判を経済学的観点から再検討し,新しい世紀の福祉国家像の基礎を展開.

『アトキンソン教授の福祉国家論I』につづく後半部分を収録した,待望の全訳.

目次
序 章 現代福祉国家論の課題

第I部 イギリスおよびヨーロッパにおける所得の不平等と貧困

第1章 イギリスの所得分配に何が起きているのか?
第2章 ヨーロッパ諸国における所得分配
第3章 ヨーロッパにおける貧困,統計および進歩
第4章 貧困率の国際比較
第5章 早期退職者が2つの国民に?

第II部 福祉国家の分析

第6章 福祉国家は必然的に経済成長の障害になるのか?
第7章 ナショナル・ミニマム?
第8章 イギリスにおける国家年金の発展
第9章 イギリスにおける失業者の所得維持と高い失業水準に対する反応
第10章 失業保険の制度的特徴と労働市場の働き
第11章 社会保険

第III部 ターゲティングと社会保障政策の将来

第12章 ターゲティングと家族給付
第13章 ソーシャル・セーフティネット
第14章 欧州社会的セーフティネットに向かって?
第15章 ベヴァリジに寄せて
第16章 国家年金

内容(「BOOK」データベースより)
真の福祉国家を求めて。福祉国家の再検討と制度改革。福祉国家批判の時は過ぎた。時は移り今日では福祉国家をどのように健全な姿に立て直すかが問われる時期である。福祉国家批判を経済学的観点から再検討し、新しい世紀の福祉国家像の基礎を展開。『アトキンソン教授の福祉国家論1』につづく後半部分を収録した、待望の全訳。

著者について
アンソニー・バーンズ・アトキンソン(Anthony Barnes Atkinson)
オックスフォード大学教授(ナッフィールド・カレッジ学長)、ケンブリッジ大学、ロンドン大学(LSE)教授を歴任.分配論,福祉国家論の世界的権威.
2017年1月逝去.

アメリカの救援組織を手掛かりに考える「ホロコーストとアメリカ」

2018年12月15日 | 新刊書
ホロコーストとアメリカ――ユダヤ人組織の支援活動と政府の難民政
丸山 直起 (著)


ホロコーストは世界的な出来事だったが
この書物はアメリカで誕生した救援組織「アメリカ・ユダヤ人合同配分委員会」に注目して
この組織がどのような活動を展開し、どのような困難に直面したかという観点から
この世界的で歴史的な出来事を考察するという注目作である。



単行本: 448ページ
出版社: みすず書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087340
ISBN-13: 978-4622087342
発売日: 2018/12/15

内容紹介
ナチス・ドイツによるホロコーストはユダヤ人の生命を奪っただけでなく、宗教や文化など
あらゆる「ユダヤ的なもの」を破壊した。その結果、数千のユダヤ人コミュニティが消滅し、
1億冊以上の書籍が失われた。ユダヤ人の犠牲は600万にのぼり、これはヨーロッパ
大陸のユダヤ人人口全体の実に72パーセント以上にあたる。
しかし、国際社会は絶望の淵に追い込まれたユダヤ人の運命に非情であった。
ユダヤ人の祖国パレスチナを委任統治するイギリスは、彼らの入国を厳しく制限した。
アメリカは制限的移民法を改正し、門戸を広く開放するつもりはなかった。
この両国だけでも政策を見直していれば、多数の人命が失われずにすんだ。
国家が頼りにならなければ、自分たちで不幸な難民を救うしかない。19世紀以来、
欧米諸国にはユダヤ人の救援組織がつぎつぎと誕生し、国際的な絆で結ばれていた。
そのひとつ、第一次世界大戦を機に発足したアメリカ・ユダヤ人合同配分委員会
(「ジョイント」)が、ナチス支配下で苦悩する同胞を救うため、すべての組織、資金、
人材を動員する。そのスタッフは戦乱の地に派遣され、身の危険を顧みずに救済
活動をおこなった。しかし、彼らの行く手には国益と官僚主義の壁が立ちはだかる。
本書は、危機の時代における「ジョイント」と、そのひとりの女性ソーシャルワーカー
の活動に焦点をあてながら、ユダヤ難民の辿ってきた道のりを詳細に跡づける。

目次

序章 ホロコーストへの道
一 ホロコーストとは何か
二 最終解決へ
三 本書の視点

第1章 難民はアメリカをめざす
一 アメリカの移民問題
二 制限的移民法の成立
三 ユダヤ難民とアメリカ
四 ユダヤ系団体の救援活動

第2章 危機の時代とアメリカのユダヤ人
一 ジョイント
ニ ナチ政権の登場とアメリカのユダヤ人
三 マーゴリス家の人びと
四 アメリカのマーゴリス

第3章 ドイツの反ユダヤ政策とアメリカ政府の対応
一 エヴィアン会議
二 政府間難民委員会とドイツ側の交渉
三 ユダヤ人はどこへ向かうのか
四 アメリカ入国の壁

第4章 セントルイス号の悲劇
一 キューバ
二 悲劇の豪華客船
三 交渉決裂
四 新世界と旧世界

第5章 戦時下のジョイント
一 第二次世界大戦の勃発
二 中国のユダヤ難民
三 マーゴリスの上海派遣
四 開戦と上海のユダヤ難民
五 指定地区

第6章 解放の年
一 解放
二 活動再開
三 大戦後のジョイントの救援活動
四 イスラエルへ

終章 なぜアウシュヴィッツは爆撃されなかったのか
一 アウシュヴィッツ
ニ アメリカ政府とユダヤ人社会
三 ローズヴェルト大統領の評価
四 ベルリン、1998年

註記
あとがき

図版出典一覧
略語一覧
事項索引
人名索引

著者について
丸山直起(まるやま・なおき)
1942年、長野県生まれ。1965年、早稲田大学政経学部卒業、1973年、一橋大学
大学院単位取得退学。小樽商科大学、国際大学、明治学院大学を経て、現在は
明治学院大学名誉教授。法学博士(一橋大学)。専門は、国際政治学・外交史。
主な著書に、『太平洋戦争と上海のユダヤ難民』(法政大学出版局、2005年)、
『ポスト冷戦期の国際政治』(共編、有信堂、1993年)、『アメリカのユダヤ人
社会』(ジャパンタイムズ社、1990年)、『国際政治ハンドブック』(共編、有信堂、
1984年)など。

生命について考える際の重要な視点「ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在」

2018年12月15日 | 新刊書
ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在
山内 一也 (著)


ウィルスの専門家が著したウィルス学の入門書。
ウィルスは生きているとも死んでいるとも言えない状態においても生存することのできる強靭な生物体であるらしい。
そのためウィルス学は生物学の根幹となり、生命についての思想の根っこのところにある物質である。
ウィルスの卓抜な生き方に、生命というものの秘密が隠されているのかもしれない。



単行本: 264ページ
出版社: みすず書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087537
ISBN-13: 978-4622087533
発売日: 2018/12/15


内容紹介
ウイルスとは何者か。その驚くべき生態が明らかになるたびに、
この問いの答は書き替えられてきた。

ウイルスは、数十億年にわたり生物と共に進化してきた「生命体」でありながら、
細胞外ではまったく活動しない「物質」でもある。その多くは弱く、外界ではすぐに
感染力を失って“死ぬ"。ただし条件さえ整えば、数万年間の凍結状態に置かれ
ても、体がばらばらになってしまったとしても“復活"する。
ウイルスの生と死は、生物のそれとはどこかずれている。

一部のウイルスは、たびたび世界的流行を引き起こしてきた。ただしそれは、
人類がウイルスを本来の宿主から引き離し、都市という居場所を与えた結果
でもある。本来の宿主と共にあるとき、ウイルスは「守護者」にもなりうる。
あるものは宿主を献身的に育て上げ、またあるものは宿主に新たな能力を
与えている。私たちのDNAにもウイルスの遺伝情報が大量に組み込まれており、
一部は生命活動を支えている。

ウイルスの生態を知れば知るほど、生と死の、生物と無生物の、共生と敵対の境界が
曖昧になっていく。読むほどに生物学の根幹にかかわる問に導かれていく一冊。

目次

はじめに ウイルスとともに生きる
第1章 その奇妙な“生”と“死”
第2章 見えないウイルスの痕跡を追う
第3章 ウイルスはどこから来たか
第4章 ゆらぐ生命の定義
第5章 体を捨て、情報として生きる
第6章 破壊者は守護者でもある
第7章 常識をくつがえしたウイルスたち
第8章 水中に広がるウイルスワールド
第9章 人間社会から追い出されるウイルスたち
第10章 ヒトの体内に潜むウイルスたち
第11章 激動の環境を生きるウイルス
エピローグ
あとがき


索引

著者について
山内一也
1931年、神奈川県生まれ。東京大学農学部獣医畜産学科卒業。農学博士。北里研究所所員、国立予防衛生研究所室長、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所主任研究員を経て、現在、東京大学名誉教授、日本ウイルス学会名誉会員、ベルギー・リエージュ大学名誉博士。専門はウイルス学。
主な著書に『エマージングウイルスの世紀』(河出書房新社、1997)『ウイルスと人間』(岩波書店、2005)『史上最大の伝染病 牛疫 根絶までの四〇〇〇年』(岩波書店、2009)『ウイルスと地球生命』(岩波書店、2012)『近代医学の先駆者――ハンターとジェンナー』(岩波書店、2015)『はしかの脅威と驚異』(岩波書店、2017)『ウイルス・ルネッサンス』(東京化学同人、2017)『ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在』(みすず書房、2018)などがある。