新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

ガンディーの思想的な背景を探る「ガンディー:秘教思想が生んだ聖人 」

2018年12月17日 | 新刊書
ガンディー:秘教思想が生んだ聖人 (平凡社新書)
杉本 良男 (著)


ガンディーがガンディーとなるまでの背景を思想的な探る書。
非暴力の思想的な背景について、これまで知られていなかった視点が提起されるようである。
とくに「オリエンタリズムとナショナリズム」の章は面白そう。
新書で気軽に読めそうなのもうれしい



新書: 344ページ
出版社: 平凡社 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4582858996
ISBN-13: 978-4582858990
発売日: 2018/12/15


内容紹介
人類の遺産である「非暴力」思想はいかにして生まれたか。近代化の過程で科学万能主義に抗い誕生した秘教思想との関わりを軸に、ガンディーの知られざる実像に迫る評伝。

序 科学と宗教──スピリチュアルなナショナリズム(一八四八─一九一八)
1 心霊主義と隠秘主義
2 インド国民会議
3 アニーとアンナ
4 ベサントのインド

第一章 肉食と菜食──ガンディーの大英帝国(一八八八─九一)
1 グジャラート商人の名家の出
2 母との約束
3 最上のヒンドゥー教
4 科学時代の普遍宗教

第二章 親英から反英へ──ガンディーの南アフリカ(一八九三─一九一四)
1 南アフリカへの渡航
2 南アフリカの秘教思想
3 ヒンドゥー教とキリスト教
4 ヒンドゥー化する思想

第三章 エリートと大衆──ガンディーのインド(一九一五─四八)
1 本格的な帰還
2 マハートマでむすばれる
3 両大戦間の試行錯誤
4 インド独立

第四章 オリエンタリズムとナショナリズム──東と西のすれ違い(一九四八─)
1 イメージ戦略
2 キリスト教聖人化
3 破られるタブー
4 非暴力と日本──東と東のすれ違い


著者について
1950年北海道生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得満期退学。博士(社会人類学)。専攻は社会人類学、南アジア研究。国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。主な著書に『スリランカで運命論者になる──仏教とカーストが生きる島』(フィールドワーク選書14、臨川書店)、『インド映画への招待状』(青弓社)、編著に『キリスト教文明とナショナリズム──人類学的比較研究』(国立民族学博物館論集2、風響社)などがある。

科学と宗教の関係を再考させる「近代科学者たちの科学と信仰 (科学技術とキリスト教3) 」

2018年12月17日 | 新刊書
近代科学者たちの科学と信仰 (科学技術とキリスト教3)
古谷圭一 (著)


ニュートンが神の絶対時間と絶対空間を信じていたことは有名だが
近代において科学と神学は、予想以上に密接な関係にあったのかも。
神への篤い信仰が近代科学の誕生の背景にあるとすれば、
科学と宗教の関係についての一般的な考え方の浅さがみえてくる。


単行本: 236ページ
出版社: さんこう社 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4902386763
ISBN-13: 978-4902386769
発売日: 2018/12/15

内容紹介
ガリレオ、ベーコン、デカルト、パスカル、ニュートン。 これまで素直に聖書を信じた自然に対する学問を、観察と実験で、客観的な近代科学として生み出した科学者たち。彼らの科学とキリスト教信仰との関係を、科学者でキリスト者である著者が、現代の視点で掘り下げた。 「聖書の中の自然と科学技術」「中世キリスト教の自然と科学技術」に続く、科学技術とキリスト教シリーズ第3巻。科学なんて苦手だったというクリスチャンが、このシリーズを読んで勉強になったと語った好評の書。キリスト教に関心のなかった科学者にもお勧めの本。

出版社からのコメント
好評な科学技術とキリスト教シリーズの三冊目です。科学者が科学とキリスト教の関系を洞察した力作です。

著者について
1934年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒。工学博士。東京理科大学名誉教授。恵泉女学園大学名誉教授。関東学院大学キリスト教と文化研究所客員(バプテスト史)。 著作:「近代日本の戦争と教会―日本基督教団四谷教会史」「聖書の中の自然と科学技術」「中世キリスト教の自然と科学技術」(以上、さんこう社) 共著:「未来社会とキリスト教」「エコロジーとキリスト教」「科学技術とキリスト教」 翻訳:クールソン著「科学者はこう考える」、カーモディ著「自然を守る」、ガン、ヴェジリンド著「環境倫理 価値のはざまの技術者たち」、グールド著「神と科学は共存できるか」

社会的な運動としての広がりを追想する「バウハウスの人々――回想と告白」

2018年12月17日 | 新刊書
バウハウスの人々――回想と告白
エッカート・ノイマン (編集), 向井 周太郎 (翻訳), 相沢 千加子 (翻訳)


バウハウスの運動にかかわっていた人々の証言を集めた貴重な記録。
建築運動が一つの社会的な風俗にまでなっていたとは、おもしろい。
アヴァンギャルドから機能主義に転換していくプロセスを含めて、
この運動にはいろいろと考えてみたいところがある。
いつかゆっくりと読んでみたい一冊。



単行本: 416ページ
出版社: みすず書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087227
ISBN-13: 978-4622087229
発売日: 2018/12/15

内容紹介
第一次大戦の敗戦から間もない1919年、ドイツ・ヴァイマールに
革新的な造形学校がつくられた。その名も「バウハウス(建築の家)」。
創立者グロピウスの宣言「あらゆる造形活動の最終目標は建築である。
建築家、彫刻家、画家たちよ、我々は手工作に戻らなければならないのだ」
の言葉に触発された才能ある若者たちが、世界中からこの学校を目指してやってきた。

ドイツの伝統的な職人養成制度に倣い、教師・技術指導者・学生を、
マイスター・ゲゼレ・レアリングと呼び、教師たちは知識や技術だけでなく、
感覚、感情、精神にも働きかける全人的な教育を志向して、独自の授業を開発した。
それゆえバウハウスでは、学生も教師も一緒になり、パーティーやお祭り、
演劇や演奏会の活動にも熱中した。

グロピウスの理念に応じ集まった綺羅星のごときマイスターたち、
ファイニンガー、イッテン、クレー、カンディンスキー、シュレンマー、モホイ=ナジ…
誰もが芸術上新しい道を歩もうとしている人々だった。そして、この
共同体に暮らす学生たちは、男子は長髪、女子はミニスカートにショートカット、
襟もつけず、靴下もはかずに町を歩き、ヴァイマールの人たちから
「バウハウス人」と呼ばれていた。

この書には、そんなバウハウス人、54人の生き生きとした証言・追想が収められている。
両大戦間期、デッサウへの移転を経て、14年の間だけ実現した
この伝説の造形学校の日々を物語る、かけがえのない記録である。

目次

アルフレート・アルント  バウハウス落成式のあいさつ──デッサウ、1926年
エッカート・ノイマン  [序文]誰もが自分自身のバウハウスを持っていた
ヴァルター・グロピウス  バウハウス理念──新しい教育基盤のための闘争
ヨハネス・イッテン  ヴァイマール・バウハウスの重要性
ブルーノ・アドラー  あの頃のヴァイマール
ヨハネス・モルツァーン  一通の手紙から
ゲルハルト・マルクス  私のヴァイマール短期滞在
フェリックス・クレー  ヴァイマール・バウハウスの思い出
パウル・シトロエン  バウハウスでのマスダスナン
カール=ペーター・レール  ヴァイマール州立バウハウスの理念と形態とその時代
アルフレート・アルント  いかにしてバウハウスヘたどりついたか
ロベルト・ミヒェル  ヴァイマールの隣の家で
ヘルタ・ヴェッシャー  バウハウス以前及び前期におけるヴァイマールの画家
ハンス・ハッフェンリヒター  ローター・シュライヤーの舞台工房
ローター・シュライヤー  新たな世界への希望
クルト・シュミット  機械のバレエ:バウハウスの作品
ヴェルナー・グレーフ  ヴァイマール・バウハウスとデ・ステイル 1922年の構成主義者会議
ジクフリート・ギーディオン  ヴァイマールのバウハウス週間 1923年8月
フェルディナント・クラマー  バウハウスと新建築
ギュラ・パプ  自由主義のヴァイマール
サンドール・ボルトニュイク  バウハウスのこと
ゲオルク・ムッへ  ヨハネス・イッテンの75歳の誕生日に寄せて
マリアンネ・ブラント  若い世代への手紙
エーリヒ・リスナー  1923年、バウハウスをめぐって
ヴァルター・デクセル  「バウハウス・スタイル」――ひとつの神話
エーリヒ・ブッフホルツ  バウハウス・バウハウス・バウハウス
ルー・シェーパー  回顧
ハインリヒ・ケーニッヒ  バウハウス 過去と現在
ヘレーネ・ノンネ=シュミット  インタビュー
カール・マルクス  ちょっとヨースト・シュミットのところで
マックス・ゲプハルト  バウハウスの広告とタイポグラフィー
ハーバート・バイヤー  グロピウスへの賛辞  
フリッツ・ヘッセ  デッサウとバウハウス
グンタ・シュタードラー=シュテルツル  バウハウスの織物工房について
ジクフリート・ギーディオン  バウハウスの実用的な成果について
クサンティ・シャヴィンスキー  バウハウスとその変化
トゥート・シュレンマー  生き生きとしたバウハウスとその舞台芸術
ニーナ・カンディンスキー  インタビュー
ウルズラ・シュー  カンディンスキーの教室で
ヴィル・グローマン  バウハウスと現代芸術
ヨゼフ・アルバース  バウハウスでの13年
T・ルックス・ファイニンガー  バウハウス──ある理念の絶えざる発展
ハンネス・ベックマン  設立の日々
ルートヴィヒ・グローテ  バウハウスと機能主義
ゲオルク・ムッへ  バウハウス碑文
マックス・ビル  継続は必然である
ルチア・モホイ  解釈の問題
ラディスラフ・ズトナー  南の隣人から見たバウハウス
エミール・ラッシュ  バウハウスとの共同作業
グスタフ・ハッセンプフルーク  今日の観点から見たバウハウス
ハワード・ディアスタイン  デッサウ・バウハウスにおけるミース・ファン・デル・ローエの教師活動
フランク・トゥルーデル  一人のバウハウス人の思い出
ピウス・E・パール  アカデミーで学んだ建築学生の経験
クルト・クランツ  バウハウスでの教育法とその後
アルフレート・ホッペ  ひとつの例
リチャード・コッペ  シカゴのニュー・バウハウス
フーベルト・ホフマン  一九四五年以後のバウハウスの復活
テオ・オットー  理念─形態─目的─時代

向井周太郎  [解説]バウハウス──〈生〉の全体性への問い
人名索引

著者について
1933-2006。ケーニヒスベルク生まれ。グラフィックデザイナー、デザイン史家。マンハイム応用科学大学コミュニケーション・デザイン教授。1953年からベルリンの広告専門学校でデザインを学んだ後、1956-57年にウルム造形大学の基礎課程を修了する。1957-71年、フランクフルト・アム・マインのスイス・エア・ドイツ支局の広告責任者を務める。1965-67年、ウルム造形大学でコミュニケーションの歴史を講じる。1973-75年、ブラウンAGでコミュニケーション・デザイン部門の責任者を務め、1975-85年には、ドイツ・デザイン協議会のデザイン促進部門の責任者を務める。主著に『1920年代の機能的なグラフィック・デザイン(Functional Graphic Design in The 20's)』(1967)、『ハーバート・バイヤー――アメリカにおける芸術とデザイン1938-1985(Herbert Bayer. Kunst und Design in Amerika 1938-1985)』(1986)がある。2006年3月24日、フランクフルト・アム・マインにて死去。