新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

異なる文化の人々と共生する方法「多文化主義のゆくえ」

2018年12月10日 | 新刊書
多文化主義のゆくえ: 国際化をめぐる苦闘(サピエンティア) (サピエンティア 56)
ウィル・キムリッカ (著), 稲田 恭明 (翻訳), 施 光恒 (翻訳)


アメリカの政治哲学を中心に現代の政治哲学についてのよくまとまった概説書『現代政治理論』(日本経済評論社、2002年)と『新版 現代政治理論』(日本経済評論社、2005年)という二冊の概論が翻訳されている
キムリッカだが、多文化主義についても勢力的に執筆している。
移民問題に遅ればせながら直面することになった日本の現状からも、『土着語の政治――ナショナリズム・多文化主義、シティズンシップ』(法政大学出版局、2012年)につづいて翻訳された本書には注目したい。



単行本: 432ページ
出版社: 法政大学出版局 (2018/12/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4588603566
ISBN-13: 978-4588603563
発売日: 2018/12/10

内容紹介
リベラル多文化主義の理論家として世界的に著名な政治哲学者が、国際法や国際政治学の知見を活用しつつ、多文化主義の普及をめざす1990年代以降の国際社会の取り組みの軌跡をたどり、さまざまな困難の原因究明に挑む。移民受け入れに対する反発が噴出する今日、多文化主義の未来はいかにあるべきだろうか。少数民族や先住民族の権利保障のあり方にも大きな示唆をもたらす必読の書。

第Ⅰ部 国家・マイノリティ関係の(再)国際化
第1章 序論
第2章 変化する国際的文脈
第Ⅱ部 リベラル多文化主義を理解する
第3章 リベラル多文化主義の諸形態
第4章 リベラル多文化主義の起源
第5章 リベラル多文化主義の実践を評価する
第Ⅲ部 リベラル多文化主義の国際的普及における逆説
第6章 欧州の実験
第7章 グローバルな挑戦
第8章 結論


著者について
(Will Kymlicka)
カナダの政治哲学者。クイーンズ大学で哲学と政治学を学び、1987年、G. A. コーエンの指導の下、哲学博士号を取得。1998年からは母校であるクイーンズ大学哲学学部で教鞭をとるとともに、ハンガリーの中央ヨーロッパ大学のナショナリズム研究プログラムの客員教授も務める。英米圏を代表する政治理論家であり、日本でも『多文化時代の市民権――マイノリティの権利と自由主義』(晃洋書房、1998年)、『現代政治理論』(日本経済評論社、2002年)、『新版 現代政治理論』(日本経済評論社、2005年)、『土着語の政治――ナショナリズム・多文化主義、シティズンシップ』(法政大学出版局、2012年)、『人と動物の政治共同体――「動物の権利」の政治理論』(尚学社、2016年)が翻訳されている。

映画を二度楽しむ方法「映画は千の目をもつ: 私の幻想シネマ館 」

2018年12月10日 | 新刊書
映画は千の目をもつ: 私の幻想シネマ館
海野 弘 (著)


映画は見るのも楽しいが、
見た映画について論じられている文章を読むのも楽しい。
あ、そんな見方もあったのかとか、
おや、そんなところ、気づかなかったとか
新たな発見があるものだ。
映画について博識を披露する海野弘のこの本で
二度おしいし映画の楽しみかたを味わおう。



単行本: 336ページ
出版社: 七つ森書館 (2018/12/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4822818039
ISBN-13: 978-4822818036
発売日: 2018/12/10


内容紹介
博覧強記の文筆家・海野弘の映画論を集成。 長らく絶版となっていた『映画都市』『エデンという名の映画館』『映画、20世紀のアリス』その他単行本からの再録、および単行本未収録原稿を収録。

第1章 バビロン幻影Ⅰ 都市の相貌
    映画のエコール・ド・パリ
    ヘンリーとジューンとパリと
    目覚めよパリ!—『ポンヌフの恋人』
    ヴィスコンティとミラノ
    暗箱のなかの都市 ドイツ映画・一九二〇年代……

第2章 バビロン幻影Ⅱ 失われた時を求めて
    コクトー・二〇年代・映画
    たそがれの見知らぬ街を求めて
    ブルジョワジーの優雅な頽廃—『暗殺の森』
    現代史のグランド・オペラ—『1900年』……

第3章 バビロン幻影Ⅲ 儚き夢の記憶
    『赤い靴』のミラージ
    映画の中のオペラ——『トスカの接吻』
    フォリーの時代の歌姫—『偉大なるマルグリッド』
    アル・カポネと暗黒街とハリウッド……

第4章 映画のデザイン
    ハリウッド・ファッション
    ハリウッド・スタイル
    ハードボイルド・デコ フィリップ・マーロウのロサンゼルス
    ニューヨークのアパートで—『アニー・ホール』……

第5章 スタアの肖像
    ガルボ、たったひとりの戦い
    マレーネ・ディートリッヒの三〇年代
    イングリッド・バーグマンの四〇年代
    忘れじの面影 ジョーン・フォンテーンをしのぶ
    ローレン・バコール タフでクールな貴婦人……

第6章 映画のいる場所
    今宵は宮殿にてムーヴィーを
    エデンという名の映画館
    カルト・ムービー
    冬の映画館……

著者について
1939年、東京都生まれ。早稲田大学文学部ロシア文学科卒業。出版社勤務を経て、現在、美術・映画・音楽・都市論・華道・小説など幅広い分野で執筆をつづける。『アール・ヌーボーの世界』『モダン都市東京 日本の一九二〇年代』『ココ・シャネルの星座』(以上、中公文庫)、『二十世紀』(文藝春秋)、『おじさん・おばさん論』(幻戯書房)、『魔女の世界史 女神信仰からアニメまで』(朝日新書)、『世界陰謀全史』(朝日新聞出版)、『ロシア・アヴァンギャルドのデザイン 未来を夢見るアート』(パイインターナショナル)など著書は膨大。

期待が高まる「アドルノ音楽論集 幻想曲風に」

2018年12月10日 | 新刊書
アドルノ音楽論集 幻想曲風に(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1088)
Th.W.アドルノ (著), 岡田 暁生 (翻訳), 藤井 俊之 (翻訳)


アドルノの音楽論集。まだまだこんなのが残っていたのか。
最近ではアドルノは哲学よりも美学や音楽の論文が注目される。
作曲家論もいいが、「劇場の自然史」のような文章もぜひ読みたい。
期待が高まる一冊。


単行本: 470ページ
出版社: 法政大学出版局 (2018/12/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4588010883
ISBN-13: 978-4588010880
発売日: 2018/12/10

内容紹介
20代から晩年に及ぶ著作を収めた自伝的論集─―ここにいるのは、時にブリリアントな才知をきらめかせ、時に作曲家を目の前にしているかのように慟哭する、一人の人間である。それは「頑固な教条主義者」という従来のアドルノ像を心地よく打ち砕く。新しい時代の音楽に謙虚なまなざしをそそぐ哲学者の生の声を、躍動感あふれる日本語で読む。日本を代表する音楽学者と次代を担う思想史学者が贈る新鮮な翻訳!

音楽と言語についての断章

第Ⅰ部 即 興
 モチーフ
 音楽の商品分析
 カルメン幻想曲
 劇場の自然史

第Ⅱ部 現 前
 マーラー
 ツェムリンスキー
 シュレーカー
 ストラヴィンスキー─―ある弁証法的イメージ

第Ⅲ部 フィナーレ
 ベルクが拾得した作曲技法
 ウィーン
 聖なる断片─―シェーンベルクの《モーゼとアロン》について
 音楽と新音楽
 アンフォルメル音楽の方へ

  訳者解説 音楽の名前――「完全には表象できないものについての表象」
  訳者あとがき
  用語解説 

著者について
(Theodor W. Adorno)
1903年生まれ。フランクフルトでワイン商を営むユダヤ系の父オスカー・ヴィーゼングルント、歌手でイタリア系の母マリア・アドルノ、その妹で同じく歌手のアガーテのもとで経済的、音楽的に恵まれた幼年期を過ごす。1923年頃からヴァルター・ベンヤミンと親交を結ぶ。1924年フランクフルト大学で哲学博士号を取得。翌年からウィーンでアルバン・ベルクに師事。戦後を知ることなく世を去ったこの二人が哲学と音楽において終生アドルノの導きの糸となる。ナチスに追われ、主としてアメリカで過ごした亡命生活を経て戦後に帰国してからは、フランクフルト大学教授。またそれと並行して本書でも話題に上るクラニヒシュタインの音楽祭に参加し、ピエール・ブーレーズ、カールハインツ・シュトックハウゼン、ジョン・ケージらの作品に触発されつつアクチュアルな音楽批評を展開する。1969年没。主著に『新音楽の哲学』(1949年)、『否定弁証法』(1966年)などがある。