新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

挑発的な語り口が楽しめそうな「改訂版 全共闘以後」

2018年12月16日 | 新刊書
改訂版 全共闘以後
外山恒一 (著)


1968年の全共闘運動からもはや50年。
あの運動の総括とそれ以後の活動の歴史の考察は
まだ十分に行われていないように思えます。
本書は9月に刊行されたものの改訂版ということですが
「3・11以後のドブネズミたち」という終章など
1970年生まれで、「獄中でファシズム転向」という風変りな経歴をもつ著者の
挑発的な文章が読めそうで、楽しみです。



単行本: 621ページ
出版社: イースト・プレス; 改訂版 (2018/12/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4781617468
ISBN-13: 978-4781617466
発売日: 2018/12/16

内容紹介
1968年の全共闘から50年。1972年の連合赤軍事件を境に学生運動は急速に退潮し、その後は「シラケでバブルでオタクでサブカル」の時代――。そんな歴史認識は間違っている! 70年代以降も若者たちの社会運動・学生運動は、ほぼ10年おきに高揚していた。ただ、それらを一貫した視点で記述した「通史」が存在せず、これまで不可視になっていたのである。全共闘以後50年の歴史を新しく塗りかえる著者渾身の原稿用紙1000枚超の大冊! 絓秀実氏、推薦。菅野完氏、解説。

序章 “68年”という前史
第1章 “80年安保”とその裏面
第2章 85年の断絶
第3章 ドブネズミたちの反乱
第4章 まったく新しい戦争
第5章 熱く交流レボリューション
第6章 ロスジェネ論壇とその周辺
終章 「3・11以後のドブネズミたち」
解説 菅野 完

「外山恒一は、全共闘以後の時代が持ちえた抜群の活動家である。外山は左翼にありがちな挫折を知らない。困難に直面しても、その聡明さとユーモアと決断で、いとも簡単にのりこえていく。外山は、孤立を求めて連帯を恐れない。外山はきわめて優秀な歴史家でもある。その抜群のフットワークと公正な観察力を武器に、誰も知らない現代史の現場に行き、謙虚に聞き、記述しつづけるのだ。それは、アカデミズムの研究者など及びもつかぬアクチュアリティーを持っている。しかも、きわめて分かりやすく、面白い。以上のことは、外山の「ファシズム」思想に違和感を抱いている者も認めるほかはない、厳然たる事実である。外山恒一の思想と行動の集大成とも言える本書は、3・11を経て、ヘイトとポリコレで奇妙な行き詰まりの様相を呈している今日の運動状況において、〈人民の敵〉による、人民のための、革命の書である」――絓 秀実(文芸批評家)


※この書籍は2018年9月に刊行した『全共闘以後』の改訂版です。

著者について
1970年生まれ。革命家。「九州ファシスト党・我々団」総統。80年代後半、福岡・鹿児島の高校で学校当局との衝突を繰り返し、各地の“戦う中高生"を組織した「全国高校生会議」の主要活動家の1人となる。89年、『ぼくの高校退学宣言』で単行本デビュー。文筆活動と、“異端的極左活動家"として90年代を過ごした末、02年に逮捕され、獄中でファシズム転向。07年に都知事選に出馬、「政府転覆」を呼びかける過激な政見放送がネット上で大ブームを巻き起こした。著書に『青いムーブメント』、『良いテロリストのための教科書』など。

支配という政治的な概念が現代にどこまで応用できるか「支配の政治理論」

2018年12月16日 | 新刊書
支配の政治理論
隠岐-須賀 麻衣 (著), 村田 玲 (著), 服部 美樹 (著), 玉手 慎太郎 (著), & 13 その他


タイトルは間違っていませんが、支配の政治理論というよりも、
支配という政治的な概念の歴史を追跡しながら
現代におけるその応用について考えた書物のようです。
フーコーやウエーバーなどの支配の理論が、どこまで現代の政治世界に応用できるか
わたしたちもぜひ考えてみたい重要なテーマですね。



単行本(ソフトカバー): 264ページ
出版社: 社会評論社 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4784515666
ISBN-13: 978-4784515660
発売日: 2018/12/15
内容紹介
<政治支配>をめぐる思想史的解明と現代における社会思想的分析。

第I部◆政治支配の思想史
◦プラトンの支配論 ―魂への配慮としての政治
◦マキァヴェッリの支配論 ―その近代性に関する若干の指摘
◦スピノザの支配論 ―個人・社会・国家の安定化機能としての宗教
◦アダム・スミスの支配論 ―支配を必要としない社会のしくみを描く
◦J.S.ミルの支配論 ―政府の強制的介入を通じた幸福の最大化
◦マルクスの支配論 ―生産力の制御とゲノッセンシャフト
◦ニーチェの支配論 ―「力への意志」における支配概念の考察
◦ベルクソンの支配論 ―社会的抵抗の目的と動機
◦フランクフルト学派の支配論 ―<支配の理性>と<支配批判の理性>

第II部◆政治支配と現代
◦リベラリズムと支配 ―ロールズのリベラリズムと非支配としての自由
◦コミュニタリアニズムと支配 ―公・私・共の三領域とその緊張関係の擁護
◦功利主義と支配 ―リバタリアン・パターナリズムの擁護論から
◦グローバリゼーションと支配 ―植民地主義の悪性を題材として
◦バイオテクノロジーと支配 ―フーコーの司牧権力の観点から
◦支配の経済学 ―自由な経済学における二重の支配
◦支配の社会学 ―ウェーバーの支配論
◦支配の神学 ―無支配を目指す未来学

著者について
(編者) 田上孝一 立正大学非常勤講師・同大学人文科学研究所員。著書に『マルクス疎外論の諸相』(時潮社)『環境と動物の権利』(本の泉社)『マルクス哲学入門』(社会評論社)など多数ある。

ワクワクしてくる対談「僕らの哲学的対話 棋士と哲学者」

2018年12月16日 | 新刊書
僕らの哲学的対話 棋士と哲学者
戸谷 洋志 (著), 糸谷 哲郎 (著)


ハイデガー研究者の棋士とハンス・ヨナス研究者の哲学者が
AIについて、哲学と社会の関係について話し合う。
なんとも魅力的な対談ではありませんか。
ワクワクしてきます。
ぜひ読んでみたい。



単行本(ソフトカバー): 202ページ
出版社: イースト・プレス (2018/12/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4781617352
ISBN-13: 978-4781617350
発売日: 2018/12/16

内容紹介
これは哲学者と棋士という異色顔合わせによる哲学的対話の記録です。棋士の糸谷哲郎さんは羽生善治さん他を下して竜王獲得、久々の20代タイトル保持者となった方です。また現役棋士として初めて国立大学へ進学し、大学院ではハイデガー研究で修士学位取得。当時同じ研究室で議論し合った哲学者の戸谷洋志さんは、ドイツの哲学者ハンス・ヨナスを研究する一方で、アカデミズムにこもることなく市民とのワークショップ「哲学カフェ」を各地で開催してきました。
例えばいまAI(人工知能)を搭載した将棋ソフトが驚異的な進化を遂げる中、現場の棋士はAIと人間の関係をどう捉えているのでしょうか。「人間」の自明性が問われる現在、1988年生まれの同世代の二人が勝負論や幸福論などを切り口に、「人間」を巡る様々な問いを考察していきます。

[目次]
1章 勝負論
2章 AIとどう向き合うか
3章 哲学と社会の難しい関係
4章 僕ら世代の幸福論
著者について
戸谷洋志(とや・ひろし) 1988年、東京都世田谷区出身。哲学研究者。法政大学文学部哲学科卒業、大阪大学大学院文学研究科文化形態論専攻博士課程満期取得退学。現在は追手門学院大学の特任助教。現代ドイツ思想を中心にしながら、テクノロジーと社会の関係を研究。また、「哲学カフェ」を始めとした哲学の社会的実践にも取り組んでいる。第31回暁烏敏賞受賞。著書に『Jポップで考える哲学――自分を問い直すための15曲』(講談社)、『ハンス・ヨナスを読む』(堀之内出版)がある。

糸谷哲郎(いとだに・てつろう) 1988年、広島県広島市出身。将棋棋士。八段。順位戦A級。「関西若手四天王」の一角として注目を集め、2014年に羽生善治、森内俊之らを下して竜王獲得、久々の20代タイトル保持者となった。現役の棋士として初めて国立大学へ進学し、大阪大学文学部にて哲学・思想文化学を研究。大学院ではハイデガー及びヒューバート・ドレイファスを研究し修士学位を取得。著書に『現代将棋の思想 一手損角換わり編』(マイナビ)、共著に『糸谷&斎藤の現代将棋解体新書』(マイナビ)がある。