新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

漱石と時代のかかわりを探る「戦争の時代と夏目漱石」

2018年12月23日 | 新刊書
戦争の時代と夏目漱石
小森 陽一 (著)


あまり読まれることのない夏目漱石の『満韓ところどころ』を手掛かりに
漱石の戦争にたいする姿勢を読み取ろうとする野心的な一冊。
この作品だけでなく、漱石のさまざまな作品の中に姿をみせている
時代の諸相を探り出そうとする試みも行われています、
明治維新150周年の今年の最後を締めくくるにふさわしい本だと思います。



単行本(ソフトカバー): 184ページ
出版社: かもがわ出版 (2018/12/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4780309980
ISBN-13: 978-4780309980
発売日: 2018/12/21


内容紹介
■内容■
明治を生きた漱石は「戦争の時代」とどう向き合ったのか?紀行文『満韓ところどころ』を漱石研究家が初解説。なぜ「韓」は書かれなかったのか?そこから帝国主義への批判的精神が見えくる!

■目次■
まえがき
第一章 『満韓ところどころ』を読む
(1)なぜ「韓」は書かれなかったのか
(2)『満韓ところどころ』から見える満州経営の実相
「南満鉄道会社っていったい何をするんだい」という問い
「クーリー」に見る人身売買
総合的な植民地経営の始まり
日露戦争におけるロシアからの戦利品
旅順、203高地の激戦の跡
「満州日日新聞」での伊藤博文暗殺についての所感
朝鮮にも行ったのに寸止めにしたのは
第二章 小説『門』と帝国主義へのまなざし
『門』における宗助と御米の物語
冒頭の日常会話に秘められた真相
日本の近代工業成立過程を背景に
子どもが産めない夫婦の秘密
安井から逃げ出した小説の顛末
第三章 『満韓ところどころ』を旅する
(1)日清・日露戦争と南満州鉄道
〈旅順〉日露戦争と漱石小説
〈東鶏冠山・水師営〉当時の陸軍の食糧・感染症事情
〈白玉山から203高地へ〉激戦の跡とロシアからの戦利品
〈関東法院〉安重根処刑の地
〈金州副都統衛門跡地〉子規との文学的友情の始まり
(2)満州帝国とはなんであったか
〈長春、瀋陽を訪ねる〉
(3)中国で戦争責任を考える
〈平頂山惨案遺址記念館・その1〉事件の顛末とその意味
平頂山事件の生存者の家族の話
〈平頂山惨案遺址記念館・その2〉事件に見る戦争のリアリズム
〈撫順戦犯管理所〉戦争責任のあり方を問う
〈旅を終えて〉日本人は戦争責任とどう向き合ってきたのか
第四章 明治と向き合った小説家・夏目漱石
夏目漱石にとっての明治という時代
〈『点頭録』〉漱石は第一次世界大戦をどう評価したか
〈『それから』〉明治とはどのような時代だったか
〈『こゝろ』〉日清戦争による賠償金の行方
〈『虞美人草』〉日露戦争は「人種と人種の戦争」
〈『門』〉安重根による伊藤博文暗殺事件
〈『草枕』〉徴兵制国家の象徴としての汽車
〈『吾輩は猫である』〉「大和魂」と軍国主義批判
〈『私の個人主義』〉自己本位を貫くということ
終章 明治維新150年に当たって漱石に学ぶ
日本国憲法によって国民は初めて主権者に
安倍政権による集団的自衛権行使の公認
私と夏目漱石研究
漱石の思想はどのように形成されたのか
あとがき
夏目漱石略年表

■著者略歴■
小森 陽一(コモリヨウイチ)
東京大学大学院教授、専攻は日本近代文学、九条の会事務局長。

今、ヨーロッパでもっとも気になる国「フランス現代史 (岩波新書)」

2018年12月23日 | 新刊書
フランス現代史 (岩波新書)
小田中 直樹 (著)


第二次世界大戦後のフランス現代史。
欧州統合の立役者になりつつあるフランスですが
足元から異議申し立ての波が押し寄せつつあります。
今、ヨーロッパでもっとも気になる国フランスの現代史の書物は
いくらあっても足りないくらいです。




新書: 240ページ
出版社: 岩波書店 (2018/12/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4004317517
ISBN-13: 978-4004317517
発売日: 2018/12/21

内容紹介
1944年の解放から、「栄光の30年」、五月危機、石油危機、「ミッテランの実験」の挫折、新自由主義、そしてマクロン政権成立──フランスの戦後を通観すると、そこには「分裂と統合の弁証法」というダイナミックなメカニズムがみえてくる。欧州統合の動きにも着目しながら現代フランスの歩みをとらえる通史。

序 章 分裂と統合の弁証法
 1 「モデル」から「先行者」へ
 2 分裂と統合の弁証法
 3 相対的後進国

第一章 解放と復興―― 一九四〇年代
 1 解放,対立,和解
 2 経済復興
 3 第四共和政の成立

第二章 統合欧州の盟主をめざして―― 一九五〇年代
 1 脱植民地化と欧州統合
 2 復興から成長へ
 3 第五共和政の成立

第三章 近代化の光と影―― 一九六〇年代
 1 「栄光の三〇年」
 2 近代化のなかで
 3 五月危機

第四章 戦後史の転換点―― 一九七〇年代
 1 過渡期としてのポンピドー政権
 2 「栄光の三〇年」の終焉
 3 分裂する社会

第五章 左翼政権の実験と挫折―― 一九八〇年代
 1 ミッテランの実験
 2 新しい社会問題
 3 異議申立ての諸相

第六章 停滞,動揺,模索―― 一九九〇年代
 1 争点化する欧州統合
 2 動揺する社会
 3 模索する政治

第七章 過去との断絶?―― 二〇〇〇年代
 1 「古いフランス」と「新しいフランス」
 2 グローバル化
 3 ポピュリズム

終 章 その先へ

あとがき

年 表
索 引

あまり顧みられなかったテーマを取り上げた注目作「蛮行のヨーロッパ」

2018年12月23日 | 新刊書
蛮行のヨーロッパ:第二次世界大戦直後の暴力
キース・ロウ (著), 猪狩 弘美 (翻訳), 望 龍彦 (翻訳)


戦争が終わったからと言って暴力がなくなるわけではなく
かえってそれまで抑えられていた暴力が猛威を振るうこともあるわけです。
イギリスで大評判のノンフィクション作品である本書は
そのような終戦の喜びの背後で暴発した暴力を描きだすものです。
もっとたくさん書かれていて当然でありながら、
あまり顧みられなかったテーマを取り上げた注目作。



単行本: 636ページ
出版社: 白水社 (2018/12/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4560096570
ISBN-13: 978-4560096574
発売日: 2018/12/22


内容紹介
ヘッセル=ティルトマン賞受賞作品

本書は、1945年の終戦から40年代末まで、欧州各地で吹き荒れた夥しい残虐行為──復讐、民族浄化、内戦──などを詳細に論じ、「戦後の闇」に光を当てる歴史書。むろん、大戦が終わってすぐに平和が訪れたわけではなく、大混乱のさなか、残虐行為が次々と広範囲にわたって起こったことが明かされる。「民族浄化」、「内戦」、「ソ連支配」といった大きな視点から、ドイツ人看守への復讐、ドイツ人兵士と関係をもった女性の頭髪の丸刈り、ドイツ人兵士と現地女性との間に生まれた子供への嫌がらせといった身近な事例まで、網羅している。
自民族の被害を誇張して加害の過去を相対化したり、他民族の加害によって自民族の加害の過去を相対化するような試みが、現在に至るまで行われている。本書は、大戦直後の「暴力」の知られざる実態を、当事者の証言と最新の統計を駆使して、冷静に解明している。
本書は、イアン・カーショーが「生々しく、背筋が凍る」と賛辞を寄せ、英国で優れた歴史ノンフィクション作品に贈られるヘッセル=ティルトマン賞を受賞し、世界八カ国語以上の言語に翻訳されている。口絵写真・地図多数収録。

著者について
1970年生まれ、ロンドン在住の著述家。マンチェスター大学で英文学を学び、歴史関連書の出版に携わった後、作家および歴史家として著作を発表し続けている。小説『トンネル・ヴィジョン』(雨海弘美訳、ソニーマガジズ、2002)の邦訳、連合国によるハンブルク爆撃によって生じた1943年の空襲大火に関する歴史書Inferno: The Devastation of Hamburg, 1943 (2007)がある。本書は、英紙『サンデー・タイムズ』のトップ10ベストセラーとなり、英国で優れた歴史ノンフィクション作品に贈られるヘッセル=ティルトマン賞を受賞している。また、ドイツ語、オランダ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ポーランド語、スロヴェニア語、中国語といった複数の言語に翻訳されている。