新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

顔の科学から顔の哲学へ「第一印象の科学――なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?」

2019年01月17日 | 新刊書
第一印象の科学――なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか? 単行本 – 2019/1/17
アレクサンダー・トドロフ (著), 作田 由衣子 (監修), 中里 京子 (翻訳)


今日は科学もので面白いものが多いですね。
この本は心理学的なスタンスから顔がもつ力を考察するという興味深いものです。
第一印象は外れないものだといいます。
偏見には違いないのですが
わたしたちが偏見によって動かされる生き物であるかぎり
偏見は必ずしも謬見にはならないかもしれないのです。
そこでこうした考察は顔の科学から、やがては顔の哲学に近いところに赴くことになります。





単行本: 408ページ
出版社: みすず書房 (2019/1/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087626
ISBN-13: 978-4622087625
発売日: 2019/1/17
¥ 4,104



内容紹介
「すばらしい本だ。多数の驚くべき洞察と魅力的な図版が、
ある種、複雑で審美的な体験を与えてくれる」ダニエル・カーネマン(プリンストン大学名誉教授)。

選挙の結果は候補者の顔で予測できる。赤ちゃんはすでに《信頼できる顔》を知っている。
人は自分の民族に似た者を信用する。「信頼できる顔」と「威圧的な顔」の成分とは?
心理学の最先端を走る研究者が、脳科学、認知科学、コンピューターサイエンスを駆使して、
人間の避けがたい顔バイアスを分析した決定版。

プロローグ

第I部 観相学はなぜ人を惹きつけるのか
1 観相学者の約束
2 一目で抱く印象
3 結果を伴う印象

第II部 第一印象を理解する
4 心理学者の仕事
5 見えないものを可視化する
6 印象の機能
7 見る人次第

第III部 第一印象の(不)正確さ
8 誤解を招く画像
9 次善の判断
10 進化の物語
11 人生は顔に痕跡を残す

第IV部 顔の特別な地位
12 人は生まれつき顔に関心を払う
13 脳内の顔モジュール
14 錯覚に満ちた顔のシグナル

エピローグ 再び進化の物語について

謝辞

索引
原注および出典
図版クレジット

著者について
プリンストン大学心理学教授。プリンストン脳科学研究所、プリンストン大学ウッドロウ・ウィルソン・スクールにも所属。第一印象研究の第一人者。研究は『ニューヨーク・タイムズ』『ガーディアン』『デイリーテレグラフ』ほか多数で紹介されている。著書『第一印象の科学』(Princeton University Press, 2017, 中里京子訳、みすず書房、2018)。



カッシーラーの懐の深さを示す「現代物理学における決定論と非決定論 」

2019年01月17日 | 新刊書
現代物理学における決定論と非決定論 [改訳新版]――因果問題についての歴史的・体系的研究
エルンスト・カッシーラー (著), 山本 義隆 (翻訳)


1994年に学術書房からだされていたものを山本さんが訳しなおしたもののようです。
カッシーラーの懐の深さを示す科学史的な研究書で
山本さんが指摘しているように、「現代物理学の世界認識」に取り組んだ書物として
『実体概念と関数概念』の延長線上にある書物として興味深いものです。
「不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?」の問いともどこかで響きあいますね。



単行本: 394ページ
出版社: みすず書房; 改訳新版 (2019/1/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087367
ISBN-13: 978-4622087366
発売日: 2019/1/17
単行本 ¥ 6,480


内容紹介
「カントのとらわれていた、近代科学のカテゴリーのみで経験の対象が構成される
という理性主義的偏向と、その近代科学をもっぱらニュートン物理学のみに求めるという
時代的制約の、両面での限界を克服した立場から、あらためて現代物理学の世界認識
に取り組んだのが本書である。その意味においても、本書はカッシーラー哲学の全貌
を知るうえで不可欠であり、またその点に本書がカッシーラー哲学全体のなかで有する
重要性もある」(訳者・山本義隆)。

量子力学の本当の困難は、それが根底的な〈非決定論〉を導入したということ、
それが私たちに〈因果概念〉の放棄を要求しているということ、そのことにあるのでは
ない――この問題提起から始まり、ナチス・ドイツを逃れ亡命先のスウェーデンで
1936年に執筆された本書は、『実体概念と関数概念』に始まり『シンボル形式の哲学』
に結実し『国家の神話』に終わる、カッシーラーの生涯の哲学的問題意識のすべての
要素の結接点に位置するものである。

1994年に同訳者により学術書房から刊行された旧訳書を、原書初版に基づき本文・
解説とも大幅に書き改め、英訳版の序文も加えた、改訳新版。量子力学的世界の
哲学的基礎付けを試み、科学と哲学を架橋した画期的著作である。

思想的に深い意味を帯びた問い「不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?」

2019年01月17日 | 新刊書
不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか? (ブルーバックス)
須藤 靖 (著)


哲学の世界には可能世界論というものがあって
複数の世界の可能性を考えるが
現代物理学的においても、複数の宇宙の可能性を考えている。
どちらもわたしたちの世界がこのようにしてあることの背後にある謎に取り組もうとする試みだ。
「わたし」がいまどうしてここに、この「わたし」として存在するのかというのは
わたしたち人間にとっての尽きない問いであり、物理学もまた
思想的な意味をおびたこの問いにつき動かされている。




新書: 240ページ
出版社: 講談社 (2019/1/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065144655
ISBN-13: 978-4065144657
発売日: 2019/1/17
Kindle版 ¥ 1,080
新書 ¥ 1,080

この宇宙が「不自然なほど」よくできているのはなぜ?
その謎を解く鍵は「マルチバース(多数の宇宙)」だった!

 Q1 宇宙に果てはありますか
 Q2 宇宙には始まりがあったのですか
 Q3 宇宙はある場所が爆発して生まれたのですか
 Q4 宇宙人はいますか

これらの問いに宇宙論研究者が本気で答えます。


我々はどこまで世界を理解したのか?
現代物理学は、この宇宙が絶妙なバランスの上に成り立っていることを明らかにした。
なぜ、地球はこの場所にあるのか? なぜ、重力や電磁気力はこの強さなのか?
我々の宇宙は唯一の存在なのか、無数の宇宙の中の1つに過ぎないのか?
最新物理学の観測事実に基づいた「マルチバース」の理論と「人間原理」を徹底解説。


【目次】
第1章 この「宇宙」の外に別の「宇宙」はあるのか?
第2章 宇宙に果てはあるのか? 宇宙に始まりはあるのか?
第3章 我々の宇宙の外の世界
第4章 不自然な我々の宇宙と微調整
第5章 人間原理とマルチバース
終 章 マルチバースを考える意味

買うしかない「終末論の系譜: 初期ユダヤ教からグノーシスまで」

2019年01月15日 | 新刊書
終末論の系譜: 初期ユダヤ教からグノーシスまで
大貫 隆 (著)


グノーシス研究の専門家である大貫さんが
ユダヤ教からキリスト教への終末思想の継承を跡付けた書物です。
576ページの大冊ですから、大いに読み応えがありそうです。
お値段も抑え目で、これは買うしかないかも。
筑摩選書のフーコー論といい、
今日は筑摩書房が冴えてます。


単行本: 576ページ
出版社: 筑摩書房 (2019/1/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480847472
ISBN-13: 978-4480847478
発売日: 2019/1/15
¥ 4,536



内容紹介
ユダヤ教の中から生まれた終末思想はいかにしてイエスに継承されたのか。聖書正典のほか外典偽典等の史料を渉猟し、現代思想との対話も試みる渾身の書き下ろし。

著者について
1945年生まれ。静岡県出身。東京大学大学院人文科学研究科西洋古典学専攻博士課程修了。1979年ミュンヘン大学にてDr. theol. 取得。東京女子大学助教授、東京大学教授を経て、現在東京大学名誉教授。2010-14年自由学園最高学部長。著書に『イエスという経験』(岩波書店、のち岩波現代文庫)、『グノーシスの神話』(岩波書店、のち講談社学術文庫)、『聖書の読み方』(岩波新書)など、訳書にハンス・ヨナス『グノーシスと古代末期の精神』(全2巻、ぷねうま舎)、エイレナイオス『異端反駁』(全5巻のうちI、II、V巻、教文館)、『ナグ・ハマディ文書』(全4巻、共訳、岩波書店)などがある。

読む前からワクワク「フーコーの言説: <自分自身>であり続けないために 」

2019年01月15日 | 新刊書
フーコーの言説: <自分自身>であり続けないために (筑摩選書 169)
慎改 康之 (著)


タイトルはちょっと古い感じですが(笑)
内容はフーコーの生前には発表されていなかった「性の歴史」の第四巻「肉の告白」の
精読を含めた新しいもののようです。
どんな思考の全貌が描かれるのか
読む前からワクワクします。


単行本: 270ページ
出版社: 筑摩書房 (2019/1/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480016740
ISBN-13: 978-4480016744
発売日: 2019/1/15
¥ 1,728


商品説明
知・権力・自己との関係の三つを軸に多彩な研究を行ったミシェル・フーコー。その言説を貫くものとは何か。前史ともいえる50年代のテクストから「性の歴史」第4巻「肉の告白」までを精読し、思考の全貌を明らかにする。

知・権力・自己との関係の三つを軸に多彩な研究を行ったフーコー。その言説群はいかなる一貫性を持つのか。精確な読解によって明るみに出される思考の全貌。【商品解説】

著者紹介
慎改 康之
略歴〈慎改康之〉1966年長崎県生まれ。明治学院大学教授。

「精神科医が教える 忘れる技術」

2019年01月15日 | 新刊書
精神科医が教える 忘れる技術
岡野 憲一郎 (著)


2006年刊『忘れる技術――思い出したくない過去を乗り越える11の方法』(創元社)を新装・改題
ではありますが、忘れることは大切な技術なので、注目しましょう。
わたしたちは忘れたいことほど、忘れることができず、
心を腐らせていものです。
きちんと忘れること、それは良く生きるためにも大事なことだと思います。

単行本: 208ページ
出版社: 創元社 (2019/1/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4422114883
ISBN-13: 978-4422114880
発売日: 2019/1/15
¥ 1,512


内容紹介
一刻も早く楽になるための具体的な処方箋

PTSDを引き起こす外傷記憶、恨みや罪悪感、うつ病や強迫神経症、依存や中毒など、
あなたの心をいつまでも蝕み、ときには日常を支配してしまう、
思い出すのもつらい過去や苦しい症状、頭にこびりついた記憶や心をかき乱す感情――
こうした「忘れられないこと」を上手に「忘れる」ための具体的な方法を
ベテラン精神科医が説く。

人が遭遇するさまざまな「忘れられない」ケースを紹介するほか、
「忘れることができなくなる」メカニズムを脳と心の両面から解き明かす。

ネガティブな記憶を消し去り、過去に見切りをつけることは、
安定した日常生活を得て、人生を前向きに生きていくことにつながる。

*小社刊『忘れる技術』を新装・改題


【目次】
第1章 忘れられない人びと

私自身の忘れられない思い出
忘れられないケース1 突然よみがえってくる「外傷記憶」
忘れられないケース2 けっして消えない恨みの記憶
忘れられないケース3 人を傷つけた加害者としての罪悪感
忘れられないケース4 過去に時間が逆流するうつ病
忘れられないケース5 過去にしばりつけられ、ある行為をくり返す強迫神経症
忘れられないケース6 脳が過去の興奮や快感を忘れない薬物中毒
忘れられないケース7 病気だとわかってもらえない依存症
忘れられないケース8 もって生まれた忘れない才能――サバン症候群

第2章 なぜ忘れることができないのか

忘れられない記憶の病理
忘れられる記憶は「善玉の記憶」である
「頭の記憶」と「体の記憶」の深い関係
記憶はどこで作られるか――脳のなかの記憶の工場
忘れられないのは、「欠陥のある記憶」
驚異のサバン現象――天才児はなぜすべてを憶え、しかも忘れないのか?
心の側から見た「忘れられないわけ」

第3章 忘れる技術を伝授する

忘れる技術その1 忘れたい刺激を遠ざける
忘れる技術その2 怒りやフラストレーションを何かにぶつける
忘れる技術その3 賠償を要求する、訴える
忘れる技術その4 人に話す(カウンセリングを受ける)
忘れる技術その5 相手について知る(理解し、許す)
忘れる技術その6 新しい世界に踏み出す
忘れる技術その7 与える人生を歩む
忘れる技術その8 薬物療法を試みる
忘れる技術その9 思考制止術を用いる
忘れる技術その10 バランスシートを用いる
忘れる技術その11 名人に学ぶ――中島誠之助さんの例



★寄稿「復刊に寄せて」香山リカ(精神科医)



*2006年刊『忘れる技術――思い出したくない過去を乗り越える11の方法』(創元社)を新装・改題


ジッドの時代を掘り下げた大冊「ジッドとその時代」

2019年01月14日 | 新刊書
ジッドとその時代
吉井 亮雄 (著)

ジッドはフランスの戦後文学と戦後思想に大きな影響を及ぼしているのですが
そのことはあまり明確にされてこなかったように思われます。
本書は674ページの大冊で、ジッドにかかわるさまざまなテーマを掘り下げていて
読み応えがありそうです。
わたしたちの知らないフランスの時代の諸相や文学事情も解き明かされそうで、楽しみです。
お値段もはるので、図書館に注文したいですね。



単行本: 674ページ
出版社: 九州大学出版会 (2019/1/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4798502499
ISBN-13: 978-4798502496
発売日: 2019/1/11
¥ 9,720



目次
 凡例・略号一覧



   第Ⅰ部 「自己」の探求と初期の文学活動

第1章 自伝による幼少年期・青年期の「再構成」
      『一粒の麦もし死なずば』の冒頭と末尾について  

第2章 青年期のジッドとヴァレリー
      ふたりの関係は「危うい友情」だったのか  

第3章 ジッドとエドゥアール・デュジャルダン
      「内的独白」の創始者との交流  

第4章 ジッドとナチュリスム
      サン=ジョルジュ・ド・ブーエリエとの往復書簡  

   第Ⅱ部 文学活動の広がり

第1章 ジッドとポール・フォール
      詩人にして文芸誌主宰者との交流  

第2章 「デラシネ論争」「ポプラ論争」の余白に
      ジッドとルイ・ルアールの往復書簡をめぐって  

第3章 「状況に想をえた小品」
      『放蕩息子の帰宅』の生成、作品の読解、同時代の反響  

第4章 「新劇場」か、それとも「小劇場」か
      『カンダウレス王』ベルリン公演をめぐって  

第5章 ジッドとトルストイ
      伯爵家での『放蕩息子の帰宅』朗読をめぐって  

   第Ⅲ部 批評家・外国人作家との交流

第1章 ジッドとチボーデ
      一九〇九年から一九二〇年代初めまでの交流  

第2章 ジッドとガストン・ソーヴボワ
      第一次大戦前後の交流  

第3章 ジッドとリルケ
      『放蕩息子の帰宅』ドイツ語訳をめぐって  

第4章 ジッドとタゴール
      『ギーターンジャリ』フランス語訳をめぐって  

   第Ⅳ部 「現実」への関心

第1章 ジッドとポール・デジャルダン
      一九二二年の「ポンティニー旬日懇話会」を中心に  

第2章 ジッドとアンリ・マシス
      一九二四年の論争を中心に  

第3章 蔵書を売るジッド
      一九二五年の競売  

第4章 ジッドの『ポワチエ不法監禁事件』
      現実探求のなかでの位置  

   第Ⅴ部 晩年の交流

第1章 ジッドの盛澄華宛書簡
      中国人フランス文学者との交流  

第2章 ジッドと「プレイアッド叢書」
      『日記』旧版をめぐって  

第3章 ジッドとジャン・カバネル
      「アマチュア文芸批評家」にしてレジスタンスの闘士との交流  

第4章 ジッドの『アンリ・ミショーを発見しよう』
      一九四一年のニース講演中止をめぐって  

第5章 ジッドとアンドレ・カラス
      若き文芸ジャーナリストとの交流  

結 語

《補遺》 ジッド書誌の現状  参考文献一覧に代えて  

 初出一覧
 あとがき
 索 引

日本人の死生観を問う「増補 死者の救済史: 供養と憑依の宗教学 」

2019年01月14日 | 新刊書
増補 死者の救済史: 供養と憑依の宗教学 (ちくま学芸文庫 イ 61-1)
池上 良正 (著)


元版は2003年に角川書店から出版されたものです。
それに「靖国信仰の個人性」を増補したもの。
民間信仰の死生観から日本人の根っこのところにある思想を取り出そうとするのは
柳田や折口以来の民俗学の伝統にのっとったものですが
本書はとくに宗教学の観点からこの問題に取り組むもののようです。
西洋のキリスト教の教えはかなり明確ですが、
私たちは死んだらどうなると思っているのでしょうか。
そのことは私たち日本人にもよく分かっていないことなのかもしれません。



文庫: 338ページ
出版社: 筑摩書房; 増補版 (2019/1/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480098992
ISBN-13: 978-4480098993
発売日: 2019/1/9
文庫 ¥ 1,296



内容紹介
未練を残しこの世を去った者に、日本人はどう向き合ってきたか。民衆宗教史の視点からその宗教観・死生観を問い直す。「靖国信仰の個人性」を増補。

著者について
1949年、長野県生まれ。東北大学大学院文学研究科宗教学専攻博士課程単位取得退学。宮城学院女子大学専任講師、弘前大学教授、筑波大学教授などを経て、現在は駒澤大学総合教育研究部教授。博士(文学)。専門は宗教学、とくに民俗・民衆宗教の宗教学的研究。おもな著書に、『悪霊と聖霊の舞台』(どうぶつ社)、『民間巫者信仰の研究』(未來社)、『近代日本の民衆キリスト教』(東北大学出版会)などがある。

まことにタイムリーな一冊「人口問題の正義論」

2019年01月14日 | 新刊書
人口問題の正義論
松元 雅和 (編集), 井上 彰 (編集)


人口の減少に悩む日本のような国もあれば、
人口の爆発的な増加が深刻な問題となるアフリカ諸国のような国もあります。
どちらにとっても人口は重要な社会・経済的な問題に、そして政治的に問題になってきました。
人口の総数だけではなく、世代的なバランスの問題も重要な倫理的な問題を引き起こしています。
「人口の問題は正義の問題である」と断言する本書は
まことにタイムリーな一冊と言えるでしょう。



単行本: 264ページ
出版社: 世界思想社 (2019/1/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4790717259
ISBN-13: 978-4790717256
発売日: 2019/1/11
¥ 3,888


内容紹介
人口の問題は正義の問題である!

どれくらいの人口規模が理想的なのか?

どのような人口政策が正しいのか?

哲学、倫理学、法哲学、政治哲学、経済学がそれぞれ進めてきた知の蓄積を結集して体系化した、最良のガイド。

哲学的基礎から、生殖と家族計画、世代間正義、移民・外国人労働者問題まで。


◆序章より

本書の特徴は、人口問題を正義論の観点から論じることである。正義論とは、個人の選択や判断、社会の政策や制度など、個人や社会のありように関して、規範的に考察する学問分野である。正義論はその考察対象として、「今ある」社会よりも「あるべき」社会を探求する。そこで、人口問題について正義を論じるとは、あるべき人口規模、あるべき人口政策といった規範的問いに中心的に取り組むということである。本章第一節で概観するように、人口論は過去から現在まで、すぐれて正義の問題でもあり続けてきた。

とはいえ、正義論の一テーマとして、人口問題が独立した位置を占めてきたわけでは必ずしもない。むしろ、多くの研究者がそれを重要なテーマと捉え、研究を重ねてきたにもかかわらず、これまで「人口正義論」としてその体系的な知の蓄積はなされていないのが現状である。その結果、人口問題についての考察はこれまで、環境倫理学、生命医療倫理学、グローバル正義論、世代間正義論といった各テーマの一部分として、倫理学者、法哲学者、政治哲学者らによって、同時並行的に進められてきた。

こうした問題意識のもと、私たちは各テーマ、各領域を横断する新たな学際的領域を切り開くような、国内の知の蓄積を結集する編著を企画した。本書の刊行により、正義論研究者にとっても、同様に人口問題に関心を抱く他分野の研究者や一般の読者にとっても、「人口正義論」に関する最良の知の手引きができるものと信じている。

目次
人口問題の正義論―研究動向の道案内
第1部 人口問題の哲学的基礎
第2部 人口規模の問題
第3部 生殖と家族計画の問題
第4部 人口移動の問題
第5部 世代間正義の問題



オースティンの古典的な名著の新訳「言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか」

2019年01月13日 | 新刊書
言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか (講談社学術文庫)
J. L・オースティン (著), 飯野 勝己 (翻訳)


言語行為論の開祖とも言えるオースティンの名著「言語と行為」は
ここしばらくは入手しがたくなっていたのですが
このたび新訳が刊行されました。しかも文庫です。
これは朗報ですね。
お値段も手ごろですし、すでに持っている人も、これから読もうという人も、早速注文しましょう。
(おいおい、講談社の回し者かよ(笑))



文庫: 312ページ
出版社: 講談社 (2019/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065143136
ISBN-13: 978-4065143131
発売日: 2019/1/12
文庫 ¥ 1,274


内容紹介
本書は、哲学に不可逆的な影響を与えた記念碑的名著、待望の文庫版での新訳である。
ジョン・ラングショー・オースティン(1911-60年)は、イングランド北西部の街ランカスターに生まれ、オックスフォード大学ベリオール・カレッジに進学した。語学、音楽、スポーツなど多彩な才能に恵まれた中で最終的に哲学を選んだオースティンは、20代半ばには早くも教壇に立つようになる。しかし、カリスマ的な威圧感を漂わせつつ独裁的とも思えるふるまいが目立ったことにも示されているように、当時のオースティンは何よりも「破壊的」な哲学者だった。
オースティンが生涯に発表した公刊論文は、わずか7本。48歳で早逝したとはいえ、きわめて寡作だったオースティンだけに、1955年に行われたハーヴァード大学での講義は、哲学の歴史にとって決定的に重要な意味をもつことになった。それらのうち「ウィリアム・ジェイムズ講義」として行われたもののために書かれたノートが、本書である。ここでオースティンは初めて「構築」に転じ、みずからの哲学の到達点を示している。
本書で提示された理論は「言語行為論(speech act theory)」と呼ばれる。従来の言語論は、命題の真偽を問題にしてきた。それに対してオースティンは、言葉はただ事実を記述するだけでなく、言葉を語ることがそのまま行為をすることになるケースがある、と言う。例えば、「約束する」と発話することは「約束」という行為を行うことである。ここにある「確認的(コンスタティヴ)」と「遂行的(パフォーマティヴ)」の区別は、以降の哲学に不可逆的な影響を与えた。
言語行為論は、ジョン・R・サール(1932年生)といった後継者を生むとともに、ジャック・デリダ(1930-2004年)の批判を呼び起こした。それを契機に巻き起こったデリダ=サール論争は、よく知られている。
オースティン研究の第一人者による訳文は、オースティンの息遣いを伝えてくれるだろう。これからのスタンダードとなる決定版が、ここに誕生した。

著者について
J. L・オースティン
1911-60年。イギリスの哲学者。後世に多大な影響を与えた「言語行為論」の創始者。主な著書に、本書のほか、『オースティン哲学論文集』、『知覚の言語』など。

飯野 勝己
1963年生まれ。東北大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。現在、静岡県立大学准教授。専門は、コミュニケーション論・メディア論・言語哲学。著書に『言語行為と発話解釈』など。

人間の民族と文化について考える手掛かりとなる「文化が織りなす世界の装い」

2019年01月13日 | 新刊書
文化が織りなす世界の装い (シリーズ比較文化学への誘い)
山田 孝子 (著, 編集), 小磯 千尋 (著, 編集), 井関 和代 (著), 金谷 美和 (著), 坂井 紀公子 (著)


わたしたちはどんな社会においても、自分を装います。
ロビンソン・クルーソーのように漂流して
まったくの孤島に生きていたら、装うことはないかもしれませんが
それでもいつか人々のうちに暮らすときのことを考えて、装いの心を忘れることはないでしょう。
それほどまでに装いというものは、人間にとって深い意味のあるものだと思います。
モードという観点からではなく、「人はなぜ装うのか」という観点から編まれたこの書物は、
人間の民族性だけでなく、人間性も明かしてくれるのではないかと、期待されます。



単行本(ソフトカバー): 192ページ
出版社: 英明企画編集 (2019/1/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4909151044
ISBN-13: 978-4909151049
発売日: 2019/1/11
¥ 1,080


内容紹介
人はなぜ装うのか──。

どのような素材や染料を用いて、どんな文様が描かれた服を、いかなる場面で着用する選択をしているのか。

私たちも含む世界の人びとの装いには、個人の嗜好のみならず、帰属する社会や集団の文化や価値観が反映されています。

本書では、衣服の起源から素材や加工技術の発見とトランスナショナルな拡散までの「装い」をめぐる歴史を追い、現代における世界の「装い」の諸相を比較するなかから、装う行為および衣服そのものに表れる民族性や地域性を考えます。

◆座談会I「装う素材と技術の発見と伝播――なにを用いて、どう加工し、いかに染めるのか」
井関和代+大井理恵+金谷美和+川村義治+小磯千尋+坂井紀公子+鈴木清史+山田孝子

◆論考
「人はなぜ装うのか──「装い」の起源と多様な展開からみる」
山田孝子

◆論考
「更紗がつなぐ装いの文化──インドからヨーロッパ、アフリカ、そして日本」
井関和代

◆座談会II「地域性・社会性の表象としての衣服――いつ、どんな場面で、なにを、いかに纏うのか」
井関和代+金谷美和+川村義治+川本智史+桑野萌+小磯千尋+小西賢吾+坂井紀公子+鈴木清史+アヒム・バイヤー+山田孝子

◆論考
「伝統ある絞り染め布をファッションとしてまとう──装いからみる現代インド社会の変容」
金谷美和

◆論考
「装いからケニアの現在を読み解く――プリント更紗と生活環境を手がかりに」
坂井紀公子

◆「伝統と近代のつむぎかた──オーストラリア先住民アボリジニの場合」
鈴木清史

◆座談会III「現代の『装い』にみる宗教性・ジェンダー・個別化──宗教間・地域間・男女間・時代間の比較から」
川村義治+川本智史+桑野萌+小磯千尋+小西賢吾+坂井紀公子+アヒム・バイヤー+山田孝子+ジェームス・ロバーソン

◆論考
「インドを表象する装いの変遷──都市部の観察からみえる男女差」
小磯千尋

◆論考
「『加賀友禅』という文化表象──誰がブランドを生み出したのか」
本康 宏史

出版社からのコメント
世界のどの地域に出かけても同じような「もの」があふれ、文化の違いがなくなりつつあると感じる一方で、文化による差異を思い知らされ、異文化理解に当惑することも少なくありません。 比較文化学は、文化人類学のみならず、地域研究、宗教学、社会学、文学、言語学など、さまざまな視点からの比較によって、文化の相違と共通性とを明らかにする学際的な学問領域です。 比較文化学を学ぶことは、文化を相対化するまなざしを身につけ、他者(異文化)理解を深めることにつながります。 シリーズ「比較文化学への誘い」は、比較文化学の可能性を考え、その学びの世界へと誘う入門書です。

愛とフロムについて学べる一石二鳥の本「フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学 」

2019年01月13日 | 新刊書
フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学 (NHK出版新書 573)
鈴木 晶 (著)


『愛するということ』という本は世界的なベストセラーになったらしいですが
この本は原題が「愛という技術」であったことからも分かるように、
フロイト左派と呼ばれたフロムは、アメリカに亡命して、
精神分析の成果をわかりやすく説明することに巧みでした。
本書はこの本の改訳を担当した鈴木晶さんが
愛をテーマにフロムの心理学を解説した書物です。
愛について、そしてフロムの心理学について考えるための
一石二鳥の本かもしれません。


新書: 216ページ
出版社: NHK出版 (2019/1/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4140885734
ISBN-13: 978-4140885734
発売日: 2019/1/10
¥ 842


内容紹介
現代人は、愛を誤解している!
「恋に落ちる」という最初の体験と「愛している」という持続的な状態を混同してはいけない。愛は、誰もが生まれながらに持っているものではなく、学ぶべきものだ──。アドラーの「勇気」からフロムの「愛」へ。世界的ベストセラー『愛するということ』の翻訳者が、フロム心理学の奥義を極める。

目次
第1章 愛は技術である
第2章 フロムって、いったい誰?
第3章 孤独の克服
第4章 愛はどこからきたのか
第5章 現代社会における愛
第6章 愛の習練

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鈴木/晶
1952年、東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。法政大学名誉教授。専門は文学、精神分析学、舞踊学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ひねりがうまい「天然知能 (講談社選書メチエ) 」

2019年01月12日 | 新刊書
天然知能 (講談社選書メチエ)
郡司ペギオ幸夫 (著)


人工知能ばやりですが、「今こそ天然知能を解放しよう」という刺激的な書物が登場しました。
そのひねり方はさすが郡司さん。
「わたしがわたしとして存在するための哲学」というのをぜひわたしも読んでみたい。
今月の講談社選書メチエは、「暗号通貨の経済学」といい
冴えているなあ。


単行本(ソフトカバー): 256ページ
出版社: 講談社 (2019/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065145139
ISBN-13: 978-4065145135
発売日: 2019/1/12
Kindle版 ¥ 1,674
単行本(ソフトカバー) ¥ 1,836


内容紹介
一見やさしく書かれていますが、バカにしてはいけません。世界の見方を変えてくれます。――養老孟司(解剖学者)
*
AIブームへの正しいカウンター。自然/人工の檻の外へ、知性を解き放つ! AIみたいな人間と人間みたいなAIにあふれる社会への挑戦状。――吉川浩満(文筆家)

*

「考えるな、感じろ」とブルース・リーは言った。
山の向こうにも同じように風景が広がることや、
太平洋でイワシが泳いでいることを信じられる。
今までのこだわりが、突然どうでもよくなる。
計算を間違い、マニュアルを守れず、ふと何かが降りてくる。
それらはすべて知性の賜物である。
生きものの知性である。
今こそ天然知能を解放しよう。
人工知能と対立するのではなく、
意識の向こう側で、想像もつかない「外部」と邂逅するために。

わたしがわたしとして存在するための哲学。

著者について
郡司ペギオ幸夫
1959年生まれ。東北大学理学部卒業。東北大学大学院理学研究博士後期課程修了(理学博士)。早稲田大学理工学術院基幹理工学部表現工学科教授。著書に『時間の正体』『生きていることの科学』『群れは意識をもつ』ほか多数。

「興亡の世界史」のシリーズの文庫化が完了

2019年01月12日 | 新刊書
興亡の世界史 人類はどこへ行くのか (講談社学術文庫) 文庫 – 2019/1/12
福井 憲彦 (著), 杉山 正明 (著), 大塚 柳太郎 (著), 応地 利明 (著), 森本 公誠 (著), & 5 その他


テーマ別の意欲的な世界史として出版されていた「興亡の世界史」のシリーズの文庫化が完了しました。
著者ごとに巻ごとにばらつきはあったようですが、読み応えのあるシリーズでした。
文庫で手軽に読めるようになったのはうれしいですね。
最後に全巻のリストを掲載しておきます。




文庫: 416ページ
出版社: 講談社 (2019/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065144108
ISBN-13: 978-4065144107
発売日: 2019/1/12
Kindle版 ¥ 1,350
文庫 ¥ 1,490


内容紹介
講談社創業100周年記念企画「興亡の世界史」の学術文庫版。「文明」「帝国」の興亡を軸に歴史を読み直し、現在の世界を深く理解する、新視点による「現代人のための世界史」として大好評のシリーズ、いよいよ全21巻が完結する。
人類の誕生と拡散、人口の急増、数々の帝国と文明の興亡、多宗教・多民族の共生と対立。本巻では、シリーズ各巻で取り上げてきた個別の地域・時代を超えて、各界の論者がそれぞれの研究領域から人類の歴史を見直し、現代人が直面する問題に「歴史」はどんなヒントを与えるかを考える。各章の論点と論者は以下の通り。
はじめに:新たな世界史像の必要性……シリーズ編集委員で学習院大名誉教授(西洋史)の福井憲彦氏。
第1章:世界史研究の現状とこれから……シリーズ編集委員で京大名誉教授(モンゴル時代史)の杉山正明氏。
第2章:人口からみた人類史……元国立環境研究所理事長の大塚柳太郎氏。
第3章:「海」からみた人類の移動と定住……地理学者で京大名誉教授の応地利明氏。
第4章:「宗教」は人類に何をもたらしたか……東大寺長老でイスラーム研究者の森本公誠氏。
第5章:人類誕生の地・アフリカの現状……京大教授(アフリカ地域研究)の松田素二氏。
第6章:世界史と日本……京大名誉教授(日本近世史)の朝尾直弘氏。
第7章:鼎談・繁栄の歴史から何を導き出すか……シリーズ編集委員の青柳正規氏(東大名誉教授・前文化庁長官)・陣内秀信氏(法大教授・都市史)に、ロナルド・トビ氏(イリノイ大学名誉教授・日本近世史)をまじえて語りあう。
[原本:『興亡の世界史20 人類はどこへ行くのか』講談社 2009年4月刊]


「興亡の世界史」全巻リスト

森谷公俊『興亡の世界史01 アレクサンドロスの征服と神話』
林俊雄『興亡の世界史02 スキタイと匈奴 遊牧の文明』
栗田伸子・佐藤育子『興亡の世界史03 通商国家カルタゴ』
本村凌二『興亡の世界史04 地中海世界とローマ帝国』
森安孝夫『興亡の世界史05 シルクロードと唐帝国』
小杉泰『興亡の世界史06 イスラーム帝国のジハード』
原聖『興亡の世界史07 ケルトの水脈』
陣内秀信『興亡の世界史08 イタリア海洋都市の精神』
杉山正明『興亡の世界史09 モンゴル帝国と長いその後』
林佳世子『興亡の世界史10 オスマン帝国500年の平和』
石澤良昭『興亡の世界史11 東南アジア 多文明世界の発見』
網野徹哉『興亡の世界史12 インカとスペイン 帝国の交錯』
福井憲彦『興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権』
土肥恒之『興亡の世界史14 ロシア・ロマノフ王朝の大地』
羽田正『興亡の世界史15 東インド会社とアジアの海』
井野瀬久美恵『興亡の世界史16 大英帝国という実験』
平野聡『興亡の世界史17 大清帝国と中華の混迷』
姜尚中、玄武岩『興亡の世界史18 大日本・満州帝国の遺産』
生井英考『興亡の世界史19 空の帝国 アメリカの20世紀』
福井憲彦他『興亡の世界史20 人類はどこへ行くのか』

アクチュアルなテーマを捉えた「暗号通貨の経済学 21世紀の貨幣論 」

2019年01月12日 | 新刊書
暗号通貨の経済学 21世紀の貨幣論 (講談社選書メチエ)
小島 寛之 (著)


ビットコイン・フィーバーは過ぎ去ったようですが
暗号通貨の経済的および社会的な意味と
その技術的な影響力はこれからじわじわと明らかになっていくものと思われます。
現代のアクチュアルなテーマを捉えた書物に拍手!


単行本(ソフトカバー): 192ページ
出版社: 講談社 (2019/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065144957
ISBN-13: 978-4065144954
発売日: 2019/1/12
Kindle版 ¥ 1,458
単行本(ソフトカバー) ¥ 1,620


内容紹介
「お金とは何か」から暗号通貨を捉え直し、ブロックチェーンの可能性をゲーム理論で追究する。
ビットコイン、イーサリアム、リップル……暗号通貨(仮想通貨)はいかにして「お金」になるのか。
技術・経済・社会の大転換期、この革命的な技術が世界をどう変えるのか、総合的に把握するための一冊。
暗号学×経済学=暗号経済学の誕生。
ナンダ、そういうことだったのか!
◎RSA暗号・楕円曲線暗号解説も収録。
*
第1部では、ビットコインを始めとする暗号通貨の基礎となるブロックチェーンの仕組みの要点を、数式など使わずにわかりやすく解説します。
ブロックチェーンという革新的な暗号技術は、世界をどう変えていくのか? オープンソースとプロプライエタリ、中央集権と分散化といったブロックチェーンが提起する哲学的な意味、そして通貨以外でのインパクトについても言及します。

第2部では、「お金とはなにか」を考えます。
価格の乱高下やセキュリティ問題など、いまだ暗号通貨を疑問視する声も強いのが現状ですが、これまで経済学が培ってきた貨幣理論を参照しながら、暗号通貨はいかにして「お金」たり得るのかを見ていきます。価格が安定する時とはすなわち、暗号通貨が「お金」になる時といえるでしょう。お金とはなにかという見識は、投資にも役立つかもしれません。

第3部は、ゲーム理論でブロックチェーンを検討します。
人間の行動は不合理すぎ、理論通りにいかないことが指摘されるゲーム理論ですが、アルゴリズムであるブロックチェーンの世界では、理論のままに均衡が実現されることになります。「囚人のジレンマ」などのゲーム理論をざっくりとおさらいしつつ、新しい世界を垣間見る章です。

補章として、公開鍵暗号とハッシュ関数の原理について、本文では簡略化した詳細部分を解説します。「そういうことだったのか!」と膝を打つこと間違いなし。数理暗号として、有名なRSA暗号と楕円曲線暗号の両方に言及しています。
著者について
小島 寛之
小島寛之(こじま・ひろゆき)
1958年東京都生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。現在、帝京大学経済学部経済学科教授。数学エッセイストとしても活躍し、複雑な数理の世界へのわかりやすい解説に定評がある。
著書に『経済学の思考法』『文系のための数学教室』『数学でつまずくのはなぜか』(いずれも講談社現代新書)、『世界は2乗でできている』(講談社ブルーバックス)、『世界は素数でできている』(角川新書)、『宇沢弘文の数学』(青土社)ほか多数。