万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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0871 山上憶良(?)

2008-05-20 | 巻五 雑歌
大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦(佐用嬪面) 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝黯然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作歌曰

得保都必等 麻通良佐用比米 都麻胡非尓 比例布利之用利 於返流夜麻能奈

遠つ人 松浦佐用姫(まつらさよひめ) 夫恋(つまご)ひに 領巾振りしより 負へる山の名


大伴佐提比古郎子(おほとものさでひこのいらつこ)、特に朝命を被(かがふ)り、使を藩國に奉りぬ。艤棹(ふなよそい)して言(ここ)に帰(ゆ)き、稍蒼波に赴く。妾(をみなめ)・松浦(佐用嬪面)此(こ)の別れることの易(やす)きを嗟(なげ)き、彼の会うことの難きを歎く。即ち、高山の嶺に登りて、遥かに離れ去く船を望み、悵然(うら)みて肝を断ち、暗然(いた)みて魂を銷(け)つ。遂に領巾(ひれ)を脱ぎて麾(ふ)る。傍の者涕(なみだ)を流さずということ莫(な)かりき。因(かれ)、この山に号(なづ)けて領巾麾(ひれふり)の嶺と曰う。乃(すなわ)ち、歌を作りて曰く

「“遠つ人”松浦佐用姫が、(別れた)夫を偲んで、領巾を振った時から、付いた山の名前だ」

●大伴佐提比古郎子:大伴連狭手彦(おおとものむらじさでひこ)