舞栗倉庫

過去ログ

お前が先に閉店か?

2006-08-29 13:49:36 | Cancer
昨日、新宿の病院にお見舞いに行った。

僕より若い友人だけれど、肺から転移したガンが消化器系すべてを壊して、もはや何も食べることも飲むことも出来なくなったていた。痛み止めを打っているので意識はもうろうとしていたけれど、「おぉい、◯◯だよ」と呼びかけて指を握ると、ベッド脇に置いてある椅子を指差して、か細い声で「年寄りなんだから座りなよ」なんて冗談言いやがって、うっすら笑みを浮かべやがった。

額にはかすかに血の気はあるものの、手も顎も蝋人形のようになりやがって、なんでこんなになるまで放っておいたんだ?3年前の検診でガンが解ってたと言うじゃないか。解った時点で治療してたら助かったかもしれないのに。3年前にも2年前にも会った時、自分で知っていながら何も言わずに・・・誰にも言わずに。

一度別れた奥さんが戻って来た時にはもう手遅れだったじゃないか。何やってんだ!段々腹が立って来た。自分の命、粗末にしやがって。




「振り返って考えてみたんだけど、2人でどこかに出掛けたっていう思い出がないのよ」と奥さんに言われた。

彼ら夫婦は同年で結婚したのは20歳の時。以来ヤツは子供達のキャンプだったり運動会の手伝いだったり、スケジュールが空くと今度はボランティアでハンディキャッパーのお手伝いで休みでも家にはいない。ヤツが好きでやっていたことだけど、引っ張り回していたのは僕だったんだ。

僕のサラリーマン時代に一緒にいる時間が一番長かったのはこの友人じゃないだろうか。
先に彼が退社し、僕も退社してしまうと接点がなくなり、噂で彼が離婚して転居したと聞いてからは連絡先も解らずじまいだったのだが、2日前に共通の友人からの電話で危篤だと聞き言葉が出なくなった。




打つ手はないらしい。様態が落ち着いたら自宅に連れて帰る、と奥さんが言う。

明日奥さんはホスピスを運営していらっしゃる方に、自宅での最期の迎え方を聞きに行くと言う。運転手をかねて一緒に聞きに行こうと思う。元気な頃、人一倍世話になったヤツに僕が出来ることをしてやりたい。

ちきしょう、涙が出て来た。