白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

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2011-03-09 | coming soon
この記事は、削除させて頂きます。
申し訳ありません。






























1959年、ジョン・コルトレーンが録音した
「ジャイアント・ステップス」。
わずか16小節の曲の、その前半たった8小節の
コード進行が、ジャズを束縛するビ・バップの方法論を
鮮やかに超えて見せました。
世に言う、「コルトレーン・チェンジ」です。
日本では前田憲男が、この仕組みを始めて解き明かしたそうです。
しかし世の中の理論書のほとんどに載っていません。
需要は多々あるのにもかかわらず。
なので、今日は僕なりの理解を示し、解説しようと思います。
なるべく簡単に。
ただし、最低限の理論知識があることが条件です。それは、

1、コードネームが読め、弾けること。
2、ジャズで使われるスケールの名前とその構成音が
一通りわかること。
3、モードとバップの違いが分かること。
4、最低限、楽譜が読めること。

以上。つまり、ジャズの理論の基礎はきちんと分かって
いることが条件。
もしそれでも不都合なら、おふとんジャズなどのサイトか、
理論書を参考にしながら、これを読み進めてください。
疑問があったり、おかしいと思う人や質問のある人は
またご連絡を。




では、本題。
****************************


ジャイアント・ステップスのコード進行を示します。
この曲は、モードと言われることがあるのですが
それは間違いです。
この曲は、ビ・バップの方法論を究極まで推し進めた
臨界形です。
調性、キーは変ホ長調、E♭major。
コード進行は。以下のとおり。


B  D / G  B♭  / E♭  / Am  D7
G  B♭/ E♭ G♭  / B   / Fm  B♭7
E♭   / Am7 D7 / G   / D♭7 G♭7
B    / Fm7 B♭7/ E♭  / E♭



ここでは一行目、冒頭の3小節のみ例示します。


『 B  D / G  B♭  / E♭ 』 

全て安定したコードで表示されていますが、わかりやすく、
ビ・バップの方法に基づいて、これをセブンスのコードに
書き換えて、ドミナント進行へと表示しなおしてみましょう。



『 B7 D7/ G7 B♭7 /E♭7 』

ピアノがある人は弾いてみてください。
元のコードと、それほど違和感は無いはずです。
この曲がビバップの延長にあることの証拠です。
ここで、D7と、G7を省略して書き表すと、


『 B7   /    B♭7 /E♭7 』

となります。
見覚えがありませんか?
一小節目の B7 の裏コードは F7ですよね。
つまり簡略化すれば、この3小節は、一小節目に置かれるべき
本来のF7の代わりに、代理コード B7が置かれている、
E♭に向かう単純な通常の2-5-1進行、
サブドミナント~ドミナント~トニックの進行として、
F7-B♭7-E♭7、という基本形に
単純化できるんです。


***************************

では、省略した D7-G7 の部分はどう説明するのか、
ということになります。
ここで、適当な楽譜があれば、それを見てみてください。
普通、譜面を見ると、曲の調性は、♭や#の数、その位置で
表されます。
そして、楽譜の上で♭や♯の置かれた位置が全く同じ場合に
調性が2つ存在しているのを知っていますよね?
同じ鍵盤の押さえ方で、2つの調性を弾くことができるのを。
平均律には24の調性がありますから、その対応関係は
次のように成ります。
全音階(ホールトーン)上に沿って記しました、これを
覚えて置いてください。


ハ長調=イ短調       ハ短調=変ホ長調…♭系 
(C major=A minor) (C minor=E♭major)
ニ長調=ロ短調  …♯系  ニ短調=ヘ長調 …♭系
(D major=B minor) (D minor=F major)
ホ長調=嬰ハ短調 …♯系  ホ短調=ト長調 …♯系
(E major=C#minor) (E minor=G major) 
変ト長調=変ホ短調…♭系  嬰ヘ短調(変ト短調)=イ長調…♯系 
(G♭major=E♭minor) (F#minor=A major)
変イ長調=ヘ短調 …♭系  嬰ト短調(変イ短調)=ロ長調…♯系
(A♭major=F minor) (G#minor=Bmajor)
変ロ長調=ト短調 …♭系  変ロ短調=変ニ長調…♭系 
(B♭major=G minor) (B♭minor=D♭major)


これらの関係を、「平行調」といいます。
これら二つの調性は、極めて近い関係にあります。
それは、この二つの調の構成音が同じだからです
ハ長調のドレミファソラシドのラから弾いていけば
イ短調でドレミファソラシドになるように。
その関係は、2-5-1進行よりもはるかに強いものです。
例えば、ベートーベンやモーツァルトの交響曲において、
第一主題がハ短調ならば、第二主題は必ず変ホ長調で、
第一主題がト短調ならば、第二主題は必ず変ロ長調で
現れます。
(ロマン派以降、ブラームスの時代にはこの法則は
 敗れてしまっていますが)
そう、ある1つの長調と、音程にしてその短三度下から始まる
短調は、その#や♭の数が全く同じ、近接調の関係に
あるということです。



では、ジャイアントステップスに戻ります。
もう一度、冒頭3小節のコード進行を示しましょうか。

『 B  D / G  B♭  / E♭ 』 



このうち、B―B♭―E♭の関係は
通常の2-5-1進行で解釈できるという話はしました。
このとき、省略してあった D-Gの進行について
さきほどの「平行調」の関係に照らして考えて見ます
同じように、セブンスになおして、
『 D7 / G7』と表します。



最終的に、この進行はE♭に解決するのですが、
E♭major と平行調の関係にあるのは、さきほどの表に
照らすと、Cminorですね。
何かに気付きませんか?
Cをトニックとして、ここに2-5-1進行を
当てはめると、
2となるのはD7、5となるのはG7。



もうおわかりですね。
ジャイアントステップスの冒頭3小節には、
主調、E♭major に向かう
『 B7(Fm7) ~ B♭7 ~E♭  』
というドミナント進行に、
E♭majorの平行調であり、極めて近接的関係にある
C minor へ向かう、
『 D  ~  G  ~ Cm  』
というドミナント進行が挿入されているのです。
或いは、溶け込んでいる、といってもいいかもしれません


平たく言えば、変ホ長調の中を、ハ短調が密かに流れている。
E♭majorとCminorが同時に存在しているという、
つまり、大きな意味で言う「複調」が見て取れるわけです。
これが僕なりのコルトレーンチェンジの解釈です。
こうした説明で、5~7小節目の
『 G  B♭ /E♭  G♭/ B』も
説明できます。
移調しただけですから。


なお、3~5小節目の E♭― Am―D7―Gの進行は
E♭とAmが裏コード(調性代理)の関係にあることを
見抜ければ、通常の2-5-1進行で説明できますし、
後半8小節は、この関係で全て説明できます。




1957年の「モーメンツ・ノーティス」に登場する
『Em  A7/ Fm7 B♭7 /E♭』は、
一小節目のEmが、B♭と調性代理の関係にあることを
見抜ければ、
一小節目が本来、二小節目でDに解決すべきものを、
EmをB♭の代理コードとして取り扱うことで無視し、
三小節目のE♭に解決するドミナント進行に直接
連結するという荒業であることが見抜けます。
これに比べれば、「ジャイアント・ステップス」に
見られる進行はそれよりはるかに理論的根拠も強く
しっかりしているということです。


下に続く。

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