白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

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2011-03-09 | coming soon
この記事は、削除させて頂きます。
申し訳ありません。






























さて、僕は調性が同時にあるといいました。
どういうことか。


ここで、バルトークの中心軸システムについてみてみます。
コルトレーンチェンジを、ぼくは平行調の関係で説明しましたが
これを補強するのが、バルトークの作曲法なのです。





これがバルトークの中心軸システムです。
1オクターブ、12音を、円周を12等分した上に表して
います。
一つの音から、円の中心を通る線を引き、ぶつかる先を
観てみましょう。
ここでは、Cのキーで考えています。


Cに対応するのはG♭。
Eに対応するのはB♭。
音程にして減五度の差があります。
お気づきですか?
Cの代理コードはG♭、Eの代理コードはB♭。
つまりこの図は、線で結ばれているコードはそれぞれ
同じ役目を果たすということになります。
バルトークは、サブドミナント、ドミナント、トニック、
いわゆる2-5-1のような曲進行を構成する要素ごとに
12音を分類したのです。
バルトークによると、Cのキーでは、コードは、


トニック   :ド(C)、ミ♭(E♭)、ソ♭(G♭)、ラ(A)
ドミナント  :レ♭(D♭)、ミ(E)、ソ(G)、シ♭(B♭)
サブドミナント:レ(D)、ファ(F)、ラ♭(A♭)シ(B)


というような、それぞれの属性に分類されます。
各属性の音を一度に鳴らしてみてください。
ディミニッシュコードが響きますから。
これを、短三度圏といいます。

ここにおいて、
サブドミナント~ドミナント~トニックの順序を守って、
それぞれの属性に忠実なコードを並べるならば、Cのキーでは
上記の表から自由にコード進行を作れるわけです。
例えば、
「A♭ ― B ― E ― G ― C」

というように。
これを、短三度上のトニック、E♭に転調すれば、
「B ― D ― G ― B♭ ― E♭」。
ジャイアント・ステップスの冒頭の進行ですよね。
これをディミニッシュ進行といいます。
ディミニッシュの関係にある音は、機能としてそれぞれは
同じ性格を持っている、ということなんですね。
つまり、この関係上、
各トニックは、同じ和声進行上で並立できるんです。
キーがCならば、E♭を念頭に置いたドミナント進行を
考えることもできるということ。
これが、調性が二つ存在できるということです。
この考え方は、ミヨーに継承され、デイブ・ブルーベックや
アストル・ピアソラに受け継がれている。


で、このサブドミナント・ドミナント・トニックの組み合わせが
ちょうど長三度ずつ離れているのがいわゆる
コルトレーンチェンジって奴です。おわかりかな。
しかも、転調していけば、ドミナント進行の組み合わせは
無限に増えます。
転調し続ければ、永遠に解決できない。
ここから、モード和音が生まれます。


上の表から、
サブドミナント属、ドミナント族、トニック族から
三つの音を取り出して見ましょう。
Cのキーで、コード進行の要素となる3種類の音を
同時に鳴らしてみるのです。
つまり、コード進行の否定に働くコードですね。
綺麗に響くように、各音同士の度数の差を、完全に同じに
してみましょう。
ルート、基音をド(C)とします。
すると、選び方は、

1 ド(C)・レ♭(D♭)・レ(D)  …音程差 減二度ずつ
  半音のぶつかり合い。クラスター。

2 ド(C)・ミ(E)・ラ♭(A♭)  …音程差 長三度ずつ
  ホールトーン。オーギュメントコード。

3 ド(C)・ファ(F)・シ♭(B♭) …音程差 完全四度ずつ
  サスフォー。

となります。
モード曲で多用されるコードですね。
つまり、モードで使われるコードは、それ自体の中に
2-5-1進行などで使われる音の要素を一度に
含んでしまっている、ということです。
コルトレーンのモードは、こういう背景から出ています。
コード一発ものを4度重ねの和音で演奏するのは、
一つの和音に、トニック、ドミナント、サブドミナントの
要素が、そこに全て入っているからなんです。


Cドリアンのキー一発ものなら、
Cのサスフォー、Dのサスフォー、Fのサスフォー、
Gのサスフォー、Aのサスフォーをメインに、
E♭のサスフォー、B♭のサスフォー、G♭#5あたりを
交代しながら弾けばそれなりにサウンドします。
まあ、理論は後付け、いざという時の助け。
アドリブには、歌いたいものや聴きたいものが
自分の中にあって、それを表す才能が有ることが
一番大切なのは言うまでもない。


そして、バルトークのモード旋法は略述にとどめますが、
自然倍音列や
フィボナッチ数列(初項1、第2項2、第3項以降のN項は
N-2項とN-1項の和となる)、
黄金分割に基づいて、
リディアン♭7th、コンビネーション・オブ・ディミニッシュの
場合が多くあります。


こうした自然倍音を基にした旋法の考えは
印象派が多用したグレゴリアンモードとあいまって
メシアンが大成します。
ちなみにオルタードスケールのようなスケールは、
ホールトーンと、コンビネーションオブディミニッシュの組み合わせから人工的につくられたもの。


マイルス・デイヴィス=ギル・エヴァンスのモードは
3度圏のグレゴリアンモードです。
「ソー・ホワット」の構成和音を、中心軸システムで表すと、
主となる音から、長2度離れた位置の音の欠落が見て取れます。
同時に、ルートであるDをセブンス化するCに、大きく
音の引力がかかっています。
(図参照)





つまりマイルス=ギルが提唱したグレゴリアンモードは、
サブドミナントの欠落と、ドミナントへの強い音の志向によって
支えられていました。
つまり、特定の和声進行からは脱却できていない
不完全なモードだったのですが、
これをコルトレーンはサスフォーの創出により、
「ソー・ホワット」と同じ進行を用いた
「インプレッションズ」において、サブドミナントも包含する
完全なモードを実現して見せた、というわけです。



こうしたモードは、
オーギュメントを基調としたウェイン・ショーター、
サスフォーを基調としたチック・コリアによって
磨かれていきます。
ちなみに、中心軸システムでオーギュメントを表すと、
ユダヤの紋章が浮かび上がり重なっています。




呪術性を求める演奏家がオーギュメントを多用するのも
何かそれと因縁めいたものにみえますね。


サックスやトランペットにおいては、今もモードの主流は
これらの延長上にありますが、
ピアノは少し異っていて、
ここに、レニー・トリスターノの、
シェーンベルクの12音音楽とバッハの対位法、
多調概念をビバップの方法に当てはめたクール・スタイルが
加わり、
上に記した、ミヨーやメシアンの方法論、
スクリャービンの無調などのクラシックの理論の導入が
ビバップ、モードの更なる進化を促して、
クラスターやアッパー・ストラクチャー・トライアドの導入で
キース・ジャレットやリッチー・バイラークにより
現代音楽と同域にまで達しました。
それは、オーネットのハーモロディック理論の要素や
ジョン・ルイスの理論、セシル・テイラーの奏法も
既に包含しています。


おそらくはモンク、ドルフィーのキュービズムが
唯一これに対抗可能な、ジャズの独創でしょう。


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最後に、僕の作ったリハーモナイズを示しておきます。
適宜、仕組みを考えてみてください。
4年前の山野の僕のソロです。



《原型》

Am7-5 /D7    /Gm    /Gm
Gm7-5 /C7    /F     


《リハーモナイズ》

Am7-5 / D7    /Gm   /A♭m7 D♭7
Am7(on D) D7(♭13) /E♭(#11) E(#11)  / F



どうも長々と失礼しました。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
どうぞご参考ください。
それでは。




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