舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

落照の獄

2009-09-29 18:42:16 | ぼくはこんな本を読んできた
ヨムヨムで発表された小野不由美さんの人気シリーズ「十二国記」最新作『落照の獄』は、なんと予想を痛快に裏切り、初登場の国「柳」の話でした!!

十二国記という名称通り、このシリーズの舞台となっている世界には12の国があるのですが、そのすべてが描かれている訳ではありません。
登場人物達の話題に上ることはあっても、直接語られたことはなく、王や麒麟の名すらわからない国も僅かにあります。
そんな国の一つが、今回描かれた柳だったのです。

描かれた事はないと言っても、柳は幾度となく間接的に片鱗を覗かせていました。
一つは、長く続いた法治国家として。もう一つは、今や傾国の兆しを見せている国として。
その不気味な様子は、最新の(現時点で最後の)短編集でも触れられています。

今回の短編では、そんな柳の傾国の象徴とも言うべき事件が、法曹界に身を置く主人公の視点から語られます。

柳は、賢帝の下で百年以上にわたって繁栄を維持してきました(以前も触れたように、この世界では善政を敷いていれば王様は何百年でも生き続けられます)。
その根幹となっていたのが良く整備された法制度です。特に死刑は名目のみで実際には適用しないと王によって定められており、良い治安を保ってきました。

ところが、これまでに類を見ない凶悪殺人犯が出現。あまりの悪逆非道に、民は死罪でなければ納得できぬと叫び始めました。
確かにこの罪人は万死に値するほどの男です。しかし、死罪を持ち出せば長年の慣習を破る事になり、そうすれば今後も死罪の濫用が起こるのではないか…? 主人公や周囲の人々は深く苦悩します。

そして、彼らの苦悩をさらに深めているのは、他ならぬ王の態度です。
名君だったはずの王が、この罪人に対しては丸投げとしか思えないような見解しか示さない。のみならず、政全般に対して、もはや王はまともに対応する気がないのでは…?

どうやら、柳を徐々に蝕みつつある荒廃は、王に原因があるとしか思えません。
しかし物語では王自身の登場は一切なし。我々読者も、主人公達と同じように不安を抱かずにはいられません。
王のような傑物でもないのに出しゃばろうとする公子ばかりが目につき、余計不安を煽ります。

おそらく、今回の物語は序章に過ぎず、これから柳全体の様子も王の人物像も明らかにされてゆくと思われます。

小野不由美様、じらすじらす~~!!
あんまり勿体ぶらないで、数年ぶりの文庫新作を出して頂きたいと、無責任なファンとしては願ってしまいますわ。

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