
「しばらく」と声をかけても、しょんぼりうつむいて黙っている。意外と無愛想だ。見とれるほどには気を引かない。
これといって美点をあげるでもなく、冴えない口ぶりでの花定めの杉本秀太郎さん。好印象の花ではないようだけれど、「ほたるぶくろ」という呼び名に、ずいぶん得をしていると言われる。
ほんのいっときにせよ、「人を詩人に変える魔法がほたるぶくろという呼び名にはひそんでいる」と。
江戸時代、この花は提灯花と呼ばれていた。あるいは釣鐘草の呼び名もあった。そして「ほたるぶくろ」と呼び出す人がいた。
呼び名はこじつけであったり、目の付け所の面白さからであったりしても、古くから親しまれてきた花のようだ。
亡き母と蛍袋の中で会ふ
三十七回忌終へし野辺にて
これは地元紙の歌壇「実作教室」の欄で、ある投稿者の歌を選者のお一人が添削歌として示されたもので、それを控えていた。
10年を超えて私が温めているのもおかしいようだが、ここには自分の内なる思いを見いだすことができる。
ちょうど時を同じくして、「花は異界への通路」という言葉に出会っていたことも、思いを強くした。
亡き弟を偲ぶよすがの一つだったアサガオの花とともに。
袋の中に入り込んで、亡き人へとつながる道を進んでみたいと思うとき、「花は異界への通路」が心にリフレインしてくる。
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