京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

それでも一人で

2022年05月08日 | 日々の暮らしの中で

天気に恵まれて、長い長い黄金週間も終わる。
遠出といっては湖東三山のうちの二山を巡ったくらいで、近場で人混みを避けて過ごした。

離れて暮らす子供たちから母の日の心遣いを受け取り、感謝感謝。

「私はだんだん生活を簡素にしてゆきたい、そうして年をとったら、鴨長明みたいに方丈の庵に住みたい。などという希望を抱いているのであるが、それでも庭には、枝もたわわに咲く青紫色の紫陽花を植えたい、と思う」  (と田辺聖子さん)
「あんまり細かく気を使ったり、心を労したりしないで、のんびりいく…。」できれば私もそうありたい。

中古書店の100円のコーナーで見つけたので、迷わず手に入れた『方丈の孤月』(梓澤要)。―下鴨神社神職の家に生まれながらも、不運と挫折の連続。人はどこからきてどこへ行くのか。生きる意味を見つめ続けた長明の不器用で懸命な生涯。また一冊、積み上がりました。

その帰りの電車に乗り込んで座ると、杖をつき、腰を大きくかがめた男性が左手には紙袋を下げて乗り込もうとしているのに気づいた。けれど乗ろうとするでもなく間があって、ようやくまず半分ホーム側に飛び出した状態で扉の所に紙袋を置いて、それからやっとこ1,2歩進んで手だけ伸ばして入り口の手すりをもって…。
これは大変!と腰を上げ、「お持ちしますね」と声をかけてから紙袋を持って、肘だったか腕だったかを支えるようにして中へ、そして空いている席へ。紙袋の重かったこと。扉は閉まることはなかったが、身体がすぐ次の動作に移せないのに違いない。そんな状態で一人で外出しなければならない…。

一駅で降りる私に「おおきに」と口にされたが、私が足元付近に置いたあの紙袋、忘れずに無事に降りられただろうか。「お気をつけて」じゃなくて「忘れないでくださいね」というべきだったのかも。

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