京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 「色」にいでにけり… 

2009年08月23日 | 日々の暮らしの中で
      

虫が鳴き、夜空に月が浮かぶと、それは恋の始まりの予感。
秋の七草が咲き乱れ、虫が集き、夜空に月が輝けば―、登場するのは光源氏と決まっていたとか。そして彼を待つ女君の設定。
今年も赤い実をつけたこの梶の木の葉にも、平安人は和歌を書いて笹の枝に吊るしたりしたという。彼らが好んだ初秋の風景のようだ。

ゆく夏を惜しむよりも秋への移り変わりを心待ちにする今。折しも今日は処処。暑さが止まる(「処」)の意。残暑はぶり返すだろうけれど。
風がやむと凪。夕凪、無風で蒸し暑いようだ。「色」なら何色なのだろう。西日を浴びたオレンジ色からやがて日が落ちていき…。

季節にも「色」がある。中国の五行説でいくと、秋は白。秋風は「色なき風」となるようだ。
吹きくれば身にもしみける秋風を
        色なき物と思ひけるかな      紀 友則

秋風によって人情味や生活感まで脱色されてしまっては、まさに色も艶もない。

また、言葉には「色」があると読んだことがある。ならばせめて言葉をカラフルに紡げればいいのだが、それすら高のぞみ。
そういえば昔、私は名前を入れて「♪○○の高嶺に降る雪も~」なんて歌われたことがあった。高慢ちきだったかな?
白い雪…。白は「すべての光線を反射することによって見える色」とある。なににも混じらず、受けつけず高嶺の花か。まあ、所詮色にも艶にも縁遠いのかもしれないが。寂しい秋となりそうだ。

今夜の肌寒ささえ感じるこの涼しさは、さしずめ製氷菓子のソーダの色。

何だかわからぬ思考回路は、腰痛の後遺症としておこう。涼しいことがわかる。虫の音も聞こえる。マヒしているのは思考力だけかもしれない。

                  (写真:梶の木)
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8 コメント

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なんのなんの… (yattaro-)
2009-08-24 11:24:50
マヒなどしていませんよ、思考回路。益々健在です。

季節・色・言葉・艶……いつもカラフルに仕上がってお見事。
思いの丈を透明なオブラードでくるみ、傷つけず押し戻したり受け入れたり…さすがだなーと感心しきり。

「♪○○の高嶺に降る雪も~」まさに往時を、いや今もきっとその延長線上なのでしょう。
「さもありなん…」高嶺の雪・高嶺の花。いつも見上げるその他大勢の役回り。
やがて溶けて流れて見失ったり、トンビにサラッと持って行かれたり…。

季節の変わり目に、チラッと見え隠れ。お察し致します。
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錦織りなす・・,yattaro-さん (kei)
2009-08-25 00:01:03
なにがどー「さすが」なのか、ようわかりません。

「花の色は移りに…」というとちょっと、いかにもリアル過ぎ…、
かといって、「まだまだ」なんて言っては不似合だし?
と言いつつも、やはりいつまでもとしがみつき?
複雑ですね。要は今を受け入れること。

…なんて言っていながら、実際は格別どーというこだわりもなく淡々としています。

「解けて流れりゃ…」
先日NHKでききましたこの歌、父が好きでした。
「トンビにサラッと持って行かれた」思い出が?・・そうですかあ(笑)

錦の「秋色」にしていきましょう
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秋の世は... (ののはな)
2009-08-25 00:08:18
流石ですね...
こうして季節の移りゆく様を色に例えたりするってたのしいですね。言葉もおろそかにはできませんね。こちらはいま、エンマコオロギが秋の夜を歌い上げております。
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処暑を過ぎて・・・ (Rei)
2009-08-25 09:48:31
漸く涼風が吹き始めました。

風にも色がある?この細やかな感性は私にはないようです。
昔「中国的顔色」を学習したことがあり、五行思想から来ていると教えられたこと思い出しました。

顔色は色、色彩の中国語ですが、
何故顔色なのかは知りません。

中国と言えば「赤」が思い浮かびます。

群青色はそのままありますが、
日本のようにわび、さびを感じるような
色彩表現はないような気がします。
美意識の違いでしょうか?

五行思想では青は春の色、青春はここに由来する
言葉のようです。

カラー占いによれば私は緑色、
スピリチュアルなことにとても興味を持っている人、
だそうです、果たして?・・・
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秋の夜を・・,ののはなさん (kei)
2009-08-25 15:33:13
煌々とつく明かりもない時代を想像してしまいます。花々や草の陰から賑やかに、降るように鳴く虫の音、秋をどれほど楽しんだことかと思います。
「もの思う秋」という表現も、現代以上に寂しさを募らせて感じてしまいます。

秋はいいですね。短いので余計に移ろいを惜しむのでしょうか。
家の中でコウロギが鳴いていたりすることがあります。
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 (rabbit125cc)
2009-08-25 15:37:54
何にも染まっていない色。
全てを反射し発色する色。
天使の色。

私の色は何色だろう?
黒?かな?

何にも染まらない色。
全てを吸収し発色しない色。
悪魔の色。

思考の海の中、子供達は何色に輝くのでしょうね。
染みや汚れはあるけれど、まだまだ白い子供達。
真っ白なままじゃ生きていけない。
でも、出来るだけ汚れて欲しくない。

私は何色なのか、もう一度よく考えてみます。
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なるほど緑…、Reiさん (kei)
2009-08-25 16:04:19
秋風を素風(そふう)というと。
そこから「色なき風」と歌ったようです。

「顔料」という語もありますね。「色にいでにけり」、これは簡単にいえば「顔に出る」ということですよね。
いろいろ想像しますが

漢語から入っている部分は大ですからね。
日本(古典)文学を学ぶには中国の文学や文化を学べと…。
興味を満たす範囲でいいのですが、系統立てて広く知りたいと思っています。でもその機会には恵まれずです。
漢詩の世界から入る方法はありますが、どの程度範囲を広げてくれるのかわからずためらっています。
広く浅くでいいのです。
もうちょっと知りたいという好奇心だけですが。

こうして考えだしますと、火がつくまでにはいかずともうずうずし出します(笑)

いろいろ教えていただきたいです。
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組み合わさって… rabbit125ccさん (kei)
2009-08-25 16:24:10
「染まらない」
主体性を感じるものの・・・

何色なのでしょう。未来のことはわかりませんが、その子の色で輝くのでしょうね。
違う色と混じることで第3の色がでることもあるのでしょう?
補色の取り合わせが引き立つ結果になったり?

たくさんの色の世界で遊びながらその子の色が出ればいいですね。
なんて…

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