京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

初雛のまま

2023年02月12日 | 日々の暮らしの中で
飾り台を組むのに手間取ってしまったが、真っ赤な毛氈で覆うと仏間は華やかな座敷に一変し、やれやれの思いだった。
雛のハレの日だから、この時季だけは仏さまには後方から見守っていただくことになる。



桐の箱から一体ごと取り出して、顔を包んでおいた薄紙をはずす。一番わくわくするのが、この瞬間だろうか。

   箱を出て初雛のまゝ照りたまふ  

(きれいなお顔ですねぇ。またお会いしましたね)
年に一度、渡辺水巴の句が口にのぼる。



“京都式”は男雛が向かって右とは承知の上で、両親が孫の初節句にと贈ってくれた吉徳さんの飾り方に倣ってこれまできた。
桃の花を飾り、雛あられを供えよう。雪洞に明かりを灯して。

飾りつけの進み具合を確かめるように何度も姿を見せ、「きれいやなあ。きれいやなあ」と口にしていた義母の声もない。
遠く離れて暮らす娘と孫娘Jessieの幸せを願って、三月三日は華やかに彩ったばら寿司をそえましょかね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする