京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 春寒

2015年02月15日 | 日々の暮らしの中で


『京に着ける夕』という夏目漱石の随筆があります。
「汽車は流星の疾(はや)きに、二百里の春を貫いて、行く我を七条のプラットホームの上に振り落とす。」と始まります。「たださえ京は淋しい所である。原に真葛、川に加茂、山に比叡(ひえ)と愛宕と鞍馬、ことごとく昔のままの原と川と山である。」

明治40年のこの日、漱石は下鴨神社の糺の森にあった友人宅を訪ねるのです。駅からの道の「車に寒く」、「歯の根が合わぬくらい」の「湯に寒く」、「果ては布団まで寒かった」「余は幾重ともなく寒いものに取り囲まれて」―― 春寒の社頭に鶴を夢みけり と一句が。
いかにいかに寒い思いをしたか。これでもかと漱石センセイを襲う京の夕べの寒さ。カラスの鳴き声にまでも思いは及ぶその描写に、何度読んでもついくすくす…。

京都マラソン開催に合わせ、園内が無料で開放されるとあって植物園へ。すでにランナーは駆け抜けたあとで歩くにはもってこいでしたが、風は吹き抜け気温も低く、手はかじかむしで寒かったこと。
サザンカにたくさんのメジロが蜜を吸いにやって来るのが、驚くほど目の前で見られるもので、ついカメラを取り出しました。これが限度。とは言え、思ったよりは姿が捉えられていてマンゾク、ちょいと気分をよくして夕飯の支度にかかります。

コメント (6)
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