雲ひとつ呼びとめ韋駄天神の旅 田中水桜
俳人協会の俳句カレンダー11月の冒頭の句がこの句。
旧暦10月は全国の神様が出雲に集まる月。
神様たちは雲に乗って出雲へ行かれるのだろうか。
峰の神旅立ちたまふ雲ならむ 水原秋櫻子
神集ふ乗り捨てましと雲泊る 高田蝶衣
従って、出雲では乗り捨てられた雲が見受けられるのであろう。
出雲までの神の道中は順調なのだろうか。
出雲路や荒ぶる神の草枕 松瀬青々
神々は出雲で「縁結び」についての会議を開くといわれているが、その状況や如何。
神集ひ神は出雲の地酒召す 中原冴女
出雲以外の国では神の留守。神の留守の間は嫁取りや歌舞音曲は禁じられているそうだが、さてどうなっているのだろうか。
なら山の神の御留守に鹿の恋 一茶
旅立ちて神はおはさぬ神馬かな 富安風生
神の留守縁談一つ握りをり 文挾夫佐恵
出雲の会議が終わると神々は各国へお帰りになり、各地ではご帰還の歓迎の儀が執り行われる。
巫女の髪水引を懸け神迎 安西閑山寺
神の旅の句を作ろうとすれば、神様は人の目には見えないので、想像を逞しくして神の世界を垣間見なければならない。
快晴といへど雲あり神送り 仙游