水仙のこぼれ話

         風に揺れる水仙の花から時折余談が零れ落ちてくる

小春

2014-11-26 | 季語の思い
困った時の「風頼み」というのがある。上五の季語がいいのがないかなと探して、
「秋風や」とか「青葉風」とかをついつい使ってしまう。
冬に入ると「小春頼み」が始まってしまう。自分が納得していればまあいいか。
ただ、その「頼み言葉」の他には自分特有の表現を入れておかないと陳腐な句になってしまう。

行動表行先欄に「小春空」

正面に富士を据えたる小春坂

煙突に煙小春の富士に雲

小春空駿河の雲は低く浮く

あり余る海の高さや小春坂



神の旅

2014-11-04 | 季語の思い


     雲ひとつ呼びとめ韋駄天神の旅   田中水桜

俳人協会の俳句カレンダー11月の冒頭の句がこの句。
旧暦10月は全国の神様が出雲に集まる月。
神様たちは雲に乗って出雲へ行かれるのだろうか。

     峰の神旅立ちたまふ雲ならむ   水原秋櫻子

     神集ふ乗り捨てましと雲泊る   高田蝶衣

従って、出雲では乗り捨てられた雲が見受けられるのであろう。
出雲までの神の道中は順調なのだろうか。

     出雲路や荒ぶる神の草枕   松瀬青々

神々は出雲で「縁結び」についての会議を開くといわれているが、その状況や如何。

     神集ひ神は出雲の地酒召す   中原冴女

出雲以外の国では神の留守。神の留守の間は嫁取りや歌舞音曲は禁じられているそうだが、さてどうなっているのだろうか。

     なら山の神の御留守に鹿の恋   一茶

     旅立ちて神はおはさぬ神馬かな   富安風生

     神の留守縁談一つ握りをり   文挾夫佐恵


出雲の会議が終わると神々は各国へお帰りになり、各地ではご帰還の歓迎の儀が執り行われる。

     巫女の髪水引を懸け神迎   安西閑山寺

神の旅の句を作ろうとすれば、神様は人の目には見えないので、想像を逞しくして神の世界を垣間見なければならない。

     快晴といへど雲あり神送り   仙游
   

木枯

2014-11-02 | 季語の思い
     凩の果てはありけり海の音   言水

「凩の言水」とよばれた池西言水(芭蕉同時期の俳人)の代表句。
言水は全国を漂泊していたようで、凩と自身とを重ね合わせていたのではないか。


     海に出て木枯帰るところなし   山口誓子

誓子の代表作となったこの句は言水の句を踏まえてできたものと解されている。
「帰るところなし」は寂しさを感じる多くの人々の共鳴するところ。


     木がらしや目刺にのこる海の色   芥川龍之介

木枯を好んでいたといわれる龍之介のこの句も「凩の言水」の句に影響を受けているものと言われている。
木枯を好む人は目刺を好むのであろう。今度目刺を食う時はどこが海の色かと考えながら食ってみることにしよう。


     凩や海に夕日を吹き落す   夏目漱石

木の葉を落とすのに飽きたらず、海に出て夕日を吹き落すとは力強い凩だ。

     凩や海に対ひて振向かず   仙游

テレビの天気予報で気象予報士が「「山粧ふ」は「木枯し」が吹いて「山眠る」になる。」と説明していた。
単純化してとても分かりやすい解説だと感心した。