ウツウツ記

毎日の生活で感じたことを書いています。

「私の中のあなた」

2009-10-28 17:02:39 | 映画
「私の中のあなた」を見てきました。
白血病になった姉を救うことを目的に
遺伝子操作をおこなってまで生まれた妹が
ある日、これ以上姉を助けるために自分に医療行為を行なわないように
両親を訴えるという内容の映画。
(ネタバレがあります)

幼い姉が、ある日白血病と診断されます。
治療法を聞かれた医師はオフレコの話として
ドナーとなる兄弟を産む方法がある、と言います。
一瞬戸惑いを見せた父親に対して、
「産みます」と即答する母親の姿が印象的です。
父親は医師の話から、多分色々なことを想像したのだと思いますが
母親は娘が助かる、というその一点しか聞こえなかったのでしょう。
それは一見決断力があるようにも見えるけれど
とても一瞬で判断のつくような話しではないことを即決
(しかも父親の思いも聞かずに)してしまう愚かさも見えます。
とにもかくにも、そうして妹が生まれます。
誕生の瞬間から、臍帯血移植で姉の危機を救います。
何度も何度も。
幼いときは、看護師二人に押さえつけられながら注射をされる。
そうして11歳になった今度は、重い腎臓病も患う姉のために
腎臓移植のドナーになるように言われます。
私の人生って何?私は健康に生きる権利はないの?
妹はわずかなお金を持って、弁護士のもとを尋ねます。
当然、訴えられた両親、特に母親は妹に詰め寄ります。
あなたは姉を救いたくはないの?
こうして裁判が始まります。

姉はベッドでアルバムを見ながら、回想します。
自分が髪の抜けた姿を恥ずかしがったとき、
一緒に頭をスキンヘッドにしてしまう母親の姿。
初めての恋。キスした夜、妹にそれを打ち明けたこと。
自分は家族から沢山のものを奪ってしまったと思います。
父親からは妻を。
弟、妹からは両親を。
母親からは仕事も夫との楽しい時間も。
自分は病気に負けたけれど、家族は病気に負けないでほしいと願います。

実はこの裁判には、隠れた理由があります。
妹が起こしたものではなかったのです。
幼いころから病と闘い続けた(続かされた)姉が
もう自分を自由にしてほしくて起こしたものだったのです。
母親は、ずっと自分が病気であることを受け入れられなかった。
いつも必死になって、自分を救う努力をしてくれる。
いつも、自分が一番になってしまって
他の家族から多くのものを奪ってしまっている。
けれど、母親にはその思いはわかってもらえない。
だから、母親にもそれを受け入れてもらいたくて裁判を起こしたのでした。

母親の気持ちは、本当によくわかります。
私だって、駆けずり回ると思います。
助かる手段があって、材料(適当な語彙とは思いませんが)が無いのならば
何をしても手に入れる、
それが当然と、むしろどうして周囲の人はそれをしないの?と疑問に思うくらい
そんな気持ちなのです。
死なせたくない。
その一点にしか気持ちがない。
でも、娘の方が、子ども達の方がずっと人間として豊かだった。
愛ゆえに暴走してきた母親が、
もういいよ、と優しく娘に受け入れられるのです。

余命わずかな姉と一緒に家族でビーチに行くシーンがあります。
衰えた姉が毛布に包まり一人、波をみつめる後ろ姿。
これから彼女が進む場所は、どんな所なのか誰にもわからない。
でも、たった一人でそこに歩いて行かなければならない。
怖くないはずがありません。
でも、一人で行くしかない。
誰だって、そう決まっているのだから。
怖い。怖いけれど、私の心の中には家族みんながいる。
みんなの中にも私がいる。
そんな想いだけが、もしかしたら一緒に旅をしてくれるのかもしれない。
そんなことを思いました。

死ぬこと。生きること。
医療手段のこと。
様々なことを考えました。
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