「ジェネレーションギャップ」とは「世代による文化や価値観、考え方などの違い」のこと。
先日、ロッカー室前に垂らしているタペストリーのイラストを描いてくれた39期卒業生と次作について話していたら、彼女の好きなイラストレーターとして「新海誠(しんかいまこと)」という名前が出た。
当然年配の自分はその人物についてまったく知らないのでその場でネットで画像検索したところ、自分が抱いている次作のイメージにぴったりのイラストで、虫の目線で男女の若者を描き、特に背景の青空と雲が爽やかでイケており、「これはええ」とめちゃくちゃ興味を持った。
彼女に「新海誠」についてさらに質問すると、「最近『君の名は。』というアニメの映画をつくった人です」と答えた。
「へーっ、『君の名は』ゆうたら、東京の数寄屋橋(すきやばし)でなんたらという男となんたらという女が運命の出会いをする、戦後間もない頃のラジオドラマかいな」「そのラジオドラマが始まったら、銭湯の女風呂が誰もおらんようになったというやつか」と、年配の日本史教師である自分はすぐに昭和の名作がアニメでリメイクされたんやと理解した。
さっそくその
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おそらく数寄屋橋の上でスカーフを巻いた女が男と運命の再会をしている昭和的ノスタルジックなシーンがトップページに出てくるものと思っていたら、「えっ、何、これ?」「何で高校生なん?」「なんでこんなに青春なん?」と唖然(あぜん)とした。
確かに『君の名は。』やけど、最後の「。」はどういうことやねんとも感じた。
彼女に映画の内容を聞くと、「高校生の男の子と女の子が入れ替わって・・・」というので、「えっ、その話には数寄屋橋は出てこんのか?」と聞くと、「なんですか、それ」とびっくりして答えた。
どうも様子がおかしい。自分がまず頭に浮かんだ内容と彼女が言っているアニメ映画はまったく別なものらしい、なるほど、なるほど、そやから著作権か何かの関係で最後に「。」を付けたんやな、そういえば昔、TBSが「人間失格」というドラマを放映して、太宰治の遺族からクレームが出て「人間失格。」として放映したのと同じやな、などと思いをめぐらした。
おそらく現在、いくつかの家庭でこのような「ジェネレーションギャップ」がおこっているのではないか。特に祖父母と高校生の孫の間でまったく噛み合わない会話が延々と続き、最後に孫が「もうおじいちゃんと話すんいやや」と席を立ち、途方に暮れている哀れなおじいちゃんが目に浮かぶ。
その「ジェネレーションギャップ」を埋めるべく、以下に両者のプロフィールを記載してみたい。
君の名は
○1952(昭和27)年4月から2年間、毎週木曜日に30分間放送されたNHKのラジオドラマ。
○1945(昭和20)年、東京大空襲の夜。焼夷弾(しょういだん)が降り注ぐ中、たまたま数寄屋橋で出会った男女が互いに名も明かさず、半年後の再会を約束して別れたが、様々な障害のためになかなか出会うことができず、女は心ならずも他の男と結婚してしまう。やがてその結婚は破局を迎えるが・・・。
○男の名前は「後宮春樹(あとみやはるき)」。女の名前は「氏家真知子(うじいえまちこ)」。現在63歳、62歳、61歳ぐらいで、男性「春樹」、女性「真知子」という場合は、おそらくこのラジオドラマの影響で両親が命名したと断言できる。それにしても「後宮春樹」という名前は、現代のアニメでも通用する斬新な響きである。
○その後、松竹で映画化され大ヒット。主演女優の岸恵子がロケ地の北海道で、あまりの寒さに私物のストールを頭から顔に巻き付けたのが人気をよび、「真知子巻き」と呼ばれて多くの人はマネをした。
○テレビでも4回ドラマ化され、一番新しいのが1991(平成3)年に放映されたNHK朝の連続テレビ小説。氏家真知子を鈴木京香が演じた。
○物語の舞台となった数寄屋橋は、1964(昭和39)年の東京オリンピックに向けての開発ラッシュの中で、残念ながら撤去され、その上を高速道路が走っている。
君の名は。
○新海誠監督の日本のアニメ映画。2016年8月公開。
○1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉(みやみずみつは)は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧(たちばなたき)も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた・・・。
○『君の名は。』の背景として岐阜県北部の飛騨地方が登場するようで、同時期に上映されている『聲の形(こえのかたち)』というアニメ映画も岐阜県が関係しているので、岐阜県のアニメファンは喜んでいるらしい。
以上、「。」があるかないかでまったく違う内容の物語でした。はい。