
米原市空家等対策の分析結果を報告します。
(具体的対策の内容は米原市HPをご確認ください)
<総論>
空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき
各自治体は空き家対策計画を策定していますが、
国土交通省が計画策定のガイドライン(空家等に関する施策を
総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針)を示しているため、
各自治体の計画は同じような内容になっています。
しかしながら米原市では空家バンクの登録数以上に転入希望があり、
他の自治体の状況と大きく異なっています。
なぜ米原市の空き家対策はこれほど成功しているのでしょうか?
『空家が多いから、空き家対策をしよう』
というような場当たり的な対応ではなく、
米原市は
まず住んでいる人にとっての
「住みやすさ」や「魅力」を高め、
次に空き家対策を進めるという順番なのです。
全国で長期的な人口減少が進む中、
多くの自治体が人口増や移住促進に取り組んでいます。
しかし、進学や就職を機に多くの若年層が流出している
根本原因を改善しないまま移住促進政策に取り組むのは、
いわば大出血しているのを放置して点滴するようなもの。
住民が住み続けられない地域は、
移住希望者から見ても魅力的なはずがありません。
米原市では空家物件に対して家屋の状態や立地等に応じて
全ての物件に、細分化された個別の対応策が用意されています。
また、空き家になってから対処するのではなく
「空き家を作らない」という意識のもと予防をおこなったり、
空き家になったあとの適正管理の援助や
空家への移住者に対するDIY講習会を開催するなど
時間の流れ的にも幅広く対応しています。
移住者の生活の様子も情報発信されており、
移住を考えている方にとっては、とても参考になっていると思います。
米原市のきめ細かい対応から、
地元のコミュニティ、古い建物や風景、移住者に対する
深い愛情が感じられました。
米原市と隣接の彦根市の市民意識を比べると
住み続けたい住民の割合は米原市約80%、彦根市は約61%。
住み続けたいか「わからない」は米原市約9%、彦根市31%。
米原市民は郷土への愛着がとても強いように感じます。
(備考) 郷土への愛を基本とした取り組み
米原市の自治基本条例や総合計画、ホームページ、
空き家対策等を通して感じるのは郷土・住民・移住者
そして未来に対する「愛」です。
細かいことの積み重ねですが「神は細部に宿る」と言われます。
・自治基本条例 市民はまちづくりの主役
・総合計画 基本理念
「人と人をつなぐまちづくり」
「地域と地域をつなぐまちづくり」
「総合計画・過去・未来(時)をつなぐまちづくり」
・総合計画 将来像「ともにつながり ともに創る 住みよさ実感 米原市」
持続するまちの根源である「住みよさが実感できるまち」を目指します。
※(多田注) 自治体は移住者を募集する前に、
まず住んでいる住民の住みよさを向上させることが第一の使命。
しっかりと足元を固める米原市の姿勢を見習いたいと思います。
・市HP 市長の部屋、市議会、自治会を併記
・市のキャラクター(一人ではなく、米原市は家族)
・第2次米原市空家等対策計画 基本理念
「空家にしない、させない、ほっとかない 地域ぐるみで施策を推進」
※(多田注)空家対応を所有者任せにせず地域の問題と定義
・ウェブサイト「恋する空き家プロジェクト」 単なる物件斡旋でない
・米原市シティセールスプランの目指す姿
○市民の愛着や誇りが醸成され、自ら自分のまちを推奨する市民
が増えています。
○米原市の対外的な認知度や良好なイメージが高まり、
米原ファンが拡大しています。
○米原市に誇りと愛着を持って暮らす人々によって、
持続可能なまちがつくられています。
※(多田注)外部向けのセールスプランなのに、
一番初めに市民の愛着や誇りの醸成を掲げる姿勢がすばらしい。
移住勧誘するにはこの順番が大事だと思います。
まず住んでいる人が誇れる街づくりをする。
次に外部にファンが増える。
そして移住してもらって持続可能なまちづくりに参加してもらう、
という順番。