(運営でなく経営)
委員会での来年度予算審議が終わりました。
本日の答弁に、伊勢崎市の「行政経営」にとって、
エポック・メイキングとなる答弁がありました。
(エポック・メイキング:ある事柄がその分野に新時代を開くほど意義をもっているさま)
行政「運営」ではなく、行政「経営」です。
おおざっぱに言うと「運営」とは、
「与えられた予算を使って、与えられた仕事をこなす」という姿勢です。
人も予算も、求められる成果にも余裕があった時代は
「運営」でも足りました。
しかし、時間や金などあらゆる面で
シビアになった現代では、そうはいきません。
組織が使える資源(人、カネ、モノ(資産))には限りがありますので、
どの事業に、どの資源を、どのタイミングで、どれくらい投入するのか、
そして、どのようなやり方が最適なのかを追求することが必要です。
これが「経営」です。
現在では、多くの自治体が「行政経営」の言葉を使っています。
(伊勢崎市橋梁長寿命化修繕計画)
伊勢崎市が管理している橋の内、重要な橋110橋について、
長期的な維持管理及び架け替えについて検討したのがこの計画です。
戦後の高度成長期に多くの橋が建設されました。
伊勢崎市では今後20年以内に5割もの橋が築後50年以上となります。
そのため老朽化した橋の修繕や維持管理費、更新費用は急激に
増えるため、それらのトータルコストの低減が求められています。
このほど完成した伊勢崎市橋梁長寿命化計画によれば、
悪くなる前に手入れをしていく「予防保全型」に比べて、
「壊れたら、壊れたところを直す」という対症療法型の場合、
2.6倍ものコストが余分にかかることが分かりました。
具体的には、重要橋110橋のうち、重要路線の54橋で試算したところ、
今後50年間にかかる経費は予防保全型では112億円なのに対して、
事後対策型では294億円もかかり、
予防保全型に移行することでトータルコストは182億円も削減されます。
これは橋だけの問題でなく、行政が管理する全ての公共資産について
将来にわたる最適な効率的な維持管理を図ることが必要です。
この手法は「アセットマネジメント」と呼ばれ、
町田市や八王子市(施設白書)など、先進的な自治体では
すでに取り組んでいます。
今後急増する橋やトンネルなどの維持管理と更新費用について、
国土交通省では次のような資料を公表しています。
もう新規のものを建設する余裕などありません。
(経営のスタートライン)
本日の予算審議の中で、
伊勢崎市橋梁長寿命化計画の検討結果について答弁があり、
重要な橋梁全体のトータルコストを低減し、さらに
経費負担の標準化を図ったところ、
毎年2.7億円を予防保全に充てることが最適だと判明しました。
ところが、すでに作ってあった市の総合計画とずれているために、
来年度の橋梁維持事業予算は約1億円の要求額となり、
最適の状態よりも1.7億円不足しているのです。
来年度予算として、橋のために、2.7億円使うよりも、
それだけ見れば1億円のほうが安いです。
しかしその結果、橋の痛みなどが早まり、
50年間と言う長さで見ると、182億円も余分にかかると
この計画では判明したのです。
伊勢崎市の中長期的な経営を考えるならば、
重要な橋の維持管理事業予算は、2.7億円にすべきなので、
足りない1.7億円をどこから持ってくるのか、
それを考え、議論することが「経営」のスタートなのです。
伊勢崎市は比較的裕福な自治体でしたので、
あれもこれも実施できましたが、国土交通省の予測を見ても
これから先はそうは行きません。
トータルでのコスト低減を目指し、必要なところに必要なお金を
手当てできるように考えなければなりません。
最適な橋梁維持管理のためには1.7億円足りない!
1.7億円をどこから持ってくるか?
これに気がつき、どうするか考え始めたことが
「行政経営」のエポック・メイキングなのです。
どうしても必要ならば、
来年度予算のどこから1.7億円持ってくるか。
たとえば、住宅リフォーム助成金1億円。
それなりの経済刺激効果はあると思いますが、
個人の住宅がリフォームされることと、重要な橋の建て替えと
どちらが社会にとって必要なのか。
花火大会は2,500万円ほどの金額ですが、
重要な橋の必要性に比べれば、
やらなくても市民生活は困らない、
と考えられます。
小さい金額ですが、高齢者タクシー利用料金の助成600万円。
助成を受けられる方にとっては、有難い制度だと思いますが、
もし重要な橋の維持管理ができなければ、タクシーも満足に走れません。
限られた財源の中で、何かを優先するためには、
ほかの何かを削らなければならない。
何を削るのか、どのような優先順位をつけるのか、
これが行政の経営課題であり、政治の判断です。
市長でも、行政職員でも、議員でも、
何かの予算を削る決断は、必ず苦情や不満が来ますので、
できれば避けたいものです。
トータルコストが下がる最適の方法が分かったのに、
目先の費用が安く、苦情も出ないやり方を採用し、
後年度により大きな負担を発生させるのか。
それとも、苦情や不満は出ると思いますが、
長期的な全体最適の「経営」に移行していくのか。
伊勢崎市はいま、その分かれ道に来たと思います。