
9月19日の上毛新聞1面に、高崎市の新事業が紹介されました。
「高崎市まちなか商店リニューアル助成事業補助金」の概要
補助対象者:高崎市の住民または法人で自ら営業している人、大家等。
対象業種:小売業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業など
補助対象:店舗の改装、備品の購入(市内の施工業者及び販売業者)
補助限度額:上限100万円(費用の2分の1
大人気で2度も予算を増額し4億4千万円となります。
市長はこの事業を3年続けるようですが、
効果について疑問の声があがっています。
(事業の目的とは何か)
高崎市のホームページを見ますと、「商業の活性化」がこの事業の目的です。
簡単に図で表せばこのような形でしょう。

一井さんという方が、ネット上でこの高崎市の事業を紹介し、
次のように述べています。
■課題もあります
しかし、「商店の魅力を高め、集客力の向上を図る」「商業の活性化」という
本来の目的を果たすためには、これだけでは十分とは言えません。
買いたい商品や、また行きたいと思わせるサービスなど、顧客目線に立った
商店主のソフト面での創意工夫がなければ、いくら外観や備品がキレイになっても、
残念ながらお客さんは増えないでしょう。
ハード整備にこれだけ思い切った支援をしたのですから、
ここは腰を据えて本来の成果を出すべきです。
この記事に対して読者から次のコメントが寄せられています。
毎回、何処かで似たような助成をして失敗している気がしますけど。
指摘のとおり、ビジネスモデルが現実に即していないのに、
箱物に金を掛けてもそれ程効果が無いと思いますね。
その為には、マーケティングにお金を掛けないと始まりませんね。
需要と供給のミスマッチを改善しないと意味が無いですよ
一井さんと、その読者の方は、
店舗の内装改装補助というハード面を改善する手法に対して、
買いたい商品や、また行きたいと思わせるサービスなど
「本来の成果」を出すべきだと指摘しているのです。
(売れない原因を分析する)
高崎市の改装100万円補助事業がうまく作用するかどうかは、
お店の「売れない原因」が解消するかどうかにかかっています。
では、売れない原因とは何でしょうか?
もちろん、個々のお店や企業により、売れない原因はさまざまですが、
大まかには、次のような形ではないでしょうか。

売れない原因は、ハードの問題とソフトの問題に分けられます。
ハードとは、建物や立地場所などの問題。
ソフトは、
お客が欲しいものを売っているか、きちんと利益の出せる構造になっているか、
経営能力はあるか、宣伝など効果的に行っているかなどの問題です。
高崎市の改装補助事業は、これら多くの売れない原因の内、
ハード面の中の建物の問題だけに作用します。
かつてダイエーは、
「なんでもあるけど、欲しいものは何も無い」と言われました。
私は商売が不振となる原因の多くは、ハード面ではなく、
ソフト面にあるのではないかと考えています。
先ほどの、一井さんとその読者の方の意見は、
このことを指摘しているのです。
市民の税金で補助金を出すのに、その目的である
「売れない原因の解消」が達成出来ないならば、
税金の無駄遣いです。
それぞれのお店の不振の原因は何なのか。まずここが大事です。
その原因のどこの部分に対して、この改装という手法が作用するのか。
これらがきちんと論理的につながっていなければ、莫大な無駄がねです。
中には改装が有効に作用しそうな商売も考えられます。
喫茶店やレストランなどは、同じような食事を提供しているなら、
新しいお店や、流行の内装のお店にお客が集まると思います。
しかし、これも実は問題を含んでいます。
(市場をゆがめる)
高崎市のこの事業に対して、facebookで次のようなやり取りがありました。
Aさんの公金で内装補助するのは適切でないという意見に対し、
Bさんから質問がありました。
コメント Bさん
5年ほど前に、なかなかテナントが見つからない貸店舗で、
改装費用100万円をビルオーナーが負担します!って宣伝したら、
すぐに成約できました。民間が自助努力でするのはAさん的にはアウトorセーフ?
コメント Aさん
セーフっすよー!! だって民間でやるなら、
それで採算ベースに乗るように事業つくるじゃないですか。
オーナーからすれば、入らないより入ってもらえば家賃入るし、十分によいと思います。
行政がやったら、単に皆が集めた金を多額の事務手数料を中抜きされて皆に戻して、
さらにBさんみたいにちゃんと市場内でやっている人たちの努力とか
相対的に無意味なものにしてしまうじゃないです。
だったら誰も採算とか関係なく、税金をもらうようになって、
そしたら経済うごかなくなるじゃないですか。
コメント Bさん
なるほど、良く理解できました。
民間と行政では同じ事をやったとしても、それだけ大きな意味の違いがあるんですね。
コメント Aさん
民間であれば全体で経済的にバランスするようにする、
つまりは投入する財と回収する財の量をバランスしますが、
行政というのはある意味で強制的に皆の財を取り上げられる権限(税金)があるので、
とるだけとってあとは終わりなんですよね。
税金という強制力によって集めた、回収する必要がない資金を
個々人の努力とか関係なしに配って、
そのお金が中長期的に回収されるとか無関係なんですよね。
そういう、ある意味で原則無視のお金を一般市場に投入してしまうと、
普通に経済的なバランスする方策自体だと太刀打ち出来無くなってしまう。
魅力的だったものが、相対的に魅力的じゃなくなってしまうわけですよね。
さらにその原資は税金だから、市民たちによる何らかの経済活動から
捻出されないといけないというタコ足食いなんです。
経済活動の上澄みである税金で、
経済活動原則を崩すようなお金の支給の仕方をすると、
地域はますます衰退していくというのは当たり前なんですよね。
AさんとBさんの対話から、
とても重要なことがわかります。
高崎市がこの事業を始める前は、お店の経営者や
そのお店を貸している大家さんなどは、
自助努力で改装したりしていたのです。
その費用は、自分が商売で利益を出して
釣り合いが取れる範囲内で。
ところが、高崎市が補助金を出し始めると、
これまで自助努力して魅力アップに取り組んでいたお店が
相対的に魅力低下になってしまうのです。
市場の自由競争を、公金を投入することでゆがめます。
さらに最大の問題は、
今までは自由競争の自助努力で行われていたので、
そのことには税金は1円もかかっていませんでした。
しかし今年度だけで、あらたに4億4千万円も
税金を投入しなければならなくなったのです。
国の予測では、100年後の日本の人口は現在の3分の1です。
普通に考えれば、長期的に行政の予算は3分の1に減らしていかなければ、
国民一人当たりの税金が何倍にもなってしまいます。
行政が今やっている仕事の3分の2を無くしていこうというのですから、
民間でできることは民間にやってもらうのは当然として、
今の行政の仕事でも、NPOや企業の社会貢献事業などへ
引き継げるものはどんどん引き継いでいかなければなりません。
このような長期的な基本スタンスに立って考えるならば、
いままで民間市場で自助努力で行われていた分野、
つまり1円も税金投入していなかった分野に、新たに
4億円以上の税金の投入を始めることの財政に対する影響の大きさ。
しかも3年続けるようです。進める方向が逆ですね。
(自助努力の支援)
中小事業者への金融支援として、いろいろな融資制度があり、
利子補給制度まであります。
融資ですから、きちんと担保を取ったり、
融資したお金が回収できる見込みがあるか、
金融機関の窓口などが事業計画を審査してから貸し出します。
これまでの事業者はお店を改修するにも、
融資の審査を受けることにより、
その後の事業の成功に確実性が見込まれていたのです。
税金を投入するならば、少なくとも事業目的が達成され
そのお金が生きることが大前提です。
もし補助金を貰って改装したお店が繁盛しないなら、
投入した税金は死に金になってしまいます。
改装してくださいとお金を配ってから、
本業の成果を心配するのは、順番が逆。
どうも、この高崎市の内装100万円補助事業は、
商業の振興ではなく、実態は建築業への経済刺激事業のようです。
なお、私個人としては、
銀行などの金融機関は融資が本業ですので、
私は行政が税金で同じことをやる必要は無いと考えています。
もし、民間の金融機関が審査して不適切と判断するような事業主に
行政が税金から融資すれば、返済が滞る可能性が高いでしょう。
(平成28年9月23日追記)
熊谷俊人(千葉市長):
行政が行う商業の活性化は、それによって税収を増やし、
雇用を生み出すこと、お金が適正に動くようにすることが目的。
しかし、ほとんどの商店街の活性化は「まちおこし」になってしまっていて、
個々のお店の競争力向上や商店街全体の戦略をつくるといったものになっていない。
いわば「商店街の盆踊りで何をやるか」の議論と一緒。
空き店舗になっているのは、そこで商売が成り立ちにくいから。
物件として魅力が乏しい空きテナントを、補助金を突っ込んで埋めるのは、
どう考えても経済的ではありません。本来は民間で新陳代謝すべきです。
でも、それでは地域の元気がなくなってしまうからなんとかしなくては、
というのであれば、それは福祉施策なのです。
福祉に商業振興の衣をまとわせるようなやり方はあらためて、
意義と目的をはっきりさせ、施策を行う主体も明確にした方がいい。
(詳しくはコチラ)
「高崎市まちなか商店リニューアル助成事業補助金」の概要
補助対象者:高崎市の住民または法人で自ら営業している人、大家等。
対象業種:小売業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業など
補助対象:店舗の改装、備品の購入(市内の施工業者及び販売業者)
補助限度額:上限100万円(費用の2分の1
大人気で2度も予算を増額し4億4千万円となります。
市長はこの事業を3年続けるようですが、
効果について疑問の声があがっています。
(事業の目的とは何か)
高崎市のホームページを見ますと、「商業の活性化」がこの事業の目的です。
簡単に図で表せばこのような形でしょう。

一井さんという方が、ネット上でこの高崎市の事業を紹介し、
次のように述べています。
■課題もあります
しかし、「商店の魅力を高め、集客力の向上を図る」「商業の活性化」という
本来の目的を果たすためには、これだけでは十分とは言えません。
買いたい商品や、また行きたいと思わせるサービスなど、顧客目線に立った
商店主のソフト面での創意工夫がなければ、いくら外観や備品がキレイになっても、
残念ながらお客さんは増えないでしょう。
ハード整備にこれだけ思い切った支援をしたのですから、
ここは腰を据えて本来の成果を出すべきです。
この記事に対して読者から次のコメントが寄せられています。
毎回、何処かで似たような助成をして失敗している気がしますけど。
指摘のとおり、ビジネスモデルが現実に即していないのに、
箱物に金を掛けてもそれ程効果が無いと思いますね。
その為には、マーケティングにお金を掛けないと始まりませんね。
需要と供給のミスマッチを改善しないと意味が無いですよ
一井さんと、その読者の方は、
店舗の内装改装補助というハード面を改善する手法に対して、
買いたい商品や、また行きたいと思わせるサービスなど
「本来の成果」を出すべきだと指摘しているのです。
(売れない原因を分析する)
高崎市の改装100万円補助事業がうまく作用するかどうかは、
お店の「売れない原因」が解消するかどうかにかかっています。
では、売れない原因とは何でしょうか?
もちろん、個々のお店や企業により、売れない原因はさまざまですが、
大まかには、次のような形ではないでしょうか。

売れない原因は、ハードの問題とソフトの問題に分けられます。
ハードとは、建物や立地場所などの問題。
ソフトは、
お客が欲しいものを売っているか、きちんと利益の出せる構造になっているか、
経営能力はあるか、宣伝など効果的に行っているかなどの問題です。
高崎市の改装補助事業は、これら多くの売れない原因の内、
ハード面の中の建物の問題だけに作用します。
かつてダイエーは、
「なんでもあるけど、欲しいものは何も無い」と言われました。
私は商売が不振となる原因の多くは、ハード面ではなく、
ソフト面にあるのではないかと考えています。
先ほどの、一井さんとその読者の方の意見は、
このことを指摘しているのです。
市民の税金で補助金を出すのに、その目的である
「売れない原因の解消」が達成出来ないならば、
税金の無駄遣いです。
それぞれのお店の不振の原因は何なのか。まずここが大事です。
その原因のどこの部分に対して、この改装という手法が作用するのか。
これらがきちんと論理的につながっていなければ、莫大な無駄がねです。
中には改装が有効に作用しそうな商売も考えられます。
喫茶店やレストランなどは、同じような食事を提供しているなら、
新しいお店や、流行の内装のお店にお客が集まると思います。
しかし、これも実は問題を含んでいます。
(市場をゆがめる)
高崎市のこの事業に対して、facebookで次のようなやり取りがありました。
Aさんの公金で内装補助するのは適切でないという意見に対し、
Bさんから質問がありました。
コメント Bさん
5年ほど前に、なかなかテナントが見つからない貸店舗で、
改装費用100万円をビルオーナーが負担します!って宣伝したら、
すぐに成約できました。民間が自助努力でするのはAさん的にはアウトorセーフ?
コメント Aさん
セーフっすよー!! だって民間でやるなら、
それで採算ベースに乗るように事業つくるじゃないですか。
オーナーからすれば、入らないより入ってもらえば家賃入るし、十分によいと思います。
行政がやったら、単に皆が集めた金を多額の事務手数料を中抜きされて皆に戻して、
さらにBさんみたいにちゃんと市場内でやっている人たちの努力とか
相対的に無意味なものにしてしまうじゃないです。
だったら誰も採算とか関係なく、税金をもらうようになって、
そしたら経済うごかなくなるじゃないですか。
コメント Bさん
なるほど、良く理解できました。
民間と行政では同じ事をやったとしても、それだけ大きな意味の違いがあるんですね。
コメント Aさん
民間であれば全体で経済的にバランスするようにする、
つまりは投入する財と回収する財の量をバランスしますが、
行政というのはある意味で強制的に皆の財を取り上げられる権限(税金)があるので、
とるだけとってあとは終わりなんですよね。
税金という強制力によって集めた、回収する必要がない資金を
個々人の努力とか関係なしに配って、
そのお金が中長期的に回収されるとか無関係なんですよね。
そういう、ある意味で原則無視のお金を一般市場に投入してしまうと、
普通に経済的なバランスする方策自体だと太刀打ち出来無くなってしまう。
魅力的だったものが、相対的に魅力的じゃなくなってしまうわけですよね。
さらにその原資は税金だから、市民たちによる何らかの経済活動から
捻出されないといけないというタコ足食いなんです。
経済活動の上澄みである税金で、
経済活動原則を崩すようなお金の支給の仕方をすると、
地域はますます衰退していくというのは当たり前なんですよね。
AさんとBさんの対話から、
とても重要なことがわかります。
高崎市がこの事業を始める前は、お店の経営者や
そのお店を貸している大家さんなどは、
自助努力で改装したりしていたのです。
その費用は、自分が商売で利益を出して
釣り合いが取れる範囲内で。
ところが、高崎市が補助金を出し始めると、
これまで自助努力して魅力アップに取り組んでいたお店が
相対的に魅力低下になってしまうのです。
市場の自由競争を、公金を投入することでゆがめます。
さらに最大の問題は、
今までは自由競争の自助努力で行われていたので、
そのことには税金は1円もかかっていませんでした。
しかし今年度だけで、あらたに4億4千万円も
税金を投入しなければならなくなったのです。
国の予測では、100年後の日本の人口は現在の3分の1です。
普通に考えれば、長期的に行政の予算は3分の1に減らしていかなければ、
国民一人当たりの税金が何倍にもなってしまいます。
行政が今やっている仕事の3分の2を無くしていこうというのですから、
民間でできることは民間にやってもらうのは当然として、
今の行政の仕事でも、NPOや企業の社会貢献事業などへ
引き継げるものはどんどん引き継いでいかなければなりません。
このような長期的な基本スタンスに立って考えるならば、
いままで民間市場で自助努力で行われていた分野、
つまり1円も税金投入していなかった分野に、新たに
4億円以上の税金の投入を始めることの財政に対する影響の大きさ。
しかも3年続けるようです。進める方向が逆ですね。
(自助努力の支援)
中小事業者への金融支援として、いろいろな融資制度があり、
利子補給制度まであります。
融資ですから、きちんと担保を取ったり、
融資したお金が回収できる見込みがあるか、
金融機関の窓口などが事業計画を審査してから貸し出します。
これまでの事業者はお店を改修するにも、
融資の審査を受けることにより、
その後の事業の成功に確実性が見込まれていたのです。
税金を投入するならば、少なくとも事業目的が達成され
そのお金が生きることが大前提です。
もし補助金を貰って改装したお店が繁盛しないなら、
投入した税金は死に金になってしまいます。
改装してくださいとお金を配ってから、
本業の成果を心配するのは、順番が逆。
どうも、この高崎市の内装100万円補助事業は、
商業の振興ではなく、実態は建築業への経済刺激事業のようです。
なお、私個人としては、
銀行などの金融機関は融資が本業ですので、
私は行政が税金で同じことをやる必要は無いと考えています。
もし、民間の金融機関が審査して不適切と判断するような事業主に
行政が税金から融資すれば、返済が滞る可能性が高いでしょう。
(平成28年9月23日追記)
熊谷俊人(千葉市長):
行政が行う商業の活性化は、それによって税収を増やし、
雇用を生み出すこと、お金が適正に動くようにすることが目的。
しかし、ほとんどの商店街の活性化は「まちおこし」になってしまっていて、
個々のお店の競争力向上や商店街全体の戦略をつくるといったものになっていない。
いわば「商店街の盆踊りで何をやるか」の議論と一緒。
空き店舗になっているのは、そこで商売が成り立ちにくいから。
物件として魅力が乏しい空きテナントを、補助金を突っ込んで埋めるのは、
どう考えても経済的ではありません。本来は民間で新陳代謝すべきです。
でも、それでは地域の元気がなくなってしまうからなんとかしなくては、
というのであれば、それは福祉施策なのです。
福祉に商業振興の衣をまとわせるようなやり方はあらためて、
意義と目的をはっきりさせ、施策を行う主体も明確にした方がいい。
(詳しくはコチラ)