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『地下水は語る 見えない資源の危機』守田優著

2015年04月24日 | 東日本大震災・原発事故
#図書館で借りた本のメモです。広瀬隆氏の首都圏地下水汚染説(福島から首都圏に流れて行っている)批判のために読んだはずなのですが、まとめる機会を逸していました。(2013年11月)

『地下水は語る 見えない資源の危機』守田優著

用語

不圧地下水 上部に加圧層がない 民家の浅井戸や崖下の湧水の元
加圧粘土層
被圧帯水層 被圧地下水

沖積世 最終氷期の最盛期にあたる1万8000年前以降。
沖積層 気候が温暖化して海水面が上昇し、堆積作用によって海岸平野が形成された。沖積平野。関東平野、大阪平野、濃尾平野など。
東京低地では有楽町層という沖積層が平均30mの厚さで被圧帯水層を覆っている。
沖積平野の表層(沖積層)は軟弱地盤としての特徴をもつ。表層収縮の主体。

洪積層 第四期(約260万年前から現在まで)の初めから最終氷期までの時期につくられた地層。沖積層より厚く、固く締まっている。
粘土・シルトや砂・砂礫、さらにはローム層のような火山噴出物などからなる。
洪積層という用語は現在では使われていない。

洪積台地 最終氷期までの洪積世に形成された扇状地、三角州、海岸平野などの平坦な面が、その後の海水準の低下、あるいは地殻変動によって隆起してつくられた地形。武蔵野台地など。

武蔵野台地
不圧帯水層 ローム層・段丘礫層
被圧帯水層 上総層群・東京層群 間に難透水層
武蔵野台地では不圧帯水層と被圧帯水層が接している。

第4章 環境としての地下水

共有資源としての地下水

エリノア・オストロム教授 2009年ノーベル経済学賞
共有資源のガバナンス
河川水、地下水などの水資源、森林、魚、牧草などの個人や組織が共同で使用し管理する資源
コモンズ Commons
共有資源の管理のための有効な方法は、「国家による解決」でも「市場による解決」でもなく、セルフ・ガバナンスという第三の道であるとした。
共有資源に利害関係をもつ者(ステークホルダー)が自主的に適切なルールを取り決めて保全管理する方法
持続可能な地下水管理は、共有資源のセルフ・ガバナンスによってのみ可能
結果として、豊かできれいな地下水を将来の世代に残すことができる

原発事故による地下水の放射能汚染

産業技術総合研究所「福島県の地下水環境」2011年4月6日
(探したが原文を入手できない)

表層(m層) 土壌と砂礫・砂・泥の入り混じった 5m
泥質岩層(Dm層) 難透水層 20m
砂質岩層(Ds層) 主要な帯水層 200m
地層は東に傾斜

汚染水が深部の砂質岩層まで到達することはない 地下水汚染は表層部に限定される
地下水の流速は、地下水が汚染された表層では1日に1cm程度

汚染経路を明確に特定する必要があるが、大局的には広域まで影響を及ぼすことはない、と結論

原発による地下水汚染の今後

地層の平均的なマクロな流れと汚染水のミクロな流れとは区別しなければならない
汚染水は流れやすい「水みち」を通り、流速は速くなる
「汚染経路を明確に特定する必要がある」とは、このことを意味している

井戸の遮水工に欠陥があると、汚染水が下方に漏れる可能性もある

放射性物質は数百キロメートルの範囲に飛散
降雨によって土壌を汚染し、さらに地下水を汚染する
微量であっても無視することはできない

今後、地下水汚染のリスク管理という観点から、原発周辺の詳細な水質のモニタリングが必須である

地下水は一度汚染されると回復が困難である。
地下水汚染のリスク管理としては、何よりも汚染源の適切な隔離と除去が最優先されなければならない。

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