7月15日に開催された鈴木達治郎先生の講演資料と追加質問への回答を、当日出席できなかった多くの青森県民にも伝えたいという願いを聞き入れていただき、特別のご厚意により掲載させていただきます。
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八戸市医師会市民公開講座(青森県医師会生涯教育講座)
「3.11以降の原子力政策 青森県民と核燃料サイクルを考える」
講師 長崎大学核兵器廃絶研究センター長 鈴木達治郎 教授
(前・内閣府原子力委員会委員長代理/日本パグウォッシュ会議代表)
2017年7月15日 八戸グランドホテル
主催 八戸市医師会
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(講演の報告は医師会報に掲載された後にブログにもアップする予定です)
【講演資料】
→講演発表・配布資料(86p)
(当日配布した資料に4ページ追加されています)
【参考資料】 …発表の中で言及・引用された資料です
1)『崩れた原発「経済神話」 柏崎刈羽原発から再稼働を問う』新潟日報社原発問題特別取材班/著
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20170530334512.html
…在庫がなく入手困難(2017.8.4)でしたが、重版されて購入することができるようになりました(2017.8.29)
2)日本経済研究センター「2050年、05年比でCO2、6割削減は可能」(※特任研究員として鈴木先生も参画)
http://www.jcer.or.jp/policy/pdf/150227_policy.pdf
3)日本経済研究センター「事故処理費用は50兆〜70兆円になる恐れ」(※同上)
https://www.jcer.or.jp/policy/concept2050.html
4)「論点:核のごみ、最終処分への提言(鈴木達治郎・今田高俊・杤山修氏)」(毎日新聞 2014年5月23日)
http://no-nukes.blog.jp/archives/7693672.html
…鈴木先生の提言も掲載されていますが、講演では杤山氏の再処理に関する部分が黄色く強調されて引用されました。
◇杤山修・経済産業省地層処分技術ワーキンググループ委員長
「再処理は使用済み核燃料の中に残ったウランやプルトニウムに取り出す価値があるから行うのであり、処分のためではない。使う価値がないなら再処理せずにそのまま埋める直接処分の方がいい。核燃料を溶かして一度危険な状態にする上、捨てにくく技術的課題が多い超ウラン元素(TRU)廃棄物が出るなど、再処理は不利なものだ」
5)「もんじゅ」廃炉へ(下)「核燃料の再処理は中止を プルトニウム削減を急げ」鈴木達治郎・長崎大学教授(日本経済新聞 2016年11月8日
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09230870X01C16A1KE8000/
…登録すれば全文読めます
【追加質問と鈴木先生のご回答】
1)直接処分と最終処分場について
今後、部分再処理とワンススルーのいずれを選ぶにせよ、ガラス固化体と使用済み燃料の2種類の高レベル廃棄物が残るはずです。
この2種類は、同じ最終処分場で埋設することが可能で、発表予定のマップの条件も同じと考えて良いのでしょうか。
また、もし可能だったとしても、これまでの説明会では触れられていないので、議論は振り出しに戻ると思います。
だとしたら、最終処分場を決める前に、直接処分の選択肢について議論をする方が先だと思うのですが。。
<回答>
2)最終処分場は1か所なのかどうか
学術会議の暫定保管では、各電力会社に1か所という案が示されていましたが、最終処分場については、政府案でも学術会議案でも、1か所を想定しているように思われます。
公開されている「学術の動向」(2016.6)では、吉岡氏が、むしろ最終処分場を複数にすべきと提起されています。
私も、国民的議論を引き起こし、消費地(大都市)の責任を明らかにするためにも、最低でも2か所以上(東・西日本)の設置を前提にすべきではないかと考えています(…いずれにせよ、1か所でも出来る可能性は低いと思いますが)。
費用や工事・作業の面でも、1か所の方が有利なのかもしれませんが、どのような姿が望ましいのか、教えていただけませんでしょうか。
(暫定保管についても、学術会議の「原発立地地域以外」よりも、原発敷地内や隣接地の方が適しているはずだと思います。。信頼性や透明性が欠けている現状では難しいとは思いますが。)
<回答>
3)プルトニウムの処理・埋設について
英国はプルトニウム引き受けたとして、どのように処分するのでしょうか。
米国の「スターダスト」というプルトニウムを直接処分する研究について報道があり、講演資料のプルトニウム問題解決の中にも「代替処分方法の検討」という項目がありました。
現在あるプルトニウムについては、MOXにするより燃やさず処分する方が理にかなっているように思われます。
ただし、最終処分場にせよ、プルトニウムの処分にせよ、それが「原発・核燃料サイクル推進」目的のためでは国民的合意は難しいし、私も賛成できないと思いますが…。
<回答>
4)トリチウム汚染水について
講演会で質問した方が、トリチウムの総量は六ヶ所の廃液の方が福島より多いと指摘されていました。これは年間の排出量なのか、全稼働期間の総量なのでしょうか。
<回答>
※このご回答における各種数値については、引用された元資料にあたって、可能であればその在り処についても追加で記載したいと考えておりますが、まだ作業できていない段階での仮公開となることをお断りしておきます。(2017.8.4)
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八戸市医師会市民公開講座(青森県医師会生涯教育講座)
「3.11以降の原子力政策 青森県民と核燃料サイクルを考える」
講師 長崎大学核兵器廃絶研究センター長 鈴木達治郎 教授
(前・内閣府原子力委員会委員長代理/日本パグウォッシュ会議代表)
2017年7月15日 八戸グランドホテル
主催 八戸市医師会
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(講演の報告は医師会報に掲載された後にブログにもアップする予定です)
【講演資料】
→講演発表・配布資料(86p)
(当日配布した資料に4ページ追加されています)
【参考資料】 …発表の中で言及・引用された資料です
1)『崩れた原発「経済神話」 柏崎刈羽原発から再稼働を問う』新潟日報社原発問題特別取材班/著
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20170530334512.html
…在庫がなく入手困難(2017.8.4)でしたが、重版されて購入することができるようになりました(2017.8.29)
2)日本経済研究センター「2050年、05年比でCO2、6割削減は可能」(※特任研究員として鈴木先生も参画)
http://www.jcer.or.jp/policy/pdf/150227_policy.pdf
3)日本経済研究センター「事故処理費用は50兆〜70兆円になる恐れ」(※同上)
https://www.jcer.or.jp/policy/concept2050.html
4)「論点:核のごみ、最終処分への提言(鈴木達治郎・今田高俊・杤山修氏)」(毎日新聞 2014年5月23日)
http://no-nukes.blog.jp/archives/7693672.html
…鈴木先生の提言も掲載されていますが、講演では杤山氏の再処理に関する部分が黄色く強調されて引用されました。
◇杤山修・経済産業省地層処分技術ワーキンググループ委員長
「再処理は使用済み核燃料の中に残ったウランやプルトニウムに取り出す価値があるから行うのであり、処分のためではない。使う価値がないなら再処理せずにそのまま埋める直接処分の方がいい。核燃料を溶かして一度危険な状態にする上、捨てにくく技術的課題が多い超ウラン元素(TRU)廃棄物が出るなど、再処理は不利なものだ」
5)「もんじゅ」廃炉へ(下)「核燃料の再処理は中止を プルトニウム削減を急げ」鈴木達治郎・長崎大学教授(日本経済新聞 2016年11月8日
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09230870X01C16A1KE8000/
…登録すれば全文読めます
【追加質問と鈴木先生のご回答】
1)直接処分と最終処分場について
今後、部分再処理とワンススルーのいずれを選ぶにせよ、ガラス固化体と使用済み燃料の2種類の高レベル廃棄物が残るはずです。
この2種類は、同じ最終処分場で埋設することが可能で、発表予定のマップの条件も同じと考えて良いのでしょうか。
また、もし可能だったとしても、これまでの説明会では触れられていないので、議論は振り出しに戻ると思います。
だとしたら、最終処分場を決める前に、直接処分の選択肢について議論をする方が先だと思うのですが。。
<回答>
ご指摘の通り、現在の処分場計画はガラス固化体と超ウラン元素を対象にしか計画されていません。
ただ、原子力委員会の決定があったため、JAEAで使用済み燃料の直接処分もわが国で技術的に可能かの確認するための調査が行われ、2016年にその報告書が出て、技術的には問題ないことが明らかになりました。
これまで「日本では直接処分はできない」「そのような研究もない」と言っていたことはこれでなくなりました。場所の選定についても、ガラス固化体であっても、直接処分でも基本的に差異なく選定できると思います。
それでも、政策変更や最終処分法の改定がない限り、処分場の設計への変更は難しいでしょう。単に研究をやっているだけではだめなので、ご指摘の通り、早く直接処分も可能とするように政策変更すべきだと思います。
規制基準もこれから議論に入りますので、今のうちに直接処分も対象とするよう法改正が必要だと思います。
2)最終処分場は1か所なのかどうか
学術会議の暫定保管では、各電力会社に1か所という案が示されていましたが、最終処分場については、政府案でも学術会議案でも、1か所を想定しているように思われます。
公開されている「学術の動向」(2016.6)では、吉岡氏が、むしろ最終処分場を複数にすべきと提起されています。
私も、国民的議論を引き起こし、消費地(大都市)の責任を明らかにするためにも、最低でも2か所以上(東・西日本)の設置を前提にすべきではないかと考えています(…いずれにせよ、1か所でも出来る可能性は低いと思いますが)。
費用や工事・作業の面でも、1か所の方が有利なのかもしれませんが、どのような姿が望ましいのか、教えていただけませんでしょうか。
(暫定保管についても、学術会議の「原発立地地域以外」よりも、原発敷地内や隣接地の方が適しているはずだと思います。。信頼性や透明性が欠けている現状では難しいとは思いますが。)
<回答>
技術的、経済的に考えれば、1つで十分ですし、コストも安いです。もっと極端に言えば、世界に1か所あれば十分処分可能です。
問題はあくまでも、政治・社会的な要素で「各国が責任をもって処分することを原則とする」と放射性廃棄物条約に明記されています。ただ「関係国間で合意できれば国際処分を除外するものではない」とされています。
一方,各電力会社ごとに処分場を置くことは、社会公平性という考え方で出されたアイデアで、立地が可能であれば、そういうことも検討してもよいかと思います。
米国でも数か所を選ぶ、という案がありましたし、今もその可能性はありえます。これは公平性の観点というより、一つだとリスクが高く、バックアップの意味も含めて複数用意したほうが良い、という考えでした。
ただ、コスト面や立地の選択の難しさが現実問題としてありますので、私は貯蔵を各電力会社ごと、処分は1か所がいいのではないかと思います。
低レベル廃棄物処分場は量も多く、輸送も簡単なので、米国では地域ごとに処分場を決定することとなっています(ただ、地域ごとで交渉して、他地域の廃棄物を引き受けることもできるようになっています)。
3)プルトニウムの処理・埋設について
英国はプルトニウム引き受けたとして、どのように処分するのでしょうか。
米国の「スターダスト」というプルトニウムを直接処分する研究について報道があり、講演資料のプルトニウム問題解決の中にも「代替処分方法の検討」という項目がありました。
現在あるプルトニウムについては、MOXにするより燃やさず処分する方が理にかなっているように思われます。
ただし、最終処分場にせよ、プルトニウムの処分にせよ、それが「原発・核燃料サイクル推進」目的のためでは国民的合意は難しいし、私も賛成できないと思いますが…。
<回答>
英国は2005年ころから検討を始め、国の原子力廃止機構(NDA)が責任をもって処分することになっています(費用は税金です)。その分、透明性確保が重要とされています。
処分法も政府案を提示して、国民からコメントを募集して、最終案として、現在は日本と同様MOX燃料にして専用原子炉で燃やすことにしています。
現在公募しているところですが、2015年決定の予定が遅れています。MOX燃料として燃焼させる(使用済みMOX燃料は再処理はしないで処分)ほうが、技術的な見通しが立つ、というのが主な理由でした。
ただ、MOX燃料が順調に進まない場合や、MOX燃料に加工できないプルトニウムも存在することから、安定化させて「直接処分」する技術開発も並行して進めています。
いずれにせよ、産業界は燃料として利用する意図がないので、政府が責任をもって処分することになっています。これは原発推進とは関係なく「廃棄物処分」としてNDAが扱うことになっています。
4)トリチウム汚染水について
講演会で質問した方が、トリチウムの総量は六ヶ所の廃液の方が福島より多いと指摘されていました。これは年間の排出量なのか、全稼働期間の総量なのでしょうか。
<回答>
福島第一の汚染水に含まれるトリチウムの総量は 3.4x10の15乗(34,000兆)ベクレル(東電2014年現在)、貯留されている汚染水内の総量は7,600兆ベクレルと言われています(2016年3月現在)。今後も増える可能性はあります。
これに対し、六ヶ所再処理工場の年間排出量基準は1.8x10の15乗(18,000兆)ベクレルとされており、福島の約半分を1年で放出することになります。
なお英国のセラフィールドは25,000兆ベクレル/年、ラハーグは18,500兆ベクレル/年です。
しかし、再処理工場では濃度の基準も設定されておらず、推定では1億ベクレル/リットルを超えるとも指摘されており、漁業者から問題視されています。
規制当局の説明は、人体へのリスク評価(被ばく量評価)で規制しているので、この濃度と総量であっても、被ばく量は0.2mSV/年と評価しているので問題ないとの説明です。
なお、福島汚染水のトリチウム濃度は30万〜420万ベクレル/リットルで、これを希釈して、告示濃度(下記※)以下にして海水に放出する案が最も有力とされていますが、他にも地中処分や分離して水蒸気放出等の案も検討されています(政府の「トリチウムタスクフォース」が検討しています)。大体7年程度で排出を終えることができると推定されています。
※通常の原発では排出濃度基準が60,000Bq/l(リットル)、年間放出総量は22兆ベクレル/年程度です。
六ヶ所再処理工場の桁違いの排出量に驚きますが、人体に与える影響がなくとも、環境に与える影響は無視できない可能性があります。
※このご回答における各種数値については、引用された元資料にあたって、可能であればその在り処についても追加で記載したいと考えておりますが、まだ作業できていない段階での仮公開となることをお断りしておきます。(2017.8.4)