恒例の福島の甲状腺がん検診の解析。新聞も検討会のPDFも「増えた増えた」というブログを見ても何もわからないので、こればっかりは自分でやるしかない。
第17 回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成26年12月25日開催)
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-17.html
資料3-1 県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要【暫定版】 [PDFファイル/913KB]
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96850.pdf
資料3-2 県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況 [PDFファイル/842KB]
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96851.pdf
先行調査の結果も変わっているが、最後の表にまとめて記載します。
資料3-2のPDFから結果のスクリーンショット
この表だけではわかりにくいので、これまでと同じ一つの表にまとめまて比較してみました。
● 先行調査(2011-2013)
甲状腺がん
2014年8月発表 確定57+疑い46=103人
2014年12月発表 確定84+疑い24=108人
(確定 +27人、疑い -22人、合計 +5人)
有病率 34.8人 → 36.4人/10万人
(確定+疑い)
● 本格調査(2014-2015)
対象者数 216,669人 (今年度分)
一次受診者 82,101人(37.9%)
結果判定者 60,505人(73.7%)
B判定 457人
二次受診者 248人(54.3%)
細胞診 11人
甲状腺がん疑い 4人(手術 0人)
(A) 発症率(一次受診者に対する割合)=
(4/82,101)×10万=4.87人/10万人
(B) 一次の結果判定率×二次受診率=
(60,505/82,101)×(248/457)
一次受診者数あたりの発症率(推計)
(A) / (B)=(4/82,101)×(82,101/60,505)×(457/248)×10万=12.2人/10万人
(追記)二次検診の確定率62.5%はこの計算では考慮していません。
二次検診以降はその時点での程度に応じて生検、手術の選択がなされているはずだからです。
結果的に、ここでみた推計値よりも頻度が高くなる可能性はあります。
発症率
本格調査(今回発表)4.9~12.2人/10万人
(前回検査から2.5年分として、1.9~4.9人/10万人)
先行調査では、有病率 108/296,586=36.4人/10万人
発症率は、スクリーニング効果を
10年分として 3.6人/10万人
5年分として 7.3人
3年分として 12.1人
ここで何度も比較してきたベラルーシのグラフを見直してみる。
発症率
小児(0-14歳)のピークは1995年の4.0人/10万人
思春期(15-18歳)のピークは2001年の11.3人
若年成人(19-34歳)は2002年が6.9人で増加中(現在のデータは不明)
これと、
本格調査(今回発表)4.9~12.2人/10万人
(または、2.5年分として、1.9~4.9人/10万人)
先行調査 3.6人~12.1人(スクリーニング効果10年分~3年分)
という数字を比較してみる。
スクリーニング効果はあれほど叫び続けていたものだから、たった3年分ということはないだろう。ベースラインとするなら10年分が最低限。今回のデータも2.5年分で割った数字を採用すると、
先行調査 3.6人(2011-2013)
本格調査 1.9人~4.9人(2014) …事故後3年半
ベラルーシ
1990年 1.2人(小児) …事故後4年
1995年 1.4人(若年成人)~4.0人(小児) …事故後9年
ベースライン(1~3年目)も高く、今回の数字ですでにベラルーシの事故後9年目を上回る(推計値)。
この4人の腫瘍径は7-17mmだから、超音波検査精度の向上では説明がつかない。
今回の「4人」が8万人の中でたまたま固まって早くに検出された可能性も否定できない。
そもそも一次の受診率が伸び悩んでいるのが問題。
(NHKスペシャルでも取り上げられていた県や医大への不信が大きな要因)
検討会では「先行調査で見逃しがあった」という見苦しい(噴飯物の)意見(※)もあったようだが、自分たちでこれまで「自然発生の分を発症前にスクリーニング効果で発見したから」と主張してたのだから、今回のデータが「自然発生分」に相当するのか「原発事故による増加分」なのかをきちんと検討すべき。
県や医大への不信はこれでは解消できそうにない。
※(追記)見逃しが絶対なかったとは言えないが、これは当然検診のバイアスとして最初からあり得ることだし、それが全体のデータに影響してくるとは言えない。(というか、そのバイアスを含んだデータとして最初から議論している)
(追記)
今回のデータで「先行調査におけるスクリーニング効果が否定された」と断定するのは間違い。
先行調査の方が発症率は高く、スクリーニング効果はある。程度の問題。
「スクリーニング効果は否定された」と主張する人は、初年度から原発事故により多発していたが、4年目の本格調査で事故の影響がなくなって減少傾向に転じたと言っているに等しい。
この点、おわかりいただけるであろうか。
問題は、
1)スクリーニング効果は十分にあり(10年分かそれ以上)、そのベースラインが高いのは検査精度のためであり多発ではなく、今回の本格調査結果は「増加」ではなく2年間で平準化すれば自然発生のレベルにおさまる
2)スクリーニング効果は十分あったので1-3年目は多発ではないが、今回はじめて増加に転じた
3)スクリーニング効果は十分ではなく(3年程度)、初年度から多発傾向であり、今回さらに増加してきた
4)スクリーニング効果は十分ではなく(3年程度)、初年度から多発傾向だったが、今回のデータでは増加してきたかどうか判断することはできない
5)その他の解釈
のいずれかという議論で、そのためには更にデータの推移を見守る必要がある。
(そのためには、検診の受診率の低迷を何とかしなければいけない)
2)または3)であれば、隣接地域での検診も必要になる。
このいずれかかを判断するデータは出ていないと考える。2)に近いのではないかと懸念しているが。
第17 回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成26年12月25日開催)
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-17.html
資料3-1 県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要【暫定版】 [PDFファイル/913KB]
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96850.pdf
資料3-2 県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況 [PDFファイル/842KB]
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96851.pdf
先行調査の結果も変わっているが、最後の表にまとめて記載します。
資料3-2のPDFから結果のスクリーンショット
この表だけではわかりにくいので、これまでと同じ一つの表にまとめまて比較してみました。
● 先行調査(2011-2013)
甲状腺がん
2014年8月発表 確定57+疑い46=103人
2014年12月発表 確定84+疑い24=108人
(確定 +27人、疑い -22人、合計 +5人)
有病率 34.8人 → 36.4人/10万人
(確定+疑い)
● 本格調査(2014-2015)
対象者数 216,669人 (今年度分)
一次受診者 82,101人(37.9%)
結果判定者 60,505人(73.7%)
B判定 457人
二次受診者 248人(54.3%)
細胞診 11人
甲状腺がん疑い 4人(手術 0人)
(A) 発症率(一次受診者に対する割合)=
(4/82,101)×10万=4.87人/10万人
(B) 一次の結果判定率×二次受診率=
(60,505/82,101)×(248/457)
一次受診者数あたりの発症率(推計)
(A) / (B)=(4/82,101)×(82,101/60,505)×(457/248)×10万=12.2人/10万人
(追記)二次検診の確定率62.5%はこの計算では考慮していません。
二次検診以降はその時点での程度に応じて生検、手術の選択がなされているはずだからです。
結果的に、ここでみた推計値よりも頻度が高くなる可能性はあります。
発症率
本格調査(今回発表)4.9~12.2人/10万人
(前回検査から2.5年分として、1.9~4.9人/10万人)
先行調査では、有病率 108/296,586=36.4人/10万人
発症率は、スクリーニング効果を
10年分として 3.6人/10万人
5年分として 7.3人
3年分として 12.1人
ここで何度も比較してきたベラルーシのグラフを見直してみる。
発症率
小児(0-14歳)のピークは1995年の4.0人/10万人
思春期(15-18歳)のピークは2001年の11.3人
若年成人(19-34歳)は2002年が6.9人で増加中(現在のデータは不明)
これと、
本格調査(今回発表)4.9~12.2人/10万人
(または、2.5年分として、1.9~4.9人/10万人)
先行調査 3.6人~12.1人(スクリーニング効果10年分~3年分)
という数字を比較してみる。
スクリーニング効果はあれほど叫び続けていたものだから、たった3年分ということはないだろう。ベースラインとするなら10年分が最低限。今回のデータも2.5年分で割った数字を採用すると、
先行調査 3.6人(2011-2013)
本格調査 1.9人~4.9人(2014) …事故後3年半
ベラルーシ
1990年 1.2人(小児) …事故後4年
1995年 1.4人(若年成人)~4.0人(小児) …事故後9年
ベースライン(1~3年目)も高く、今回の数字ですでにベラルーシの事故後9年目を上回る(推計値)。
この4人の腫瘍径は7-17mmだから、超音波検査精度の向上では説明がつかない。
今回の「4人」が8万人の中でたまたま固まって早くに検出された可能性も否定できない。
そもそも一次の受診率が伸び悩んでいるのが問題。
(NHKスペシャルでも取り上げられていた県や医大への不信が大きな要因)
検討会では「先行調査で見逃しがあった」という見苦しい(噴飯物の)意見(※)もあったようだが、自分たちでこれまで「自然発生の分を発症前にスクリーニング効果で発見したから」と主張してたのだから、今回のデータが「自然発生分」に相当するのか「原発事故による増加分」なのかをきちんと検討すべき。
県や医大への不信はこれでは解消できそうにない。
※(追記)見逃しが絶対なかったとは言えないが、これは当然検診のバイアスとして最初からあり得ることだし、それが全体のデータに影響してくるとは言えない。(というか、そのバイアスを含んだデータとして最初から議論している)
(追記)
今回のデータで「先行調査におけるスクリーニング効果が否定された」と断定するのは間違い。
先行調査の方が発症率は高く、スクリーニング効果はある。程度の問題。
「スクリーニング効果は否定された」と主張する人は、初年度から原発事故により多発していたが、4年目の本格調査で事故の影響がなくなって減少傾向に転じたと言っているに等しい。
この点、おわかりいただけるであろうか。
問題は、
1)スクリーニング効果は十分にあり(10年分かそれ以上)、そのベースラインが高いのは検査精度のためであり多発ではなく、今回の本格調査結果は「増加」ではなく2年間で平準化すれば自然発生のレベルにおさまる
2)スクリーニング効果は十分あったので1-3年目は多発ではないが、今回はじめて増加に転じた
3)スクリーニング効果は十分ではなく(3年程度)、初年度から多発傾向であり、今回さらに増加してきた
4)スクリーニング効果は十分ではなく(3年程度)、初年度から多発傾向だったが、今回のデータでは増加してきたかどうか判断することはできない
5)その他の解釈
のいずれかという議論で、そのためには更にデータの推移を見守る必要がある。
(そのためには、検診の受診率の低迷を何とかしなければいけない)
2)または3)であれば、隣接地域での検診も必要になる。
このいずれかかを判断するデータは出ていないと考える。2)に近いのではないかと懸念しているが。
傾向はある程度見えてきたようですが
結論を導くには時期尚早ということですね。
待ちます。
というか、見守ります。