『多数決を疑う』(酒井豊貴)を借りて読み終わったところだが、1章「多数決からの脱却」2章「代替案を絞り込む」までの暫定的結論で、筆者が勧めるのは「ボルダルール」。
ボルダは18世紀後半、フランス革命前の才人。1位3点、2位2点、3位1点という配点で「順位をつけた投票」を行なった場合、単純な多数決よりも民意をより反映する。
わかりやすいように2014年の青森3区の候補者を使ってシミュレーションしてみる。数字は仮定のものです。もう一つ、田名部または松橋を1位にした人は全員大島を最下位にすると仮定。(以下、敬称略)
例1の場合、青森3区候補者のうち、大島(X)49、田名部(Y)43、松橋(Z)8人とすると(これは実際とは異なる数字です)、ボルダルールでは大島は田名部または松橋に決して勝てない。
例1で、大島に投票した49人のうち8人以上が田名部を2位にすれば田名部が当選、田名部2位が6人以下のときは松橋が当選。(グレーの部分の数字)
個別の候補者間の比較で、大島49<田名部51、大島49<松橋51となる。個別にジャンケンすれば負ける。これを「ペア敗者」と定義する。ペア敗者が当選しないようにするのが大きな目的。
その前段階で、2000年の米大統領選ブッシュ対ゴアで、優位に立っていたゴアがネーダー立候補により票が割れ、ブッシュが当選して歴史が大きく変わったことについて言及。
実際の2014年衆院選の得票率は例2に近く、ここでは大島は「ペア敗者」ではないが、大島に投票した51人のうち12人以上が田名部を2位にすると田名部が当選、4人以下だと松橋が当選。田名部2位が6~10人だと大島が当選、という結果になる。
もし大島陣営が田名部を2位に書かないようネガティブキャンペーンを張ると、1位の人数ではビリの松橋が当選してしまう。大島陣営側で「田名部2位の割合」を調整するのは不可能で、田名部当選の可能性が高かった。
(以上、わかりやすいように具体名で例示しましたが、あくまで仮定の話です)
確かに1位の3点と2位3位の2+1=3点が同点なので、このくらいの票差だと2位をどれくらいとるかが大きく、他の候補支持者から必ず3位にされてしまう大島は1位で大きく差をつけないと勝てない。
「ボルダルール」が「ペア敗者」を当選させることは決してないということは数学的に証明されているのだという。
同書の後半では、政策(法案)と対案をペアで比較してX→Y→Z→Xというジャンケンの力関係のような「サイクル」を生み出さないためには、64%の得票が必要だということも紹介(これも数学的に証明されている)。
64%という数字は、憲法改正発議に必要な3分の2と整合性があるように見えるが、実際には小選挙区制導入により過半数の得票で3分の2の議席数が得られる仕組みになったため、憲法は過半数で発議できる。
憲法96条は下位の法律によって実質的に変えられてしまっている。決して3分の2のハードルが高すぎるのではなく、現実は逆であり、国民投票の得票率を64%まで引き上げることが必要と筆者は主張。
しかし、現実に政府・与党がわざわざハードルを高くする憲法改正を発議する可能性はゼロ。1994年の「政治改革」による小選挙区制導入が、戻すことが不可能な「改憲」だったということ。
ボルダは18世紀後半、フランス革命前の才人。1位3点、2位2点、3位1点という配点で「順位をつけた投票」を行なった場合、単純な多数決よりも民意をより反映する。
わかりやすいように2014年の青森3区の候補者を使ってシミュレーションしてみる。数字は仮定のものです。もう一つ、田名部または松橋を1位にした人は全員大島を最下位にすると仮定。(以下、敬称略)
例1の場合、青森3区候補者のうち、大島(X)49、田名部(Y)43、松橋(Z)8人とすると(これは実際とは異なる数字です)、ボルダルールでは大島は田名部または松橋に決して勝てない。
例1で、大島に投票した49人のうち8人以上が田名部を2位にすれば田名部が当選、田名部2位が6人以下のときは松橋が当選。(グレーの部分の数字)
個別の候補者間の比較で、大島49<田名部51、大島49<松橋51となる。個別にジャンケンすれば負ける。これを「ペア敗者」と定義する。ペア敗者が当選しないようにするのが大きな目的。
その前段階で、2000年の米大統領選ブッシュ対ゴアで、優位に立っていたゴアがネーダー立候補により票が割れ、ブッシュが当選して歴史が大きく変わったことについて言及。
実際の2014年衆院選の得票率は例2に近く、ここでは大島は「ペア敗者」ではないが、大島に投票した51人のうち12人以上が田名部を2位にすると田名部が当選、4人以下だと松橋が当選。田名部2位が6~10人だと大島が当選、という結果になる。
もし大島陣営が田名部を2位に書かないようネガティブキャンペーンを張ると、1位の人数ではビリの松橋が当選してしまう。大島陣営側で「田名部2位の割合」を調整するのは不可能で、田名部当選の可能性が高かった。
(以上、わかりやすいように具体名で例示しましたが、あくまで仮定の話です)
確かに1位の3点と2位3位の2+1=3点が同点なので、このくらいの票差だと2位をどれくらいとるかが大きく、他の候補支持者から必ず3位にされてしまう大島は1位で大きく差をつけないと勝てない。
「ボルダルール」が「ペア敗者」を当選させることは決してないということは数学的に証明されているのだという。
同書の後半では、政策(法案)と対案をペアで比較してX→Y→Z→Xというジャンケンの力関係のような「サイクル」を生み出さないためには、64%の得票が必要だということも紹介(これも数学的に証明されている)。
64%という数字は、憲法改正発議に必要な3分の2と整合性があるように見えるが、実際には小選挙区制導入により過半数の得票で3分の2の議席数が得られる仕組みになったため、憲法は過半数で発議できる。
憲法96条は下位の法律によって実質的に変えられてしまっている。決して3分の2のハードルが高すぎるのではなく、現実は逆であり、国民投票の得票率を64%まで引き上げることが必要と筆者は主張。
しかし、現実に政府・与党がわざわざハードルを高くする憲法改正を発議する可能性はゼロ。1994年の「政治改革」による小選挙区制導入が、戻すことが不可能な「改憲」だったということ。