<7/18のつづき>
蜷川幸雄氏は。舞台の上に全身全霊を投じることのできる演者を好む。自分の内側から。感情をわしづかみにし、舞台に投げ突けてしまえる役者を好む。
藤原竜也氏は。そのデビューの経緯からも、天才少年の呼び声が高く。ただ、その演目の『身毒丸』が苦手とする題材だったために、観ることなくここまできた。天才という響きから、感覚先行型(←こういうのも好き)を連想するのは短慮かとも思うが。ニナガワ氏への先入観も手伝って、そのように思い込んでいたことは事実。
実際に見た藤原氏の演技には。所作や声色の隅々にまで、緻密な計算がきちんと見えた。見えるから、まだ完成されていないね、なんてちょっと思ったりもする。そうだ、この年齢(現在23歳)で完成していてたまるもんか、と思ったりもする。
前置きはここまで。いまだかつて無い、不思議な体験をした。
世界の終焉の絶望を語る場面では。たとえば二通りの演出が考えられると思う。今作のように激情にまかせて叫ぶこと。極限まで抑えて語ること。三島由紀夫原作であるから、おそらくは後者のほうが適当であろうと考える。演者が藤原氏でなければ、だ。
フジワラが、ニナガワのミシマへの挑戦を可能にしている。美しい世界感を構築した作家。あれだけの言葉を駆使して作り上げた世界は。少しでも崩したら、二度と戻すことは叶わないと思われる。なのに、観たのは。崩した後に、より大きく再生された舞台だった。
藤原氏が、全力で叩きつけた感情は。板の上で跳ね散って。客席にまで届く。それに、捕えられて生まれ膨れ上がっていく、恐れや不安。が。あろうことか・・・! 彼の内に吸い込まれていって昇華される。多分。これが、『藤原竜也』の真骨頂なのだ。
こんな役者を使いこなせて。手放す演出家がいるわけがない。蜷川さんごめん。執着の理由を、観もしないで、わかる気がするなんて言ってたこと。そんな次元ではなかったんだ。
失礼を承知で言う。藤原氏はまだ完成されていない。だから。彼が、どこに向けて、どのように変貌していくのかを。今なら、追って見るのに、まだ間に合う。だから、観ていこう。
3回連載、おつきあいくださった方。ありがとう。以上、現段階で感じたことは全部書いたかな。願うのは。竜也くんを、最初からずっと見つめていたファンの方々に失礼になっていなければ良いな、ということ。何ゆえ彼に関しては新参者なので、異論反論大歓迎(もちろん賛論はもっとも嬉しいけれど←小心者)。
蜷川幸雄氏は。舞台の上に全身全霊を投じることのできる演者を好む。自分の内側から。感情をわしづかみにし、舞台に投げ突けてしまえる役者を好む。
藤原竜也氏は。そのデビューの経緯からも、天才少年の呼び声が高く。ただ、その演目の『身毒丸』が苦手とする題材だったために、観ることなくここまできた。天才という響きから、感覚先行型(←こういうのも好き)を連想するのは短慮かとも思うが。ニナガワ氏への先入観も手伝って、そのように思い込んでいたことは事実。
実際に見た藤原氏の演技には。所作や声色の隅々にまで、緻密な計算がきちんと見えた。見えるから、まだ完成されていないね、なんてちょっと思ったりもする。そうだ、この年齢(現在23歳)で完成していてたまるもんか、と思ったりもする。
前置きはここまで。いまだかつて無い、不思議な体験をした。
世界の終焉の絶望を語る場面では。たとえば二通りの演出が考えられると思う。今作のように激情にまかせて叫ぶこと。極限まで抑えて語ること。三島由紀夫原作であるから、おそらくは後者のほうが適当であろうと考える。演者が藤原氏でなければ、だ。
フジワラが、ニナガワのミシマへの挑戦を可能にしている。美しい世界感を構築した作家。あれだけの言葉を駆使して作り上げた世界は。少しでも崩したら、二度と戻すことは叶わないと思われる。なのに、観たのは。崩した後に、より大きく再生された舞台だった。
藤原氏が、全力で叩きつけた感情は。板の上で跳ね散って。客席にまで届く。それに、捕えられて生まれ膨れ上がっていく、恐れや不安。が。あろうことか・・・! 彼の内に吸い込まれていって昇華される。多分。これが、『藤原竜也』の真骨頂なのだ。
こんな役者を使いこなせて。手放す演出家がいるわけがない。蜷川さんごめん。執着の理由を、観もしないで、わかる気がするなんて言ってたこと。そんな次元ではなかったんだ。
失礼を承知で言う。藤原氏はまだ完成されていない。だから。彼が、どこに向けて、どのように変貌していくのかを。今なら、追って見るのに、まだ間に合う。だから、観ていこう。
3回連載、おつきあいくださった方。ありがとう。以上、現段階で感じたことは全部書いたかな。願うのは。竜也くんを、最初からずっと見つめていたファンの方々に失礼になっていなければ良いな、ということ。何ゆえ彼に関しては新参者なので、異論反論大歓迎(もちろん賛論はもっとも嬉しいけれど←小心者)。