持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

近代能楽集

2005-07-01 00:15:38 | 演劇:予告編
『近代能楽集』 MODERN NOH PLAYS
劇場:シアターBRAVA!
期間:2005/7/9 ~ 7/17
作:三島由紀夫
演出:蜷川幸雄
『卒塔婆小町』/出演:壤晴彦,高橋洋 他
『弱法師』/出演:藤原竜也,夏木マリ,瑳川哲朗,鷲尾真知子 他


当初、狙える日が楽日のみという微妙な状況で。楽日チケットなんぞ、早々に完売し。残念さに、何も書かずにいたのだけれど。予定が変更。本日チケット引取完了。

『卒塔婆小町』は1990年に観劇。確か、エディンバラ国際演劇祭の凱旋公演だったと記憶しているが。自信はない。蜷川氏演出作品は、初ではなかったけれど。これほど印象的だった舞台はない。出演者は、壤晴彦氏と井上倫宏氏。

芝居の間中。舞台に、椿の花が降り続ける。ぱさ、という乾いた音が、絶えることなく続く。子どものころの家の近所に、椿の垣根があって。同じように落ちる光景を知っている。武家では、椿の花は忌み嫌われていたのだと。そんな話を聞いたのも、当時だった。形を保ったまま、まるごと落ちる風情に、斬首を連想するからだと聞いて。満開の季節には、足早にこの垣根を通り過ぎた。

こんな舞台装置のなかで。ぼろを纏い老醜をさらす老女に、青年が出会う。老女が、若く美しかった過去の栄光を語り始める。姿はそのままなのに。いつしか、老女が絶世の美女に見えてくる。狂おしく小町を見上げる青年が美しく見えて。美男美女の恋情に酩酊する。
この物語は。観終わって、劇場を一歩出たところで完成する。舞台が見せた、ひとときの夢を。現実の空気に触れながら。幻を追う心持で、何度も何度も思い出す。

ごめん。予告でなく。昔語りになってしまったよ。こんなに鮮明に思い出せる自身に驚いてもいる。こういう演目は。再度観て、記憶の上書きをしないほうがいいのかもしれないが。『弱法師』が観たいので、行ってくる。
ここまで書いたら。当時のもうひとつの演目も。『邯鄲』。主演は松田洋治氏と松本留美氏。生意気なのに憎みきれない次郎と、愛情過多だけど退けるには可愛い菊を。思い出す。