劇団東京ヴォードヴィルショー 第60回公演 『竜馬の妻とその夫と愛人』
劇場:シアターBRAVA!
作:三谷幸喜
演出:山田和也
出演:佐藤B作,佐渡稔,あめくみちこ,平田満(客演)
近々。坂本竜馬の十三回忌が大々的に執り行われようとしている。竜馬の妻・おりょうを法事に呼ぶべきなれど。彼女の行状を考えるに、英雄・竜馬の妻とは名乗らせがたく。。舞台は、横須賀の貧しい長屋。彼女が、新しい夫・松兵衛と住まうところに。彼女の妹婿・覚兵衛が訪れる。その生き方が恥ずべきものならば、おりょうを斬る、という使命を持って。
全編を通して浮かび上がるのは、英雄・坂本竜馬の大きすぎる存在。おりょうに言い寄る男は、誰一人として彼の姿を考えずにいられない。そんなものに捉われないほどの男を、おりょうは求め続けているのかもしれない。けれど、唯一とらわれないでいられたのは。優しいだけがとりえの、うだつのあがらぬ男で。それではやはり、物足りない。飲んで乱れて、寂しさに荒れる。それをも、待つだけの夫。そんな時期に現われた、虎蔵。竜馬を知らぬと言い放ち、されども彷彿させる言動を取る男に。おりょうが、惚れぬわけがない。
あめく氏演じるおりょうは、他人(ひと)を人とも思わぬ振る舞いをする。史実、その勝気さゆえに周囲の者に嫌われたという。強がるなかに、愛する人を突然失った悲しさを、あますところなくにじませて。さればこそ、虎蔵に惹かれたのだと思わせる。虎蔵は、姿なりは写真から抜けだしたような竜馬なのだけど。あっという間に化けの皮が剥がれ、ただの竜馬フリークなのだと知れるのに時間はかからない。なのに、滑稽さを笑って捨てるには。やはり竜馬の存在は大きすぎるのだ。圧倒されて、誰もが足元を見失うほどに。ここだけ、反転にて→おりょうが、胸から吐き出す台詞の。馬鹿にするな。私は坂本竜馬の妻だ、は。決して失われることのない自尊心と愛で。とうとう、居場所を捨て去る結末は。とても、哀しい。
三谷氏の、史実とフィクションを混じえて描きあげる作品は。2004年の大河ドラマ『新選組!』にて、堪能させていただいたが。ここまで、達者な演者にかかれば。まるで目の前で事柄がおこっているかのように、真実味がただよう。それでいて、かっちり笑わせて、きっちり泣かせる芝居には。絵本を読み進めるかのような安心感もあり。何よりも、大切なのは。人を心から「愛する」ことなのだと、あらためて知らされる。
<追記> 映画版では、竜馬の模倣男は江口洋介氏だそうで(←大河では本物)。
こういう洒落っ気は三谷氏ならではで。・・・観たくなるじゃないか。
劇場:シアターBRAVA!
作:三谷幸喜
演出:山田和也
出演:佐藤B作,佐渡稔,あめくみちこ,平田満(客演)
近々。坂本竜馬の十三回忌が大々的に執り行われようとしている。竜馬の妻・おりょうを法事に呼ぶべきなれど。彼女の行状を考えるに、英雄・竜馬の妻とは名乗らせがたく。。舞台は、横須賀の貧しい長屋。彼女が、新しい夫・松兵衛と住まうところに。彼女の妹婿・覚兵衛が訪れる。その生き方が恥ずべきものならば、おりょうを斬る、という使命を持って。
全編を通して浮かび上がるのは、英雄・坂本竜馬の大きすぎる存在。おりょうに言い寄る男は、誰一人として彼の姿を考えずにいられない。そんなものに捉われないほどの男を、おりょうは求め続けているのかもしれない。けれど、唯一とらわれないでいられたのは。優しいだけがとりえの、うだつのあがらぬ男で。それではやはり、物足りない。飲んで乱れて、寂しさに荒れる。それをも、待つだけの夫。そんな時期に現われた、虎蔵。竜馬を知らぬと言い放ち、されども彷彿させる言動を取る男に。おりょうが、惚れぬわけがない。
あめく氏演じるおりょうは、他人(ひと)を人とも思わぬ振る舞いをする。史実、その勝気さゆえに周囲の者に嫌われたという。強がるなかに、愛する人を突然失った悲しさを、あますところなくにじませて。さればこそ、虎蔵に惹かれたのだと思わせる。虎蔵は、姿なりは写真から抜けだしたような竜馬なのだけど。あっという間に化けの皮が剥がれ、ただの竜馬フリークなのだと知れるのに時間はかからない。なのに、滑稽さを笑って捨てるには。やはり竜馬の存在は大きすぎるのだ。圧倒されて、誰もが足元を見失うほどに。ここだけ、反転にて→おりょうが、胸から吐き出す台詞の。馬鹿にするな。私は坂本竜馬の妻だ、は。決して失われることのない自尊心と愛で。とうとう、居場所を捨て去る結末は。とても、哀しい。
三谷氏の、史実とフィクションを混じえて描きあげる作品は。2004年の大河ドラマ『新選組!』にて、堪能させていただいたが。ここまで、達者な演者にかかれば。まるで目の前で事柄がおこっているかのように、真実味がただよう。それでいて、かっちり笑わせて、きっちり泣かせる芝居には。絵本を読み進めるかのような安心感もあり。何よりも、大切なのは。人を心から「愛する」ことなのだと、あらためて知らされる。
<追記> 映画版では、竜馬の模倣男は江口洋介氏だそうで(←大河では本物)。
こういう洒落っ気は三谷氏ならではで。・・・観たくなるじゃないか。