「土の上に生まれ、土の生むものを食うて生き、而(しこう)して
死んで土になる。我儕(われら)は畢竟(ひっきょう)土の化物である」と
明治の文豪・徳富蘆花が人間を“土の化物”と表現している。
土の化物とは至言だが、むかしから「身土不二」と言う考えがあり、
「人の身体と土、気候、風土は切り離せず、人が生まれ育った土地の
三里(12km)四方で獲れた旬のものを食べることがよい」と教えていた。
生命の源は「食」であり、「食」の源は「土」であるが、
その土が化学肥料、農薬などの化学物質で死んでいる。
メダカやホタルをはじめ数多くの田んぼや畑の生き物たちが
危機に瀕している。
土が病み、食べ物が病み、病んだ食べ物から生命力のある身体が
生まれるわけがない。
虫食い痕がなく、形や色艶のよい農作物を安い価格で購入したいという
消費者と経済合理的な価値観に基づき、一定の耕地面積から効率よく
最大限に収穫をあげようとする生産者。
そこには、「人の生命を養い健康を保つ」という一番大切な考えが
置き去りにされている。
生産農家も経済合理的な価値観を捨て、生きた土を取り戻す有機農業に
切り替え、生命力のある野菜作りに励むべきである。
そのためにも、「安い」もの作りから「価値」のあるもの作りに
エールをおくる消費者が増えなければならない。