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佐川氏が証人喚問で陥った「悪魔の証明」という罠 2018.3.30 大前 治弁護士

2018-04-01 15:42:31 | 森友学園疑惑

 

佐川氏が証人喚問で陥った「悪魔の証明」という罠

なぜその証言を信用できないか
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55046  2018.3.30

森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざんの問題で、3月27日に衆参両院でおこなわれた財務省の佐川宣寿・前理財局長の証人喚問。

「刑事訴追の恐れ」を理由とする証言拒否によって辛くも逃げきったようにみえるが、佐川氏の証言には隠れた「落とし穴」があった。

この証言は信用できるのか。安倍政権や大阪府の思惑(過去記事参照)も視野に入れつつ、私たちが冷静な目で判断することが求められている。

〔PHOTO〕gettyimages

自信満々の「悪魔の証明」で窮地に…

佐川氏の証人喚問の特徴は、刑事訴追の恐れがあるとして40回以上も証言を拒否しながら、一方で「首相官邸からの指示はなかった」と自信満々で言い切ったところにある。

このように、「なかった」という事実を証明することを「悪魔の証明」という。不存在を証明するには、全ての存在事実を調査し尽さなければならない。それは事実上不可能であるから、こう呼ばれる。

佐川氏は、自信満々でこの「悪魔の証明」をやってしまったのである。それが自分を苦しめることに気付いているだろうか。

首相側からの指示が「なかった」という証言は、「私は、文書改ざんに最初から最後まで全面的にかかわっていたから、不存在を証明できる立場にある」という前提があって初めて信用できる。

とすると、佐川氏は文書改ざんの全面的な実行者あるいは主犯格に近い立場であることを自認しているに等しい。

首相の指示がないのに、勝手に自分たちが文書を改ざんした。そのことを認めて重い罪を背負う供述をしたことになる。

 

議員への反論で、また墓穴を掘る

この点について江田健司衆議院議員は、「もしあなたが、この改ざん問題に関与していないとすれば、そんな(理財局以外の者は誰もかかわっていないという)断言答弁はできないはず」と糺した。

悪魔の証明の不合理を突く指摘である。

これに対し佐川氏は、「官邸や本省から指示があれば私に報告があるはずだが、なかった」と言ってのけた。だから私は不存在を証明できるのだ、という佐川氏の言い分である。

しかし、これは佐川氏の証言の不合理性をさらに強めている。

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なぜなら、首相官邸からの指示がなかったという根拠を、「報告を受けていない」という一点に絞り込んでしまったからである。しかも、報告を受けるという受け身の姿勢にあったことを自白している。

これでは、全ての存在事実を精査したから悪魔の証明をできるという前提が崩れてしまう。佐川氏の証言が根底から信用できなくなってしまう。

この証言によって佐川氏が僅かでも有利になるとすれば、「私が報告を受けていないところで、首相からの指示があったかもしれない」という余地があるところである。

要するに、「私は悪くない。首相と部下が悪いのだ」という逃げ方である。

しかし、佐川氏がそんな逃げ口上を意図したとは思えない。やはり、意図しないままに自ら不利な証言をしてしまった、というところであろう。

「首相から指示された」と言うはずがない

野党が強く求めて実現した証人喚問であったが、証言拒否の繰り返しによって「不発に終わった」とか「佐川氏は逃げ切った」という評価も散見される。

しかし、それは見当違いである。

そもそも、佐川氏が国会で「首相から指示されました」と言うはずがない。

もし、野党議員が「佐川氏に自白させて謝罪させる」ことを目標としたのであれば、その戦略は誤りであり見通しが甘すぎる。

先ほどの江田議員の質問をみれば、さすがにそんな甘い見通しではなかったと分かる。証言拒否を予測して、的確に準備された質問であった。

 

また、小池晃参議院議員は、佐川氏が昨年2月に国会で改ざん前の文書に基づいて答弁をしていた事実を指摘し、その文書には財務局が森友学園を訪問したことが書いてあるから、それを知らなかったと国会で答弁していたのは虚偽にあたるのではないかと指摘した。

この質問は、自白させることを目的としていない。客観的証拠との整合性を論理的に問う質問である。しかも、刑事訴追の可能性は皆無であるから、佐川氏は正面から回答せざるを得ない。

ところが佐川氏は、自分の補佐人(熊田彰英弁護士)から耳打ちを受けて、証言を拒否した。

それでも小池議員の質問は見事に目的を達成した。佐川氏の供述の不自然性を国民に理解させることに成功したからである。

大切なのは「自白したか否か」ではない

佐川氏は証人尋問をうまく逃げきったとはいえない。自信満々の「悪魔の証明」で墓穴を掘り、証言拒否の繰り返しによって多数の事実を隠していることが浮き彫りになった。

大切なのは、佐川氏の供述態度を見渡して、その証言が信用に値するものか否かを私たち自身が的確に判断することにある。

私は弁護士として日常的に裁判にかかわっており、法廷で相手側に尋問して証言させることもある。

そのときに、相手側が「私が嘘をついてました」と土下座をする場面は絶対にないと心得ている。むしろ、相手側は最後まで嘘をつくであろうとさえ予測して準備をする。

だからこそ、相手側へ質問をするときには、「本当のことを話させる」ことを目標にせず、「分かりやすく見抜ける嘘をつかせる」ことを目標とする。

一例を示してみよう。

法廷で「あの人が殺人犯です。夕日が東に沈む方向に、ハッキリ見ました」と証言する目撃者に対して、どう質問するべきだろうか。

「あなたは間違っている! 夕日は東には沈まないはずだ!」などと法廷で論争をする必要はない。

「あなたは、自分の目撃が絶対に正しいと思っているのですね」と尋ねたうえで、「太陽が東に沈むのを間違いなく見たのですね」と言う。それだけで質問を終わらせてよい。

これをみた裁判官は、証人が嘘をついていると分かるはずだ。

今回の佐川氏の証人喚問も同じように、論理性や客観的証拠との整合性によって真偽を判断できる。佐川氏が自白をしたかどうかは重要ではない。

重要案件について前任者から十分な引継ぎを受けていない。決裁者として関係文書を詳細に検討していない。それでも首相や本省からの指示はなかったと断言できる。

そんな佐川氏の証言を信用できるのか。私たちの判断が問われている。

野党議員にも警鐘を鳴らしたい

野党議員にも警鐘を鳴らしたい。

3月23日と26日に相次いで野党議員が籠池泰典氏(森友学園前理事長)に面会して、その直後に拘置所の出口で会話内容を発表したことに、私は危うさを感じた。

籠池氏の証言は本当に信用できるか。それに全面的に依拠して安倍政権を追及できるだけの価値があるのか。

籠池氏の自白に依りかからず、客観的証拠との整合性から政権を追い詰めることに注力すべきではないか。野党は、足元をすくわれないよう真摯に再検討するべきである。

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私が弁護士であるがゆえの心配過剰かもしれないが、黙秘権が保障されている被告人が国会議員による「調査の対象」とされたことにも危惧を覚えた。

籠池氏には「話す権利」もあるが「黙秘する権利」もある。それが事実上侵害される事態が心配である。

しかも、勾留が長期にわたっていることへの批判を打ち消すかのように、「籠池氏は元気そうで、血色もよかった」という国会議員の発言も報道された。

面会を終えてすぐに、テレビカメラの前でそんなことを言う国会議員は、一体何のために面会をしたのか。

籠池氏を批判する与党の国会議員が、彼との面会のために行列を作る事態が起きたら、野党議員はそれを批判できるのか。

これは、一般人との自由な面会を認めるか否かの問題ではない。国会議員による調査という名目ならば何をしてもよいのかという問題である。

事実を解明するには、そのための手続の正当性・公正性が求められる。そのことは与野党を問わず全ての国会議員が肝に銘ずるべきである。

 

 

 

 

 


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