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進むも退くも地獄、追い込まれる黒田日銀

2014-12-20 11:18:08 | シェアー

http://toyokeizai.net/articles/-/56297?cx_click_topnews=article_headerより転載

進むも退くも地獄、追い込まれる黒田日銀

2015年、日銀は「アウェイ」の戦いに

選挙の「打ち出の小槌」として使われ、選挙後は責任をとらされるだけ?黒田総裁の苦悩は深いはずだ(ロイター/アフロ)

政治は動かないが、金融市場は動いている。

先週末からいろんなことが起きている。

日本の衆議院選挙は、細かく言えばいろいろあるが、要は何事もなく終わった。そりゃそうだ。争点が何もなく、誰も望んでいない選挙であれば、何かが起こるはずがない。衆議院議員の任期が伸びたことと、政党でいえば、維新が生き残ったこと、この2つがファクトとして意味のあることだろう。

民主党は代表交代で変わることができるか、ということがあるが、現時点では期待できないというのが人々の見方だろう。ただし、人々の見方は外れることも多い。

なぜ今回のロシア危機は、1998年時と違うのか

動かない日本政治に対して、金融市場は、激動の1週間だ。原油暴落からロシア危機となり、新興国関連の資産、通貨が悪影響を受けている。資源国以外の新興国は、原油安はむしろ大きなプラスなはずだが、そんなことは関係ない。金融資産ポートフォリオのリスク分散は、投資対象資産のファンダメンタルリスクを分散するのが、理論的には正しいが、現実には、投資している投資家、その資産の裏にいる投資家を分散する必要がある。

同じ投資家は同じセンチメントに支配され、同じ財務状況に支配されるから、売るときは一斉に売ってくる。いわゆる、リスクオフとなれば、全部のポジションを落としてくるから、それらが下落するのだ。だから、ここまでブームだったものが下落する。だから、米国株も下落し、日本株も下落し、ドル円では、ドルが売られ、円売りポジションが解消されたのだ。

ただ、この危機は1998年のロシア危機と異なり、広がりを持たないだろう。全体はそこまで悪くないし、LTCMは存在しないからだ。ただ、ロシアは難しい。ここを凌いでも、経済的にもそうだが、政治的な構造、世界でのポジションが悪すぎて、今後も長期的に苦しむことになるだろう。

一方、原油はどこかでまもなく下げ止まると予想するが、この予想が外れたとしても、大きな影響はないだろう。金融市場は落ち着きを取り戻すだろう。ただし、急回復もない。いったん手じまいということが起きているだけであるが、一方、ここから、もう一度派手にリスクテイク、という流れにもなりにくい。これまで良すぎたから、しばらくは地味ではないか。

しかし、12月17日午後(日本時間は18日早朝)の米国株は上昇した。続く18日も続伸した。FOMCがあり、米国中央銀行FEDの金融政策の変更なしが発表されたからだ。声明文の文言は変わったが、予想通りであり、また、数か月(今後数回のFOMCでは)は、金利引き上げはないとイエレンが記者会見で明言したからだ。

私は、イエレンFRB議長の記者会見をライブで見た。FEDは日銀と違って、いつでも記者会見をするわけではないので、貴重な映像だったが、イエレンは大分自信をつけてきたように見えた。記者会見と市場を支配したバーナンキとは違うが、それでもそれなりに主導権を持ってきた。これが、金融政策において最も重要なことなのだ。

岐路に立たされた日銀

一方、今後の日本の中央銀行、日銀の金融政策が、日本の金融市場、日本経済の運命を決める。2015年および2016年は、すべては日銀にかかってくるだろう。

日銀は岐路に立たされている。一見、黒田総裁は、記者会見も市場も支配している。10月31日の追加金融緩和でも、投資家の度肝を抜き、市場は混乱しつつも、狂喜乱舞し、株価は急騰したのだ。ただし、それよりも大きく動いた、あるいは、持続的に動き続けたのは為替市場で、円安が急激に進行し、一時1ドル121円台まであった。

ただ、このコラムでも指摘したように、記者会見には変化が見られた。ある種、記者たちににこやかに丁寧に答えながら、内容的には見下しているともいえるような、黒田総裁による記者会見の知的支配という雰囲気が消失していた。記者たちは、疑問を素直にぶつけ続けた。流れは変わったのである。

実際、これまで、アベノミクスを、空気を読んで支持していた(あるいは黙認していた)エコノミスト、経済学者たちが、この追加緩和には疑問を呈したり、リスクを指摘したりし始めたのだ。いまや、極端なリフレ論者以外は、日銀の金融政策を全面的に支持しているのは、金融が分かっていない政治家のみとなった。

そして、その政治家たちは、選挙を終え、もはや、日銀にもGPIFにも関心を失った。株価を上げる、打ち出の小槌としての役割は終わったからだ。そして、GPIFはむしろ政治に見捨てられた方が仕事はしやすいので、2015年は、ひそやかに政治の影響を排除しつつ、まともな運用を取り戻すように動くことが可能となる(実際に、その必要性を理解しているメンバーがGPIFにどれだけいるかはわからないが)。

一方、見捨てられた日銀は、それにもかかわらず、金融市場の運命を握らされる。しかも、コントロール力を失い、手段も限定された中で、責任だけを負わされる。黒田氏も、この2年とは全く違った環境で、金融市場と対峙しなければならない。それが2015年だ。

黒田日銀には、いよいよ手段がない。進むも地獄引くも地獄だ。これ以上、国債を買うスピードを上げることもできない。

徐々に追い込まれ、窮地に立たされる国債市場

しかし、黒田理論によれば、もっとも対処すべきリスクである、足元の物価は上昇率を低下させる。手段がもうないから。動くことはできないが、動かなければ、これまでの政策との整合性は取れない。リフレ政策、あるいは期待インフレ率2%維持最優先政策を展開せざるを得なくなるが、それはしないだろう。

一方、政治は、経済政策は、日銀の緩和だけに頼り、後は何もしない、ということだから、景気は増税回避で悪くないだろうし、法人税減税という株価引き上げの最後の玉も使うだろうが、財政再建には無関心だから、国債市場は徐々に追い込まれる。

この国債市場を延命するためには、追加国債購入を止めるわけにはいかないが、どこかで、この政策もスピードダウン、方向転換を図る必要がある。

そのときは、日銀以外誰も買い手がいなくなった、あるいは日銀に買わせることだけを目的としたトレーダー以外誰もいなくなった国債市場は窮地に立たされる。もし、10%への消費税率引き上げが再度延期されるようなことがあれば、それがきっかけとなるだろう。

2015年は、日銀の年になるが、以前の攻めの2年と違って、アウェイの戦い、守り抜く年となるだろう。

 

 


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