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【首都圏】
「日本は米国の属国なのか」 空襲指揮の米軍人叙勲を疑問視
勲章の意味を問い続ける袖井林二郎氏=東京都新宿区で |
半世紀前、東京大空襲を指揮した米軍人に勲一等が与えられた。戦後の日米関係に詳しい法政大学名誉教授の袖井林二郎氏(83)は、この叙勲の意味を問い続けている。「米国にこびへつらう政府。日本は米国の属国なのか」。戦後七十年の節目に、その思いはますます強まる。日米安保体制を強化する安全保障関連法案の審議が進むなか、「あの勲章とつながっている」と憤る。 (飯田孝幸)
勲一等を授与されたのはカーチス・ルメイ元空軍大将(故人)。戦略爆撃の専門家で、東京大空襲だけでなく、日本全土への空襲を指揮し、広島・長崎への原爆投下命令を実行した責任者でもある。ルメイ氏は一九六四年十二月、航空自衛隊の育成に貢献したとして、勲一等旭日大綬章を授与された。
九〇年代後半、ルメイ氏に勲章とともに授与された証書(勲記)を見てみたいと考えた袖井氏は、旧知の米国立スミソニアン航空宇宙博物館の元職員に相談。遺族から寄贈された勲記が博物館の倉庫に保管されていた。袖井氏は一人でも多くの日本人が、この勲章について知るべきだと思い、手に入れた勲記の写しを、各地の戦争関係の資料館などに贈った。
「勲章授与は空襲被害者への冒涜(ぼうとく)。日本政府はそういうことに思いを致すこともなかった」と批判する。当時、叙勲の是非について、国民の間でほとんど議論にならなかった。「そんなことでいいのか、今からでも議論すべきだ」と考える。
袖井氏は勲章も安保法案も、「属国であることの表れだ」と思う。三十日、国会周辺で法案に反対する人々が今夏最大規模のデモをする。最近、大病を患った袖井氏だが、「つえをついてでも参加する」と話す。