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特集ワイド:続報真相 戦争はもうかりますか? (毎日新聞)

2015-10-23 21:01:17 | 平和 戦争 自衛隊

毎日新聞http://mainichi.jp/shimen/news/20151023dde012010003000c.html?fm=mnmより転載

特集ワイド:続報真相 戦争はもうかりますか?

毎日新聞 2015年10月23日 東京夕刊

日本の防衛産業の主な顔ぶれと契約実績(2014年度の上位20社)
日本の防衛産業の主な顔ぶれと契約実績(2014年度の上位20社)
 

 日本は「戦争でもうける国」になるのか−−。安全保障関連法の成立に続き、武器などの研究開発や調達、輸出をまとめて担う防衛装備庁が1日、発足した。昨年の「武器輸出三原則」撤廃と「防衛装備移転三原則(新三原則)」の閣議決定に伴い、武器輸出は「原則禁止」から「原則解禁」に大転換しており、これでアベノミクスの成長戦略に武器輸出を位置づける国の体制が組織上、整った。平和国家の根本が揺らいでいる。

 ◇1841件 新三原則に基づく昨年度の防衛装備輸出許可数

 「防衛装備品の海外移転は国家戦略として推進すべきである」。防衛装備庁が走り出す直前の9月、日本経済団体連合会(経団連)は「防衛産業政策の実行に向けた提言」を発表した。提言は装備品の運用、教育・訓練の提供、適切な収益の確保なども重要な要素として挙げる。「防衛装備品」とは武器や兵器、それらの部品、関連する装備や技術のことだ。

 軍事評論家の前田哲男さんが指摘する。「武器輸出三原則は国是とされ、対外的には憲法9条の具体例のような存在でしたが、財界にとっては目の上のたんこぶで、日本経団連になる前の経団連の時代から規制緩和や撤廃を言い続けてきた。その目標を達成したので、次のステップを目指そうというわけです」

 そもそも財界は「自民党国防族、米国の軍産複合体とともに『安保ムラ』とも呼べる密接な関係を保ってきた」と前田さん。例えば「1兆円枠」ともいわれる次期支援戦闘機の選定・調達は関連装備のライセンス生産といったかたちで、日本企業に安定的な利益をもたらした。今回の武器輸出解禁、防衛装備庁の創設も、同じムラに属する「財」の要望に「政」が応えたものとも言えそうだ。

 武器輸出三原則は1967年、佐藤栄作首相が▽共産圏▽国連決議で武器輸出が禁止された国▽国際紛争当事国とその恐れのある国−−に対して、武器を輸出してはならないと国会答弁したのが原形で、「三原則」として定着した。76年には三木武夫首相が国際紛争などの助長を回避するため、三原則以外の対象地域でも「武器輸出は慎む」として全面禁輸に拡大した。

 しかし、実際には「例外措置の積み重ねで、三原則は足もとから崩されてきた」(前田さん)。83年の中曽根康弘首相の時、次期支援戦闘機の日米共同開発計画が持ち上がると、米国への武器技術の供与は例外とする初の政策転換をし、2000年代には「弾道ミサイル防衛」分野に広がった。民主党政権でも大幅に規制が緩和され、「例外措置」は計21件に達した。

 一方、安倍晋三政権が昨年4月に閣議決定した新三原則では、「平和貢献・国際協力の推進や日本の安全保障に資する」「紛争当事国への輸出は禁止」など一定の要件を満たせば武器輸出を認める。目的外使用や第三国への移転には、日本政府の事前同意を相手国に義務付けた。

 だが、早くも「抜け穴」が露呈した。政府は昨年7月、米企業への地対空誘導弾「パトリオット(PAC2)」の部品(標的を追尾するセンサーの一部)輸出を承認したが、このPAC2がカタールに再輸出されるというのだ。米企業はPAC2の部品のライセンスを握っている。日本からの輸出が「ライセンス元への納入」に該当する場合、日本側の事前同意なしに第三国に移転できるという例外規定がある。

 「もともと武器輸出三原則の規制を取り払おうとして新三原則ができたので、これからも例外措置の積み重ねでますますザルのように、だだ漏れしていくだろう」と前田さんは危惧する。日本で生産された部品が、知らないうちに海外の紛争地で使われる可能性は否定できない。

 新三原則に基づく昨年度の防衛装備の輸出許可は1841件に上る。

 ◇159億円 昨年度のF35A戦闘機契約額

 新三原則への見直し以後、政府は着々と武器輸出の体制づくりを進めてきた。昨年6月に防衛省は今後10年を見据えた「防衛生産・技術基盤戦略」を決定して、1970年以来の武器の国産化方針を見直し、国際的な共同開発や民生品の活用を積極的に進める方針を打ち出した。これを受け、オーストラリアと防衛装備品・技術移転協定を結び、潜水艦の関連技術の共同研究を進めることで合意したほか、フランスとは無人システム分野などでの共同開発を想定した同協定を締結▽イギリスとは空対空ミサイルの共同研究▽インドとは国産救難飛行艇の供与の協議−−などが次々に決まった。

 国産化方針見直しの背景について大阪大大学院の久保田ゆかり客員准教授(日米関係論)は「本来、軍事技術は自国で開発・生産するのが安全保障上は望ましい。ただ武器の調達にコストが掛かり過ぎるようになり、財政的な負担やリスクを減らせる国際共同開発が世界のすう勢になっています。多国間の枠に乗らないと軍事技術の開発に後れをとるという事情や、対中国をにらんだ友好国との関係強化や防衛産業基盤の強化という面もあります」と解説する。今年版の防衛白書によると、89年度契約の74式戦車は1台約3・9億円だが、昨年度契約の10式戦車は約10億円と約2・5倍、77年度契約のF4EJ戦闘機は1機約38億円だが、昨年度契約したF35A戦闘機は約159億円と約4倍にはね上がった。

 企業の最大の狙いは、言うまでもなく「もうけ」だ。

 「特に宇宙航空産業やサイバー分野では、開発費を1企業で負担するのはリスクが大きすぎるが、国の支援を受ければ先端技術の開発段階から参画できる。さらに特許を取れば自社のものとなり、多大な利益が期待できるビッグビジネスになる」と語るのは前田さんだ。「次期主力戦闘機F35については部品の生産に三菱重工などが加わっているが、開発当初から入っていないのでうまみは少ない。それでも参画したのは、さらにその次の主力戦闘機の開発で本格的に加わるための準備と言えます」

 ◇4020億ドル 世界トップ100社の武器などの売上高

  世界トップ100社の2013年の防衛関連売上高は約4020億ドル(約48兆円、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所)に上る。そもそも日本の武器に国際競争力はあるのか。前田さんが続ける。「実戦の経験やデータがなく、いわゆる“血を吸った兵器”がない。例えば陸上自衛隊主力の10式戦車にしても、カタログ性能だけでは世界のバイヤーは信用しません。米国が期待するのはデュアルユース、日本の民生品で、軍用品にも使える技術の方です」

 昨年6月、フランスで2年に1度開かれる兵器や災害対策設備などの国際展示会「ユーロサトリ」に、日本から13社が参加した。約1・5キロ先でも新聞が読めるほどの明るさで照らす災害用サーチライトや、超高感度監視カメラなど軍用品にも使える日本の民間技術が注目された。ロボットなどの無人技術や人工知能、小型化への関心も高いとされる。

 「米国は、防衛産業においても対日優位を手放すつもりはない」と指摘するのは、九条科学者の会事務局長の本田浩邦独協大教授(米国経済論)だ。米国の狙いとして(1)日本に一定の利益を認めてライセンス生産や共同開発に参加させつつ、日本の強みを最大限引き出す(2)膨大になる軍需製品の開発を日本に負担させ、最新鋭の武器は米国が中心に開発して国際的軍事優位を維持(3)もはや米国企業が作らない古い製品を日本にライセンス生産させ、米国の兵器システムに組み込んで世界で売りさばく−−の3点を挙げる。

 「日本が輸出を推進している原発がそうであるように、米国は防衛装備品でもパテント(特許)でもうける仕組みを固めようとしている」。本田教授の分析だ。

 青井未帆学習院大大学院教授(憲法学)も「米国との共同開発に参加しても、米国は国益を損なうような最先端技術を開示することはあり得ない。むしろ大きな下請けにされる危険が高い」と懸念する一方、こうも訴える。「武器を売ってもうけるというのは、武器が使われることで利益を得ることを意味し、日本の防衛産業が誇りにしてきた意味での『防衛力の一翼を担う』という考え方とは全く違う。武器輸出は、経済合理性よりも、日本が憲法9条の下で平和国家として歩んできた価値を基準に考えるべきではないでしょうか」

 前田さんは「日本の企業が『死の商人』として非難される事態が起きないとも限らない」と危惧する。「海外の戦争や紛争で日本の防衛装備が使われるようになれば、企業は空前の収益を上げられるかもしれませんが、平和で安全な社会を求める国内外の人たちに対して、良い企業文化なのだと胸を張れることなのか」

 日本で製造された部品が組み込まれたミサイルで人が亡くなることを、私たちはどう納得すればよいのだろうか。【石塚孝志】

 

 

 


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