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英離脱の株価急落で、さらに4~6月も年金運用損5兆円に!!〔東京新聞2016.7.4〕

2016-07-06 06:17:01 | 経済 金融

東京新聞 TOKYO Web

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201607/CK2016070502000125.html

4~6月も年金運用損5兆円 英離脱で株価急落

 

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 国民が支払う国民年金などの積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が、二〇一六年四~六月期に約五兆円の運用損失を出す見通しとなったことが、専門家の試算で分かった。英国の欧州連合(EU)からの離脱問題で株価が急落したのが主な要因。一五年度も五兆数千億円の損失を出す見込みが既に明らかになっており、一四年度末と比較した場合の損失は約十兆円に膨らむ見通しとなった。

 GPIFは一四年十月に安倍政権の方針を受け、どの資産にどの程度の積立金を投資するかの基準を変更。株式(国内、海外合計)を24%から50%に上げ、国債などの国内債券を60%から35%に下げた。

 試算をしたのは野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリスト。GPIFの一五年度の運用実績について事前に五兆円超の損失を出すと予測した実績がある。

 試算によると、運用資産ごとの損益はマイナスだったのが国内株二兆二千億円、外国株二兆五千億円、外国債券一兆六千億円。国内債券はマイナス金利の導入に伴う金利低下(国債価格の上昇)で含み益が出たため、一兆三千億円のプラスだった。西川氏は「株価が大きく戻すのは当面難しい」と話す。

 日本総研の西沢和彦上席主任研究員は「政府は株の比率を上げる基準変更の際、株価下落で損失が発生する当然のデメリットの説明をほとんどしなかった。あらためて情報公開を徹底し、損失はすぐ処理する仕組みが必要」と指摘する。

 

 

 

 


田原総一朗さん「ごまかしの安倍政権、改憲隠し選挙だ」(永田町の目 毎日新聞)

2016-07-06 06:16:37 | 参院選

永田町の目

(1)田原総一朗さん「ごまかしの安倍政権、改憲隠し選挙だ」

どうなる参院選5日連続ロングインタビュー

 「争点隠しの選挙だ」――。政治評論家らに参院選の論点を聞く連続インタビュー企画「永田町の目」第1回は、百戦錬磨の政治評論家・田原総一朗さん(82)。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」の司会者として長年、激しい討論を仕切り、舌鋒(ぜっぽう)鋭く切り込んで時の首相を退陣に追い込む言質を幾度も取った男の目には、今回の選挙での安倍政権の戦い方は「言ってみりゃ、ごまかし」と映っている。【聞き手・大村健一/デジタル報道センター】

争点「隠し」の選挙とは?

 ――今回の参院選は、どのような選挙だと考えていますか。

 端的に言えば「争点なき選挙」であり「争点隠しの選挙」。さらに言えば「改憲隠し選挙」ですよ。

 ――「改憲隠し」ですか……。

 
インタビューに答える田原総一朗さん=東京都千代田区で2016年6月22日、宮武祐希撮影

 争点は「改憲」以外に何もない。6月に安倍晋三首相が消費税の増税を再び先延ばしにする、と表明したでしょ? 野党はその増税再延期に反対していないんだから。年金など社会保障の問題が幾ら有権者の関心が高くても争点になるはずがない。それは財源の問題なんだもん。その財源の部分で、再延期にみんな賛成しちゃっているわけだから、これは争点にならないんです。

 一番の問題はね、第2次安倍内閣になってから、これで衆参合わせて3回目の国政選挙だけど、選挙が近づくと「アベノミクス」と言い、終わると特定秘密保護法や、長い間自民党が「憲法上、認められない」と言ってきた集団的自衛権を含む安保関連法を成立させてきたことだ。いつも選挙後に国民が嫌がりそうなことをやってきたわけです。今回も「アベノミクスがどうした、こうした」と言いながら、本当の狙いは憲法改正だと、僕は考えています。だから「改憲隠し」なんだ。

 ――安倍首相が言うような「アベノミクスの是非を問う選挙」ではないのですね。

 そんなものは見方によってどうにでも見える。安倍さんはアベノミクスの成果で「完全失業率は3%台前半になり、有効求人倍率も高い水準」とよく言いますね。野党の方は「アベノミクスはうまくいってない」とか「実質GDP(国内総生産)成長率が年率2%と言っていたのに伸びていない」とか言っている。それは両面があることで、はっきり言って大した問題じゃない。(争点は)改憲しかない。

 今年の1~3月ごろまで安倍さんは盛んに「憲法を改正すべきだ」と言っていた。国会でも(自民党の)稲田朋美政調会長が2月の衆院予算委で「憲法学者のうち約7割が自衛隊は憲法違反と答えた」という調査結果を質問し、安倍さんはそれに対して「自衛隊に疑いを持つ状況をなくすべきではないかとの考え方もある」「(憲法は)占領時代に作られ、時代にそぐわないものもある」と答えている。それは「9条を改正し、〝普通の国〟にしなければならない」ということだ。確かに、安倍内閣は「アベノミクスを問う選挙だ」と言っている。憲法のことは街頭演説ではあまり言わない。でも、本当は違うし、言ってみりゃ、ごまかしている。

 ――あまりフェアな戦い方ではない気もしますが。

 でも、それで選挙を連勝しているから「これでうまくいく」って自信を持っているんじゃないかな。

 ――ということは、投票日まで安倍首相が改憲を前面に出すことはないのでしょうか?

 ないでしょうね。ひどいのはさ、公示後はテレビの党首討論を、6月24日に1回しかやらないということだよね。それは記者クラブも悪いよ。昔はそんなことなかったよ。数日前にだってやっていた。その時期にテレビ討論会をやって、僕は総理大臣を失脚させたんだから。

 ――報道各社が報じる政党支持率などの数字の通り、「与党有利」は変わりそうにないのでしょうか。

 だって争点がないんだもん。ただね、僕は(衆参合わせて改憲勢力で)3分の2は取れないと思う。それは「国民が憲法改正に反対している」というよりは、安倍さんが憲法改正をしたがっているのに、何をどう変えるかを言わないから。これは気持ち悪いよね。まじめに憲法改正を考えるなら「ここをこう変える」と言わなければ。もっと言うなら、それを与野党でさんざん論議をしてから選挙をしなきゃ。

 ――自民党の憲法草案もあります。

 自民党が野党だった2012年に作ったものでしょ? この草案は相当にひどくて、僕は谷垣禎一幹事長が総裁だった時の草案だから、彼に「相当ひどい草案だね」と言ったんだ。「当時は野党だったからエッジを利かせすぎた」と答えたね。

 だってさ、あの草案はひどいよ。本来、国民を政治権力から守るのが憲法なんだ。でも草案は(21条の)「言論、表現の自由」にしても「公益及び公の秩序」を損ねないことを入れるとか、あちこちが「国民をいかに縛るか」という憲法になっている。

 ――隠れた争点となってしまっている中で、野党はどう戦うべきなのでしょうか?

 さっきも言ったけど、選挙をする前にね、きちんと与党から「憲法をこういうふうに変えたいと思う」という考えを引き出して、それについて野党も議論しなければいけなかったんですよ。そのうえで国民に問うんですよ。でも実際はほとんど何も審議していない。

 ――選挙前にやるべきことをやっていなかったわけで、手遅れということでしょうか?

 そう。だから「争点なき選挙」になっちゃった。

 
インタビューに答える田原総一朗さん=東京都千代田区で2016年6月22日、宮武祐希撮影

変容する自民党と、反省しない民進党

 ――隠れてしまったとはいえ、憲法改正が争点なら、今回の参院選は戦後70年のターニングポイントになる選挙という位置づけになりませんか。

 それは、その通りだ。1955年に自民党が結党して以来の目標の一つが憲法改正で、そこから60年間、果たせていない。どれほど自民党にとって重いテーマだったか。

 ――しかし、かつての自民党は党内に護憲派、リベラル派もいて、タカ派と議論をしながらバランスを取っていたと思う。それが今は見えないです。

 自民党は大きく変わったんだよ。その理由は(衆議院の)選挙制度が小選挙区制に変わったことだと思う。昔は自民党の中に主流派と、非主流派、反主流派がいて、僕の若い時は野党になんか関心なかったよね。自民党の中の「けんか」の方が面白かった。でも、今は小選挙区制になって、執行部が気に入った候補者しか公認しなくなった。だから野党が頑張らないといけないんだ。

 ――その野党ですが、今回は民進党と共産党が1人区で共闘します。

 でも野党で(比例代表で)統一名簿は作らないでしょ。民進党に関しては、政権を取るために死にものぐるいでやらないと。でも、その感じは見えないね。必死になって政権奪取を考えないと。まず何よりも先に、アベノミクスの対案をしっかり考えて、「オカダミクス」なるものを作るべきなんだ。

 僕はね、これまでの(第2次安倍内閣の)選挙で、野党の党首にはずっと「アベノミクスへの批判なんてやめろよ」と伝えてきたんだ。批判なんかしたって、国民は聞く耳を持たない。(民進党の前身の)民主党は当時、海江田(万里)が党首だったから「カイエダミクス」、当時の日本維新の会には「ハシモトミクス」をきちんと打ち出せと伝えたんだけど、どこもそれをせずにアベノミクス批判で選挙が終わっちゃった。国民はアベノミクスには問題もいろいろ感じているんだけど、対案が出ないんだからしようがない。選択肢がない。

 ――なぜ世論の支持をなかなか集められないのでしょうか。

 民主党は2009年から約3年3カ月、政権を握ったけど、12年の衆院選で惨敗したよね。その総括が行われていない。なんで惨敗したのか、本人たちが真摯(しんし)に向き合っていない。一方で自民党はその期間、野党だった。それで参ったんだろうね。「内部争いはやめよう」という雰囲気が出てきた。選挙制度が変わったうえに、下野した体験から完全に一本化しているわけ。怖い話でもあるんだけど、反主流派も、非主流派もなくなった。

 ――よい言い方をすれば「一枚岩」になっていると。

 なっているね。それに対して民進党はバラバラなんだよね。だってさ、今度だったら、東京都知事選に蓮舫(代表代行)が出るべきだったよね。出れば勝ったと思うんだ。都知事選に勝つということは、天下を取ることぐらいだと僕は思っている。自民党は舛添要一前都知事を推薦した手前、候補者に困っている。チャンスは大いにあったと思う。

 ――自民と民進以外で気になる党はありますか。

 公明党がどこまで頑張るか。選挙後の改憲の動きに対して、どこまで自民党に「NO」と言えるかだね。昨年の安保法制を巡っては、一定の歯止めをかけるために相当に頑張っていた。共産党は企業でいえば監査役みたいなもので、チェック機関としてはよく機能しているとは思うよ。

 もう一つ気になっているのは、米国で民主党の大統領選候補指名争いで、(民主社会主義者の)サンダース(上院議員)がクリントン(前国務長官)をあれだけ脅したのに、日本で社会民主主義を掲げる社民党は、どうしてあんなに影が薄いのか。反自民の票が社民党へ行く前に民進党が取って、さらに格差が問題と考える人は、社民党を通り過ぎて共産党へ行ってしまう。これは社民党が下手過ぎると思うな。

 
インタビューに答える田原総一朗さん=東京都千代田区で2016年6月22日、宮武祐希撮影

18歳選挙権は政治を動かすか? SEALDsへの思いは

 ――「衆参同日選になる」との観測もありました。そうならなかった理由についてどのように考えますか。

 僕もちょっと分からないんだけど、公明党が反対したのかもしれないね。安倍さんは同日選をやりたかったわけだし、「同日選をやることで、より参院選で勝てるのではないか」との思いも頭をかすめたと思う。ひょっとしたら党で世論調査をして、3分の2以上は取れないと分かったんじゃないだろうか。同日選をやれば、投票率は上がる。ということは、無党派層が投票に行く。それは不利になるという結果を見たんじゃないかな。

 ――投票率はどうなると見ていますか? 13年参院選、14年衆院選は52%台と低調でした。

 それよりは高くなるんじゃない? 隠しているとはいえ、「実は争点は憲法改正だ」って国民は薄々感じているから、前回の参院選よりも高くなると思う。

 ――今回から18歳選挙権が導入されました。どのような影響があると考えますか?

 僕は、毎日新聞なら山田孝男氏のコラム「風知草(ふうちそう)」(月曜朝刊)を欠かさずに読んでいるけど、「若者は意外と保守的。しかも年々、保守的になっている」(2016年6月6日付)というデータが書かれていた。必ずしも「若者が投票するから自民党に不利」とはならないだろう。

 ――学生運動を見てきた田原さんの世代からすると、隔世の感があるのでは。

 僕は(1960年の日米安保を巡る)学生運動の時は取材をする側になっていたけど、僕や当時の学生たちは「戦争は嫌だ」という思いを強く持っていた。文句なしに反戦ですよ。僕らは戦争を知っている世代で、もっとも若い世代だったから。

 ――「保守化」というデータの一方で、SEALDsのような安保法制や憲法改正に対して反対の声を上げる若者の団体も出ています。

 それは珍しいから。リベラル派の年寄りたちがチヤホヤしてくれているわけだ。そんなに大きな動きにはならないんじゃないかな。

 ――今、田原さんが魅力的と感じている政治家は誰ですか。

 センスがいいのは(自民党の)小泉進次郎だね。今は立場も考えて、マスコミに出ないで露出を抑えているでしょ? その辺のセンスは、おやじ(小泉純一郎元首相)よりもいいと思う。後は民進党の山尾志桜里(政調会長)もいい。雑誌で対談したが、浮いた発言をしない。地に足が着いている印象だ。

安倍内閣に死角はあるのか?

 ――選挙後、安倍政権はどうなると読んでいますか。

 3分の2が取れれば改憲へ向かうだろうけどね。景気が持つのかなあ……いろいろな調査でも「これから悪くなる」という回答が多いケースばかり。先行きは不透明だ。

 ――今回の選挙を無難に乗り切ったとして、安倍政権はどこまで続くと見ますか。自民党総裁の任期は2期6年間、18年9月までです。

 任期は延長しないで、安倍さんの言うことを聞く首相を後継に選んで、院政を敷くんじゃないかな。さっきも言ったけど、今の自民党には反主流派がいないから、取って代わりようもない。

 ――順風満帆に見える安倍内閣。ピンチがあるとしたらどのようなことでしょうか?

 やはり株価でしょう。僕は、経済はやっと保っている状態だと思うよ。マイナス金利政策も成功してないもんね。打つべき手は全部もう打っちゃった感じ。後は今、一番深刻な問題は少子高齢化だけど、それへの手が打てていない。対策の一つとして移民の受け入れについても、議論した方がいいと思うけど、安倍さんは嫌がるだろう。移民を嫌がる層が安倍さんの支持層だろうから。

 英国が欧州連合(EU)から離脱することで円はドーンと高くなって、株価は落ちる。アベノミクスの根幹が揺らぐ。そのくらい英国が離脱する影響は大きい。そうなれば、恐らく米大統領選は(共和党候補の)トランプが勝つね。そうすれば、在日米軍基地に対する、さらなる負担を迫って強く出てくるだろう。大変なことになるよ。それぞれ「イギリスファースト」「アメリカファースト」とも言うべきもので「自国さえよければどうなってもいい」との考え方が広がっている。君、EUはなぜできたか知っているか?

 ――第一次世界大戦がきっかけでしたよね。

 そうだ。第一次世界大戦は、人類が最初に直面した大戦争で、ヨーロッパ全土が戦場になった。「こんな戦争をしてはダメだ」との思いでEUの原形となる構想が持ち上がった。国際連盟もできて、第二次世界大戦を経て国際連合になった。国際協調の道を歩み始めた。

 でも今、世界的なうねりが起きている。トランプやサンダースの旋風については、米国で格差がどんどんひどくなって、資本主義の弊害が大きくなったことが原因として挙げられている。格差が大きくなる中で「資本主義はダメだ」ということで民主社会主義が出てきたり、トランプみたいに「米国は海外の面倒を見すぎた」と言って「自分さえよければいい」というやからが出てきたりする。日本も米国ほどではないにしても、格差は大きくなってきている。選挙は乗り切っても、そのうねりに巻き込まれる可能性は大いにある。

 
インタビューに答える田原総一朗さん=東京都千代田区で2016年6月22日、宮武祐希撮影

次世代に伝えたいことは

 ――最大の争点は憲法とのことでしたが、ご自身は改憲派? それとも護憲派?

 基本的には護憲だね。でも、少なくとも自衛隊があること、自衛権があることは認めてもいいと思っている。9条2項の「陸海空軍を持たない」に関しては改正すべきだろう。9条1項の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」の部分も改正して「戦争ができる国」にしたい層もいる。僕はそれには反対なんだ。

 僕は基本的に、今の憲法の精神はいいと思っている。あれは「マッカーサー(連合国軍最高司令官)が押しつけた憲法」って言い方もされるけど、日本人の手ではとてもあんな憲法はできなかったと思っている。例えば(敗戦後、日本が作った憲法)試案の「主権」は、大日本帝国憲法と同じく天皇だった。憲法9条を作ったのもGHQ(連合国軍総司令部)だった。

 あの憲法にはコンセプトが二つあって、一つは日本を再び米国などを相手に戦争できないように弱体化すること。だから日本は非武装になった。もう一つは、日本を理想の民主主義の国にするということだ。その後、日本を弱体化させる目的だった憲法9条によって、米国は困るわけだ。米国が「自衛隊があるんだから、一緒に戦おう」と再三言ってきても、日本は「戦いたいけれど、あんたの国が余計な憲法を押しつけたもんだから」という具合に断ってきたわけだ。

 しかし、冷戦が終わってから、少しずつ形は変わってきている。冷戦中は日米安保というのは「日本がどこかの国から攻められたら米軍が守る。米国がどこかの国から攻められたら日本は何もしない」という片務条約だった。そんな条約が、なぜできたかというと……ちょっと頭の中で世界地図を描いてみてほしい。日本は西側陣営の一番東の端っこにある「極東」の国だ。日本の隣に北朝鮮、その隣に中国、そして北にはソビエト連邦(現ロシア)があった。それは全部「東側」の国。ということは、日米安保条約は「日本を守る」という意味じゃなくて、「西側の東端を守る」という意味の方がはるかに強かった。それはそれで機能していたんだ。

 ところが冷戦が終わって、米国はソ連という敵がなくなって、極東を守る必要がなくなった。ここから問題が起こるわけだ。日本としてはとにかく安全保障の面で米国に逃げられては困る。その後の内閣は、いろいろなことをやって米国との関係強化をやってきた。そこで、米国が求めたものが集団的自衛権だった。そうした流れの中で安倍内閣が出てきて、憲法改正までという話が本格的に出てきた。「0か、100か」で語れる問題ではないが、いずれにしてもこうした問題について、国民の関心が低いことは「危ない」と思っている。

 
質問の答えを考える田原総一朗さん=東京都千代田区で2016年6月22日、宮武祐希撮影

 ――82歳になった今、田原さんはこれからの日本にどういう国であってほしいと考えていますか。

 僕はまず何よりも、アジアから信頼される国でなければならないと思っている。かつての日本は満州事変、日中戦争、太平洋戦争で、アジアの国々とも戦って、植民地にもした。戦後70年、平和国家だったということをきちんとアジアに訴えないと。アジアの国から信頼される国になるべきだ。中国や韓国からも信頼されれば、米国に「やっぱりアジアのことは日本に委ねた方がいい」と思わせることができ、米国と交渉する力も出てくると思う。そうやって一定の影響力を持つことが大事だ。

 ――有権者に伝えたいことはありますか。

 僕はね、投票を棄権するのは、時の政府に全て委ねるということであって、政治に何の不満もなくて「現状で困っていない」ということを示す行為だと思っている。実際は、そんな人間はいないと思うよ。必ずいろいろな問題を抱えているんだ。小さな子供がいれば保育園の問題があるし、老人がいれば介護の問題が出てくる。「年金や社会保障はどうなるのか?」という不安もあるはずだ。

 ――身近な問題が大きな争点にならないもどかしさもある。

 それは野党とマスコミが悪い。ちゃんとした批判をしていないからだ。もし自分が今、第一線の記者だったら、徹底的に安倍政権の内部を取材するね。

 たはら・そういちろう 1934年、滋賀県生まれ。早稲田大卒業後、岩波映画製作所を経て、64年に東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局と同時にディレクターとして入社。77年にフリージャーナリストに。87年から現在まで、テレビ朝日系の深夜討論番組「朝まで生テレビ!」の司会を務めるなど、激しい議論を戦わせることで知られる。主な著書に「変貌する自民党の正体」(ベスト新書)、「日本を揺るがせた怪物たち」(KADOKAWA)、「安倍政権への遺言」(朝日新書)など。