[写真]新藤義孝・前衆院決算・行政監視委員長、現総務相、自民党・衆・埼玉2区。
政府・会計検査院は平成23年度(2011年度)決算を、2012年11月16日(金)に国会に提出していました。民主党下野にともない、「議案を成立させないと次の選挙に負ける」という当事者意識が薄れ、肩の荷がおりていました。それで、衆議院議案、参議院議案のチェックが甘くなり、気づくのが遅れました。まあ別に、それでいいと思いますが、少し当事者から傍観者に意識が移りつつも、引き続き、国会(衆議院、参議院)はしっかり見ていきます。
さて、この平成23年度決算とは、ひと言で言えば「震災予算(決算)」です。
その冒頭には次のように書かれています(財務省ホームページ参照)。
[平成23年度決算書から引用はじめ]
平成23 年度一般会計歳入歳出決算
平成23 年度における
歳入決算総額は109,979,527,619,256 円
歳出決算総額は100,715,409,134,750 円
である。
したがって
歳入歳出の決算上の剰余金は9,264,118,484,506 円
である。
[引用おわり]
このように歳入が109兆円、歳出が100兆円ということになっています。すなわち「帳尻が合っていない」。明治維新以来、複式簿記である民間企業のすべての関係者には理解できないでしょう。このように9兆円も帳尻があっていない決算をしているのが、国です。さらに恐ろしいことに、国会議員の9割以上は読むことができないのが実態です。衆参スタッフの9割以上、私以外の政治記者、さらには局長など霞が関の官僚の9割以上も読めない状態で、9兆円もの帳尻が合わない決算をしているのがこの国の実態です。
さらに当初予算書、補正予算書、決算書で欄が違うなど書き方が統一されていません。このため、前の任期の民主党行政改革調査会では、予算・決算透明化ワーキングチームをつくり、政権交代チルドレンらが、まずは様式の統一で情報の公開・透明性をはかり、国会による予算決算のコントロール強化をめざしましたが、衆院側のほぼ全員が落選してしまいました。
平成23年度決算書が、衆議院解散という慌ただしい当日に提出されていたことに、、私も年が明けて気付きました。これで、衆議院決算行政監視委員会では、平成21年度決算、平成22年度決算、平成23年度決算が積み残しになったまま、通常国会を迎えることになりました。ちなみに、前の任期では一貫して野党・自民党が委員長をつとめ、政権交代後に新藤義孝委員長は第2次安倍内閣の総務相に出世してしまいました。今度の任期では引き続き野党のポストになり、日本維新の会の谷畑孝さんが衆院・決算行政監視委員長になりました。
第182特別国会の会期末、2012年12月28日(金)の議事録です。
[国会議事録データベースから引用はじめ]
(前略)
○谷畑委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。
決算の適正を期し、行政監視の機能を果たすため、お手元の印刷物にありますとおり
平成二十一年度決算外二件
平成二十二年度決算外二件
平成二十三年度決算外二件
歳入歳出の実況に関する件外五件
以上の各件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。 (後略)
[引用おわり]
このように3年分の決算が閉会中審査となり、第183回通常国会に持ち越されました。決算(案)は衆参両院とも「先議」できる極めて例外的な議案です。ほかには国会同意人事くらいです。参議院決算委員会は、21年度決算の審査は終了。22年度決算も委員会1回と本会議1回で審査を終了(是認)できる状態です。
何度も繰り返していますが、決算審査を3年分もためるようでは、どの党が官邸をやろうとも、うまく行くわけがありません。これは企業関係者だけでなく、すべての地方議員も驚き呆れている実態です。国に関しては「会計検査院の検査」(日本国憲法第90条)があるので、自治体より提出が遅れるのはやむを得ません。
平成21年度予算(決算)は、麻生内閣が編成し、14兆円の1次補正をし、鳩山内閣が2次補正したものです。
平成22年度決算は鳩山内閣が編成し、菅内閣が補正しています。
そして、平成23年度は、菅内閣が当初予算を編成。震災復旧予算を計上して提出し、国会は大型連休中に全会一致で成立させました。そして、8月には、3党合意にもとづき、総理大臣のクビとひきかえに2次補正しました。野田内閣は就任直後から超大型の3次補正予算をつくり3党合意に基づき成立させました。これがいわゆる「震災復興予算」です。前提となる法律を衆・特別委の筆頭理事として民自公3党合意で成立させた立役者の藤村修さんが官房長官として官邸入りして関わりました。そして、第4次の補正までやりました。「4次」は戦後直後の片山・芦田内閣以来という歴史的な予算(決算)です。
平成23年度決算では、環境省の一般会計での歳出は、当初予算書で「0・2兆円」でした。補正を反映した決算書では「1・4兆円」になっています。さらに「1・4兆円」のうち「0・6兆円」は執行しきれずに翌年度に繰り越されました。これはどういうことかというと、「繰越明許費(くりこしめいきょひ)」(財政法14条の3)」を活用しています。この会計手法の解説はこのエントリーでは省きます。この「0・6兆円」は、震災がれき(廃棄物)が処理したり、処理施設をつくりきれなかったから、0・6兆円繰り越したのでしょう。いわばがれきが残り、その処理予算の伝票である「0・6兆円」が翌年度に繰り越されたということになります。こういうところも、国会で明らかにすべきです。話は違うかも知れませんが、正月に次のような報道がありました。環境省福島再生事務所の課長補佐(39)が元旦に「今、富士山にいます」と家族にメールした後消息を絶ちました。静岡県警は4日、標高2000メートル付近で雪に埋もれた課長補佐を収容しました。彼の心持ちは永遠に分かりません。が、国家を背負う若い官僚がいるのに、特権階級である(前)衆議院議員たちが与野党の選挙向けパフォーマンスである「国会版事業仕分け」を優先し、決算審査をほったらかした姿は残念でなりません。
国会日程としては、委員会の主務大臣である麻生太郎財務大臣(副総理、金融相)の日程をおさえる必要があります。ただ麻生財務相は衆参の予算委員会にも出席しなければいけません(公聴会、参考人質疑は除く)。2月~5月まで補正予算・当初予算・暫定予算と切れ目なく両院の予算委が開かれるスケジュールが予想されます。そこで、夕ナベ審議が考えられます。昨年7月26日(木)に新藤委員長は午後4時1分開議 午後5時59分散会で委員会を開きました。すき間の日程に委員会を設定し、ベテラン・中堅がとっさに質疑してもいいでしょう。さらには、土日、大型連休も審議してもいいでしょう。あるいは、財務大臣の出席のルールについて与野党理事が協議してもいいでしょう。毎年必ずNHK国会中継が入る衆院の委員会は、予算委と決行委の2つだけなんです。このため、2003年マニフェスト解散(第43回衆院選)で野党・民主党(菅直人代表・岡田克也幹事長)が議席を延ばしてから現在まで、委員長ポストは野党が務める慣例となっています。
ほぼ同じ質問時間が割り振られるであろう、民主党・無所属クラブと、日本維新の会との間で、民主党議員が質疑のクオリティで圧倒することは非を見るより明らか。民主党再生戦略にもつながります。
なお、新しい決行委では、野党・自民党として委員長を務めた今村雅弘さん(自民党・佐賀2区)が理事(おそらく筆頭理事)になったようです。河野太郎さん(自民党・神奈川15区)が前の任期に引き続き理事を務め、公明党の石井啓一政調会長も理事になったようです。民主党では福田昭夫さん(栃木2区)が理事になったようです。このメンバーに期待します。
突貫工事で、第183通常国会中に、3年分の決算審査を終えることが、党派を問わず、衆議院に問われた至上命題です。
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