【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

衆議院決算行政監視委員会は平成【21】年度決算を閉会中審査すべきだ

2012年10月11日 14時22分40秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[画像]第180通常国会会期末に閉会中審査の採決をする新藤義孝・衆議院決算行政監視委員長(自民党)、2012年9月7日、衆議院インターネット審議中継

 衆議院決算行政監視委員長は、自民党にとって事実上唯一の衆議院常任委員長ポスト(ほかに懲罰委員長)です。きょう2012年10月10日(水)は、この秋、初めての閉会中審査となる「決算行政監視委員会行政監視小委員会」が立ちました(設定されました)が、過半数を占める民主党の欠席で定足数を満たさなかったようで、流会しました。議題は「復興予算の実施状況」ということで、平成23年度決算に関することです。同年度の決算書は臨時国会召集日に会計検査院が提出する見通しなので、それに先立ち「行政監視」の方を動かそうとしたということになります。

 第45期衆議院では、第2次野党期の自民党が同委員長ポストを一貫して務めていますが、新藤義孝さん(埼玉2区)が委員長になって以来、なんと決算審査をしていません。第179回国会の昨年11月24日(木)に平成21年度決算、12月8日(木)に平成22年度決算について、安住淳財務大臣(当時)、重松博之・政府特別補佐人(会計検査院長)から相次いで趣旨説明を受けただけです。

 その後、衆院先議の平成21年度予備費使用調書その1、その2(半年ずつ)、平成22年度予備費使用調書その1、その2は政府の支出を衆院で事後承認し、参院に送付。参院でも可決・成立(承認)しています。決算は参院でも審議を始められ、参議院決算委員会は、平成21年度決算を可決(是認)し、平成22年度決算も「準総括質疑」をしており、後1回だけ野田佳彦総理入りの「総括質疑」をすれば、本会議で委員長報告と採決ができる状態で、問責決議がされてしまい、継続審査になっています。これについては、自民党内の参院決算委員にも忸怩たる思いがあるようです。

 それにひきかえ、衆議院で平成21年度決算すらやっていないとは何事でしょうか。そして、平成23年度は戦後2回目となる4次にわたる補正をしながら、震災復興費用が9兆円ほど未執行に終わっているとされており、予算の見積り、執行の状況など、憲政史上最も大事な決算審査となります。衆参とも、平成23年度決算にすぐにでも取りかかれるための前裁きが必要になります。



 ところが、新藤委員長らは記者会見で、この「復興予算の実施状況の調査」をするとして、きのうの「小委員会幹事会」で小委員長職権できょうの会議を立てたようです。この「小委員会の幹事会」というのは知らなかったので、調べましたが、国会法・衆議院規則・衆議院先例集のいずれにも、定めがなく、慣例に過ぎない会議体のようです。

 これに関しては、二大政党の思惑がみえず、民主党側も人事異動などで経緯がよく分からずに反論している面があり、世論が混乱すると思います。

 ただ、客観的な事実。それは、現時点で、いまだに平成21年度決算の審査を終了していないということです。もちろん22年度決算も同様です。その一方で、衆院先議である「予備費の使用調書」に関しては、21年度、22年度とも、ぞれぞれ「その1(4月~9月)」、「その2(10月~3月)」とも参議院に送りましたが、同じ党の山本順三・参議院決算委員長が衆院側に抗議したことは、参院での会期末処理の際に、委員長から報告され、議事録に残っているところです。予備費は承認して、決算全体は承認していないというのは見栄えが悪いように思います。

 平成21年度決算は、自民党麻生内閣が組んで、(一般会計に限れば)戦後初の4月補正で14・5兆円増額し、政権交代して、鳩山内閣が減額も含めて補正したややこしい年度です。しかし、これで次の選挙で政権交代があれば、衆議院としての21年度決算審査は訳が分からないことになるのは間違いありません。これでは、自民党の安倍晋三総裁が「年内の早期解散」を求めていることとと矛盾していると私は感じます。

 そしてもう一つの客観的な事実。それは同委員会が決算審査をしないのに、6月11日に、石原慎太郎都知事や中山義隆・石垣市長を招き、「尖閣諸島における諸問題」と題した参考人質疑をしています。もちろん、参院では別々の決算委と行政監視委を一つにあわせた委員会だし、タイムリーでいいのですが、本業をちゃんとやるべきなのではないでしょうか。そもそも21・22年度決算の審査といっても、国政全般にわたることなので、そのなかで尖閣諸島の購入に関する質疑もできるはずです。

 第44期衆議院でも同委員長は野党ポストで、民主党の川端達夫さん、枝野幸男さんらが委員長を務めました。同委のしめくくり総括質疑はNHK中継されるのが慣例で、野党時代の民主党の衆院議員にとっては、委員長席に座っている姿がテレビで放送される唯一の機会でした。とくに枝野委員長は、自民党閣僚が立ち上がるのがちょっと遅れただけで、「速やかに答弁してください!!」と叱り付けているようにも見えました。枝野さんは、予算委理事として場内協議になったときも、見た目にはまったく分からないのですが、委員長ではなく集音マイクに向けてしゃべっているとされ、野党ながら情報発信に多大な功績をしました。民主党の第1次野党期最後となった第171通常国会では、閉会中の理事会で長時間ねばり、予算委員会のカメラの台数を増やさせ、映像の迫力が増し、「民主党に一度やらせてみよう」という世論に大きく貢献しました。

 国会版事業仕分けや尖閣諸島の参考人質疑は面白いし、
いいのですが、決算審査をしないことで、テレビ入り質疑を2回以上逃していることにもなります。あるいは、政府・与党が財務大臣らの時間的拘束を嫌がっているのかもしれません。決算審査の省別審査で、財務大臣の出席を義務づける必要もないのではないでしょうか。決算委は4つの分科会を設けて審査できることになっているので、4つの分科会を同時並行でやれば、閣僚の拘束時間も短くなります。

 閉会中審査で突貫工事で宿題を片づけるべきです。国難だからこそ正道の国会審議をすべき。それが私が健全野党自民党に求めていた姿なので、残念な思いです。


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