[写真]民主党初代幹事長に就任した羽田孜さん(1999年当時)と民主党幹事長就任会見(2010年9月17日)で議員バッジを外す岡田克也さん、右の写真は民主党ホームページから。
羽田孜さん(77)を「政治の母」と仰ぐ副総理の岡田克也さん(59)。
私は2011年5月30日(月)の岡田・民主党幹事長記者会見で羽田内閣総辞職の前夜に2期生の岡田さんが官邸に乗り込んで、「野党の自民党と社会党から羽田内閣不信任案がもうすぐ提出されるが、その前に総辞職すべきだ」と迫った経緯について聞いてみました。
岡田さんは新生党青年代議士時代の羽田総理(新生党党首)への進言について、
「いずれにしても、後で振り返ったときに、あのとき解散すべきだったかどうかは議論の分かれるところで、私も時々考えることがあります。あのとき解散すれば勝てたんじゃないかと。確かに当選1回の脆弱な議員が多かったですが、選挙制度(改革)をようやく実現して、そこで自社が野合して村山さんを担いだ政権ができることに対して、解散して戦えば我々勝てたんじゃないかと、そういう思いは時々あります。 羽田さんを何時間もかけて説得して、それの結果だったのかどうかわかりません、帰った後、(総辞職表明まで)数時間まだありましたから。しかし、結果的には総辞職ということになったので、羽田先生には申しわけないという気持ちは常に持っておりますし、それがその後、新進党において私が党首選挙で海部さんではなくて羽田さんを応援した。逆に言うと、小沢さんの考え方とそこからずれが出てきたと、こういうことです」
と述べ、今でも時々考えることがある、つまりは後悔していることを明かしました。
そして、羽田さんが1994年6月30日(木)の内閣総辞職の記者会見で語った「国会議員はもっと虚心(坦懐)になってほしい。少なくとも(すべての国会)議員が羽田孜ぐらい(虚心坦懐に)になってくれれば、もっと日本の政治はよくなるはずだ」「もう政局はやめにしよう」という言葉について。岡田さんはどう思うか。2011年5月30日の岡田幹事長。
「大事なことは、政治家というのは、当然のことながら国家・国民のためにあるわけですから、この大震災の中で、例えば総理を代えろという声がある。総理を代えて、じゃあその後どうするのか。谷垣さんにも別にプランがあるわけではない。あるいは党内でいろいろ言っている人にもそういった具体案があるわけではない。結局、それは混乱を招くだけで、時間もロスする。はたして被災地で苦しんでいる皆さんの立場から見たときに、それがどういう意味を持つのか、そのことは虚心坦懐に考えていただきたいと思っています」。
こう語りました。しかし、この記者会見の3日後に、菅内閣不信任案が上程される事態となり、否決されたものの、その後の政局の混乱はみなさん、うんざりしながらご承知の通りだと存じます。
それから1年半。野田佳彦総理が衆議院を解散しました。岡田さんは7期生にして初めて官邸内に執務室を持ち、解散詔書に署名しました。それから4時間後の定例記者会見。この3時間後に衆議院は解散され、羽田孜さんは連続14期在職43年間の衆議院議員生活にピリオドを打ちました。任期は来年8月まであったのですが。
この解散制度における政治の不条理をどう思うか、質問しました。
「少し大きくて答えるには難しい質問ですが、あのときに私が解散すべきでないと申し上げたのは、選挙制度改革、小選挙区比例代表並立制が国会を通っていた。しかし、まだ実施に至っていなかったという状態ですね。そこで解散すれば中選挙区で解散すると。中選挙区で新たに選ばれた人たちが、選挙制度改革をもう一回、元に戻してしまう、そういう危険も考えられたわけですね。そういう中で、やはり羽田総理が心血注いでつくってこられた政治改革をしっかり後世に確実に実現するために、解散はすべきでないと申し上げたところです。今回は大分事情も違います。そういう特段の事情もありませんから、この時期の(野田佳彦)総理の決断というのは、私は見事なものだと思います」
断言しました。
「あのとき解散すれば勝てたのではないか」と苦悩を吐露した2011年5月の岡田幹事長とは違った、2012年11月の岡田副総理がそこにいました。たった64日間で羽田内閣は倒されちゃったけど、羽田さんは立派な息子たちを残したものだと感じます。
[岡田克也幹事長/記者会見要旨 2011年5月30日(月)16時05分~16時35分から引用はじめ]
(前略)
○羽田内閣総辞職を振り返って 【フリーランス・宮崎記者】1994年6月24日、いわゆる宮沢解散から1年と1週間後に羽田内閣総辞職があった。これは少数与党になったということで、当時第1会派の自民党や第2会派の日本社会党などが内閣不信任案を提出する構えを見せて、ほぼ可決されることが確実である状況で、不信任案を上程する前に羽田内閣は総辞職した。24日の夜、当時2回生の岡田克也さんと3回生の石破茂さんが官邸で羽田総理と会って、翌朝まで話し合った。その内容は、政治改革関連法案が既に成立しているので、次の総選挙は小選挙区でやりたい、今解散したら中選挙区になってしまう、中選挙区だと広域でお金もかかる。若手から、1年しかたっていない、解散をやめてほしいという意見があり、それを受けて岡田さんと石破さんが総理に伝えに行ったと。あのとき実際はどういうことだったのか。また、岡田克也個人としてはどういう考えだったのか。 【幹事長】講談社から出ている『政権交代』をお読みいただきたいと思います。私が書いた本です。あのときに、私も石破さんもともに「解散をすべきではない」と、そう申し上げに参りました。ただ、理由は2人異なったわけで、石破さんは、今おっしゃったように「若い議員のために、ここは解散すべきでない」という話でした。私のほうは「せっかく小選挙区制度の法律が通った。しかし実施は、今やれば中選挙区になる。中選挙区で1度選挙をやりますと、そこで当選してきた人たちが、この選挙制度についてどう判断するかはわからない。また中選挙区に戻る可能性がある。そういう中で、相当努力した結果できた小選挙区比例代表並立制を確実なものにするために、解散すべきではない」と申し上げました。ですから、論理は2人全く異なりました。結論は一緒です、「解散すべきじゃない」と。
いずれにしても、後で振り返ったときに、あのとき解散すべきだったかどうかは議論の分かれるところで、私も時々考えることがあります。あのとき解散すれば勝てたんじゃないかと。確かに当選1回の脆弱な議員が多かったですが、選挙制度をようやく実現して、そこで自社が野合して村山さんを担いだ政権ができることに対して、解散して戦えば我々勝てたんじゃないかと、そういう思いは時々あります。 羽田さんを何時間もかけて説得して、それの結果だったのかどうかわかりません、帰った後、(総辞職表明まで)数時間まだありましたから。しかし、結果的には総辞職ということになったので、羽田先生には申しわけないという気持ちは常に持っておりますし、それがその後、新進党において私が党首選挙で海部さんではなくて羽田さんを応援した。逆に言うと、小沢さんの考え方とそこからずれが出てきたと、こういうことです。 【フリーランス・宮崎記者】数時間後の羽田さんの記者会見を見ると、「国会議員はもっと虚心になってほしい。少なくとも議員が羽田孜ぐらいになってくれれば、もっと日本の政治はよくなるはずだ」と、羽田総理ご自身がおっしゃっている。今振り返って、この言葉をどう感じられるか。 【幹事長】どういう趣旨で言われたのか、率直に言って私もよくわかっているわけではありませんので、コメントは控えたいと思います。 ただ、大事なことは、政治家というのは、当然のことながら国家・国民のためにあるわけですから、この大震災の中で、例えば総理を代えろという声がある。総理を代えて、じゃあその後どうするのか。谷垣さんにも別にプランがあるわけではない。あるいは党内でいろいろ言っている人にもそういった具体案があるわけではない。結局、それは混乱を招くだけで、時間もロスする。はたして被災地で苦しんでいる皆さんの立場から見たときに、それがどういう意味を持つのか、そのことは虚心坦懐に考えていただきたいと思っています。 【朝日新聞・南記者】当時を振り返って、自社が野合して、そのときに解散したほうがよかったんじゃないかと思うことがある、とおっしゃったが、今まさに、自民党側が次の政権プランを示さぬままに総辞職を求めて、内閣不信任案を突きつけようとしている。これに対抗して、万が一可決された場合には、解散すべきと幹事長はお考えか。 【幹事長】それは総理が決めることです。もちろん、総理の解散権は誰にも制約されることはありません。それ以上のことは申し上げるべきではないと思います。それは菅総理がお決めになること、それ以上のことはありません。 【日経新聞・恩地記者】党内には、「もし不信任案が可決されたら、総理は解散する」という見通しの声と、逆に「被災地はまだ県議選も行っていないのに、解散なんかできる状況にない」という声もある。被災地の状況なども踏まえて、実際問題、解散できる状況にあるとお考えか。 【幹事長】そういう議論をするべきではないと私は思います。その前提は、内閣不信任案が民主党の中の賛同者を得て可決されるという議論ですから、そういった仮定に仮定を重ねた議論まですべきではないと思います。 そういう意味では、私は(達増)岩手県知事の発言は、怒りを持って聞きました。ぜひ被災地の皆さんのことを第一に考えてもらいたい。知事にもお願いしておきたいと思います。 【共同通信・中久木記者】今日、自公の幹事長会談で、不信任案提出について週内にも行うことで調整することが決まった。不信任案が提出された場合に、すぐに週内に採決すべきなのか、あるいは週をまたいで来週か。今の段階でのお考えがあれば伺いたい。 【幹事長】それはその状況で判断するしかないですね。ただ、あまり引き延ばすことは、私は賢明ではないと思います。やはりこれだけ重要な案件が山積しておりますので、少しでもしっかりとした審議を早く行うことが重要だと思います。ただ、多少のやりとりといいますか、駆け引きは当然あるかと思いますが、基本はやはり、出されれば粛々と否決していくということだと思います。
(後略)
[引用おわり]
[平成24年11月16日岡田副総理記者会見要旨から引用はじめ]
(前略)記者
フリーランスで宮崎です。衆議院解散(まで)、もう3時間ほどでなりますけれども、昨年6月の民主党幹事長会見で私からお伺いしたのですが、羽田孜内閣総辞職のときに、2期生として官邸に乗り込んで「解散しないで総辞職してください」と言ったという話がございました。
間もなく解散になりますと、羽田孜さん、43年の衆議院議員生活にピリオドを打ち、引退ということになります。今、官邸側で解散をする側の立場として、解散とは何か、政治とは何か、今、岡田さんはどう思われますか。
岡田副総理
少し大きくて答えるには難しい質問ですが、あのときに私が解散すべきでないと申し上げたのは、選挙制度改革、小選挙区比例代表並立制が国会を通っていた。しかし、まだ実施に至っていなかったという状態ですね。そこで解散すれば中選挙区で解散すると。中選挙区で新たに選ばれた人たちが、選挙制度改革をもう一回、元に戻してしまう、そういう危険も考えられたわけですね。そういう中で、やはり羽田総理が心血注いでつくってこられた政治改革をしっかり後世に確実に実現するために、解散はすべきでないと申し上げたところです。
今回は大分事情も違います。そういう特段の事情もありませんから、この時期の総理の決断というのは、私は見事なものだと思います。
(後略)
[引用おわり]
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