【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【法案】「デジタル庁設置法案」2021年通常国会に提出へ、菅内閣の最大の公約に、平井卓也大臣と厚労省がテレビで閣内不一致、総務省・経済産業省の省益も目が離せない展開に

2020年09月20日 20時16分26秒 | 第203回臨時国会(2020年10月下旬)菅首相初答弁
[写真]菅首相、宮崎信行撮影。

 「デジタル庁設置法案」「IT基本法などの改正法案」を来春、2021年通常国会(令和3年)に提出することが、先週発足した菅新内閣の最大の公約となりました。

 菅首相は、自民党総裁選にあたり、各社に少しずつ違うことを話す「グループインタビュー」で「デジタル庁設置」に言及。先週2020年9月16日(水)の組閣直後の記者会見で「複数の省庁に分かれている関連政策を取りまとめて、協力に進める体制として、デジタル庁を新設いたします」と語りました。私のように四半世紀以上政治や報道を見ている者からすると「断定調」にハッとしました。

 自民党のIT特命委員会の委員や閣僚として、政府所有の匿名加工ビッグデータ販売法などにかかわってきた、平井卓也さんに「デジタル改革担当 情報通信技術(IT)政策担当 内閣府特命担当マイナンバー制度」大臣を任命しました。

 平井さんはこの四連休もぶっ通しで議論し、連休明けには「準備委員会」を設けて、法案作成をしたい意向。民間人起用も明言しており、福田康夫内閣の「消費者庁」のような存在になるかも。また、安倍晋三内閣が経産省主導だったのに対して、総務大臣として「ふるさと納税」「携帯料金値下げ」「年金第三者委員会」と旧3省庁とも主導権を発する政治家として、経産省から総務省に主導権をシフトしたい政局感も見え隠れします。

 さて、けさ20日放送のフジテレビ、NHKの番組で省益のつばぜり合いで早くも閣内不一致があらわになりました。

 フジ番組は、再登板の田村憲久厚生労働大臣と平井大臣の2人が登場。厚労省と病院のシステム「ハーシス」をめぐり現役医師が「使いづらい」と告白。スタジオの田村大臣は「デジタル庁にお任せする余裕はなく、現行のハーシス、ジーミスなどのシステムを動かしていく。デジタル庁が設置されれば、アドバイスがほしい」としました。平井大臣は「予算を厚労省とデジタル庁が見るようになれば、民間も含めて一緒にやりたい」と語りました。いきなり省益対決。安倍内閣では発足当初からこのような閣内不一致はなかったように思います。

 この後、NHK日曜討論では、田村さん、平井さんを含めて6大臣に。武田良太・新総務相は発言で「まずは行政のデジタル化をしていきたい。マイナンバーカードの普及と、地方自治体の共同プラットフォームをつくりたい」と総務省がデジタル庁にかかわりたいとの思惑が透けて見える発言。経済産業省の大臣は続投なので番組に呼ばれませんでした。武田さんの発言も含めて平井大臣は「コロナでいろいろなことが見えてきた。しかし、過去二十年間の日本は何もしなかったわけではなく、光ファイバー網の整備などは世界的にも水準が高い。私は、デジタル配線と呼んでおり、それを整えていく」としました。そして、平井大臣は「コロナ対策では、(厚生労働省のアプリ)ココアもやったし、ラインのアンケートもやった」と厚労省の2事業に言及。平井さんは「(ココアのように)デジタルにすればスピードは速い。(今後は)情報の共有化の努力をする」と意気込みました。この後に、田村厚労相が発言。「厚労省の定員も増やしていかないといけない」とかわしました。

 いきなり、厚労省とデジタル庁の省益争い。私が調べたら、総務省で300人、経産省で200人がデジタルの仕事をしています。総務省と経産省の省益争いがポイントになることは明確で、総理の意向で押し通せるか。

 デジタル庁設置法案の2021年春の提出と2022年4月ごろまでの発足は、菅首相が就任会見で断定調で言ったので、先送りはできません。「デジタル庁」と称して、内閣官房・内閣府の「内閣サイバーセキュリティーセンター」「官民データ活用推進戦略会議」など4つほどの部署を統合してしまえば、消費者庁の定員に近い人員になりますから、それをもって「デジタル庁だ」とお茶を濁すかもしれません。

 政権の命運がかかっているので、連休明けの「準備委員会」が「デジタル庁設置法案」「IT基本法などの改正法案」作成の作業をしないわけには情勢となっていますが、自民党特有の骨抜き、財務官僚がマイナンバーを押し込みすぎる、民間の売り込みが前のめりすぎる展開となると、菅内閣全体が五里霧中になります。目が離せません。

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Ⓒ2020年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki

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