【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

石破首相「小選挙区ごとに政策活動費を使う」との失言にも蓋をして「安倍晋三衆議院議員暗殺」の第49期衆議院は解散される

2024年10月09日 16時20分00秒 | 第214回国会
[写真]第49期衆議院を代表する政治家ながらも暗殺された安倍晋三衆議院議員(当時)=毎日新聞社撮影=おととし2022年12月に開かれた東京写真記者協会の撮影自由の展覧会で宮崎信行撮影。

 衆議院は解散されました。第50回衆院選に向かいます。黄金の3年間は終わりました。

 3年前、第1次岸田文雄内閣の解散時に、与党最大派閥会長は安倍晋三衆議院議員でした。安倍派は、官房長官、経済産業、防衛両大臣を出す一大勢力でした。安倍議員は「山神」「山上烈士」とも言われた被疑者に射殺され欠缺しました。補選では弔い選挙で後継者の吉田真次議員が当選しました。

 生まれてから半世紀、人間が死んで泣いたことがない筆者は、冷静に、撃たれたわずか1時間後に、総務省への電話取材も含めて補選の日程を報道しましたが、これは一票の格差訴訟で半年ずれました。

 そして現在安倍派の閣僚はゼロ。つまり「山神」「山上烈士」の銃弾が選挙より政治的影響力があったことになります。筆者はかつてイギリスと比較していましたが、史上初の有色人種のスナク首相は1年足らずで、労働党に政権交代しました。比して、日本では、「(10年で)20兆円のGX移行債の発行など私が初当選したころには考えらなかった資金調達が可能になった」(林芳正官房長官の自民党総裁選候補としての演説)というように税制も選挙制度も複雑怪奇で、世襲議員などの既得権益者に有利な制度になっています。野党が大乱立となりますから、とうてい、国民の声を一つにすることなど不可能です。友達が小選挙区に出ていたらできる最大限のことをやる。というところまでしかできないのではないでしょうか。

【衆参・国家基本政策委員会合同会議】
 浅田均さんが仕切りました。今週の記事で森屋宏前官房副長官が選ばれたとしたのは誤報でした。失礼しました。石破茂首相(自民党総裁)は玉木雄一郎国民民主党代表に対して「選挙区の情勢によって、政策活動費を使う」という驚きの発言をしました。
 玉木さんの「来週公示で12日間選挙戦を行います。この選挙に関して1円も政策活動費は使わないということをここで明言してください」としました。石破さんは「これから先、選挙を行うにあたりまして、現在認められております政策活動費ということを使うことはございます。それはいろいろな選挙区におきましていろんな事情もございます。そして、我が党の中で御党を初めいろんな党と厳しい戦いをしており、そういう地域もございます。そこにおいて、適法な範囲内において、現在許されております政策活動費を使うということは可能性としては否定はいたしません」と述べました。改正政治資金規正法では、10年後に細目を公開するならば党から個人への政策活動費を使えると、自民党・公明党・日本維新の会の3党が合意して先の通常国会で法制化されました。

 首相は、野田佳彦立憲民主党代表に対して「民主主義にコストはかかるが、お金に左右されない政治が大事だ。企業も社会の構成員であり、企業団体献金は認められる」と語りました。

【参議院本会議】
 国政調査に限って継続調査にしました。次の第215回特別国会までに閉会中審査が開かれることはないと考えられます。
【参議院国土交通委員会】
 閉会中審査を前に、「7月17日、18日に石川県に委員派遣をした」と報告。これでは能登半島地震だけなので、報告の最後に「なお、理事らの許可を得て一言申し上げると、9月2日に豪雨があった。再び被災したご心情はいかばかりかと胸が痛みます」と付け加えました。黄金の3年間により、きょねんは4か月間の夏休み、ことしは3カ月間の夏休みとなりました。きのうの旧優生保護法の審議を聞くと、「国会」というものが国家賠償法第1条第3項に問われることがあります。きょう、7月の地震の報告をしている国会というものも、真価が問われなければならない世情に感じます。

 他の委員会では国政調査だけ継続調査となりました。

【衆議院本会議】
 午後3時10分に内閣不信任決議案が提出されました。「セレモニーにはくみしない」という趣旨の発言をしていたはずの日本維新の会も最後にぶれて、提出に加わりました。
 が、30分遅れの午後4時に開議して、上程され、趣旨弁明より前に憲法第7条で解散されました。このパターンでの解散は2005年8月8日午後7時再開の衆議院本会議以来19年ぶり。小泉純一郎首相ら全閣僚が雛壇に座る中、趣旨弁明の岡田克也・民主党代表(当時)が最前列までたちながら解散された時以来となります。このときは、岡田さんがあわれ、小泉首相はおそらく演技で、議場を不思議そうな遠い目で見ていました。第44回衆院選で静岡7区で自民党公認候補が当選しますが、党本部から派遣された職員は最後に何をしたかは言えないとしています。お金で有力者をひっくり返す自民党の裏金というよりも、闇金(政策活動費)が日本の政治を歪めました。もう復原は難しいと考えられます。

 きょう雛壇に座った全閣僚には石破首相、村上誠一郎総務大臣、岩屋毅外相、平将明デジタル相、赤澤亮正・経財相も含まれました。

 命名すると、「臭い物に蓋をする解散」としかいいようがないでしょう。

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